episode.26
東堂さんの突然の告白に頭が追いつかない。
「あ、あの…私、高宮さんのことが…」
「困らせるって分かってて言ってるし、今すぐ返事が欲しいわけじゃないから」
「…でも……」
どう伝えたら…
「…さん、結衣さん、着きましたよ」
「あれ? 清水寺じゃない!? 何で!!」
辺りを見渡すときれいにライトアップされた渡月橋が見える。
「しまった、そんなに清水寺がよかったなら最初に聞いておくべきでした」
「いえ! そ、そういうわけでは!」
苦笑いする東堂さんに苦し紛れの言い訳をするも、全然伝わらなかった。まさか、全て夢だったなんて…東堂さんにめちゃくちゃ失礼な妄想を抱いてしまった!
「ほんと、すみません…」
「明日、清水寺寄って帰りましょう」
明日!? ということは今日はどこかに泊まるってこと?? 少し歩いて路地を入ると川沿いに一際大きな門が現れ、東堂さんは慣れた感じで門をくぐった。
「東堂さん、ここは??」
「あぁ、すみません。うちの母の実家です」
えぇー!! 東堂さんのお母様の! 凄く立派なお屋敷で、木の表札には「神足屋」と書かれていた。さっきの夢のせいで色々変な想像をしてしまう。
「おいでやす…あら、圭介坊ちゃんじゃないですか…またそんなお怪我されて。いくつになったんですか?」
「こんばんは。返す言葉もありません。九十九さん、急で申し訳ないんだけど、今日部屋空いてるかな?」
「えぇ、まぁ、空けてあるお部屋はありますよ。連絡くれたらいいお部屋ご用意しといたのに」
「連絡したら、母が広島から飛んできてしまうでしょ」
九十九さんは東堂さんと話をした後、準備をしてくると言ってその場を離れた。東堂さんがロビーにある囲炉裏まで案内してくれた。
「あの…私がお邪魔しちゃってもよかったのでしょうか?」
「こちらこそ、急に連れてきてしまってすみません。色々とお世話になったお礼をあれこれ考えていたのですが…こういうことにはあまり慣れてなくて」
東堂さんは少し気恥ずかしいそうに出されたお茶をすすっている。
「お部屋の準備が出来ましたよ」
「あぁ、ありがとう。じゃ、結衣さん行きましょう」
渡りを進み離れへ通された。九十九さんがそれぞれに鍵を渡してくれる。東堂さんは九十九さんに夕飯について話をしている。
「九十九さん、今日はちゃんと2部屋空いていたんだね」
「坊ちゃん、それはどういう?」
「えーと…何でもないです」
1時間後に東堂さんの部屋で夕食をとることになり、それまではお互いゆっくりすることにした。大きな窓からは広々とした露天風呂が見える。ここで、「一番いい部屋」ではないという事実に驚くくらい、雰囲気のよい部屋だった。
窓を開けると、梅雨とは思えない爽やかな風と葉擦れの音が聞こえてきた。高宮さんは元気にしているだろうか…今頃は海の上…あと1週間も会えないなんて。
「…はぁ」
露天風呂でゆっくりしたあと、東堂さんのお部屋に向かうと東堂さんが浴衣姿で窓際の椅子で夜風に当たっていた。部屋にはすでに食事が用意されていた。
「結衣さんもどうですか?」
お酒がなみなみと注がれたグラスを東堂さんが差し出した。初めて見る東堂さんのメガネ姿は色気がいつもの5倍増しで目のやり場に困る。
「ありがとうございます」
「浴衣、すてきですね」
その言葉、そっくりそのままお返しします!! 美味しい料理をいただき、たわいもない話で盛り上がった。1日の疲れのせいで思ったよりも早くお酒が回ってきてしまった。
「東堂…さ…ん…」




