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episode.17

心臓が変にドクドクと脈を打っているのがわかる。大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせてはいるものの、身体が少しずつ冷えていく。



「これ使って下さい。今日は雨だから冷えますね」



そう言って東堂とうどうさんが、紺色の制服を脱ぐと私の肩にかけてくれた。上着はポカポカと温かく、東堂さんの体温の高さが伺えた。



「あ、ありがとうございます。でも、これ大切な制服なんじゃ…」


結衣ゆいさんの体調の方が心配です。慣れない仕事で疲れも出てきてるだろうし、朝少し雨に濡れて来てましたよね。すみません、こちらも配慮が足りずに」



東堂さんは申し訳なさそうに、制服を返そうとする私を制し温かい飲み物まで用意してくれた。気持ちも落ち着き、気持ち悪さもわやわらぎ少しだけ体温が戻ったように感じた。



「あの、もう大丈夫なので取材の続き、させて下さい」


「分かりました。ただ、俺ので嫌じゃなければ上着は着てて下さい」



そう言われてしまうと、断りづらいことこの上ない…。さっきは気付かなかったけど、東堂さんの上着…香水とか柔軟剤とは違う…いい匂いがする。改めて東堂さんの清潔感ならびに女ウケの高さが垣間見えた気がする。



「東堂、お疲れ」


「お疲れ様です。今日は仙崎せんざきさんが担当なんですね」


「あー、そうそうお前の相方、今日は急用で午前休みなんだよね。それで俺がかりだされてるわけ…て、お前が女連れてるの珍しいな」



彼女か? と東堂さんに興味なさげに質問する。東堂さんもその質問にはあえて反応せず、仙崎さんに今日の趣旨を説明する。



「は、はじめまして。三雲です。今日はよろしくお願いします」



今日何度目かの自己紹介を終え、仙崎さんにいくつか質問をしようと声をかけるが臨時勤務のため他の人に聞いてほしいとのことだった。



「仙崎さん、人付き合い得意な方じゃないから」


こそっと東堂さんが教えてくれた。


「おい、聞こえてるぞ? とりあえずここの職員は優秀だ。特に医官はどこに出しても恥ずかしく無い。それだけは伝えておく」


無愛想だけど、出来る人ってオーラが出てる。しかも仲間を信頼して仕事に向き合っている感じがすごくかっこよかった。


高宮たかみや一尉いちいお疲れ様です!」


その名前を聞いた瞬間、心臓がはねた。



「おー、高宮。早かったな、もう用事はいいのか?」


「はい、急に変わってもらってすみませんでした」



背後から聞こえる高宮さんの声は変わらずに優しい。



「お久しぶりです、三雲さん」



苗字みょうじを呼ばれ胸がギュッと締め付けられる。普通にしなきゃ、高宮さんに迷惑かけられない。意を決して高宮さんに向き直る。



「こんにちは。今日は基地のことを取材させてもらっています。よろしくお願いします」



努めて明るく、笑顔で対応する。高宮さんは少し複雑な表情だったけれど、元気そうで安心した。


「今日はありがとうございました」


お礼を言って医務室を出ようとしたとき、段差につまづいて転びそうになる。やばい! と思った瞬間東堂さんが私の身体を支えようと腕を伸ばしたのが見えた。しかし、その腕にたどり着く前に強い力で腕をひかれ抱きとめられた。


私はいつの間にか高宮さんの腕の中にいた。懐かしい高宮さんの体温に涙がほほを伝うのがわかった。


「ご、ごめんなさい」


気づかれないように高宮さんに背を向けると、東堂さんがそっと隣に来て私をかばうようにたった。


「段差に気をつけて下さい」


そう言って私の手を取ると、ゆっくり私の前を歩き始めた。


「あの、三雲さん……少しお話できませんか?」


東堂さんは心配そうに私を見ると「どうしますか?」とたずねてくれた。私は涙を拭うと、意を決して高宮さんに向き合った。「少しだけなら」高宮さんが今幸せってわかれば、これ以上この気持ちも大きくなることはない…。

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