episode.18
高宮さんに連れてこられたのは、先程の大食堂の一角だった。
「東堂とは……よく会われるのですか? その…ずいぶんと親しそうだったので…」
「……え?」
自分が東堂さんの制服を借りていることをすっかりと忘れていた。
「えっと…これは、雨に濡れてしまったのを心配して下さって…」
「いや、すみません、今のは無しで」
高宮さんは私が説明しようとすると手で制し大きなため息をつく。バツが悪そうにテーブルの上で組まれた自分の拳に視線を落とした。仕事は上手くいっているようだけど、その後千代さんとはどうなったのか…私のことはもう何とも思ってないのか…とか……聞きたいことがありすぎて、上手く言葉が出て来ない。
「あー、いたいた。結衣さん!」
「東堂さん?」
「上着貸してるの、すっかり忘れてて…」
東堂さんは私と高宮さんを交互に見ると、呆れた様子で私の隣に座る。
「お前、もしかしてまだ話してないのか?」
「…それは…」
「話す気がないなら、俺は本気で結衣さんのこと落としにいくけど…いいよな?」
「な!?」
高宮さんも私も一瞬何を言われたのかわからず同時に変な声が出てしまった。東堂さんは真剣な顔で高宮さんから目を離さない。
「あー! わかったよ! 正直に言えばいいんだろ!」
高宮さんはガシガシと頭をかくと、覚悟を決めたように私の目をとらえる。
「俺はこれ以上、きみが他の奴と仲良くしてるのを見たくないし、なんなら東堂とだってもう話して欲しくない。きみを手放して本当に後悔したし、時間が経てば経つほど、きみの事が気になって仕方なかった」
高宮さんは立ち上がると、テーブルの上にある私の手を掴んだ。
「だから、もう一度やり直したい…俺のところに戻ってきてほしい」
高宮さんは他の人の目も気にせず、捲し立てるように一気に言い放った。食堂が一瞬静まり返ったかと思うとどっと歓声が起こった。高宮さんは顔を真っ赤にしながら私を見下ろしている。
何でこんなことになったのか全くわからなかったけど、初めて見る高宮さんの姿に胸がギュッと締め付けられた。私は恥ずかしさともやもやした気持ちにいたたまれなくなり東堂さんを見る。
「あなたが決めることです」
東堂さんは少しだけ寂しそうな笑顔をする。高宮さんのところに戻っても…本当に大丈夫なの? …千代さんは? 頭の中でさっきの疑問がぐるぐるとなる。
高宮さんが私の腕を引くと東堂さんから視線が外れた。顔を上げると高宮さんの切ない表情が視界に入った。息が止まりそうになり身体が動かなくなる。
「俺だけ見て」そう消え入るような小さな声で呟くと、高宮さんは唖然としている私の唇を塞いだ。もうそこからの記憶は曖昧で、何故だか今は高宮さんの車の助手席に乗っている。




