宿で鉢合わせ
「いやぁ楽しかったね。本当はもっと遊んでいたいところだけど、明日の大会に向けて早めに休んでおこうね」
「ワンッ」
「ピィッ」
シロ達を早めに休ませた方がいいと考え、お店で色々と夕食分の料理を買い込み日が暮れる前に宿へと帰ってきた
ちなみに帰りにエバのお店を見に行ってみるとたこ焼きは既に完売していた
それだけ人気だったのなら、明日は今日食べた人達のクチコミによってきっと更に忙しくなるだろう
それを見越して臨時のバイトを雇うみたいだし手伝う必要はない。心置きなくシロ達を応援することができる
「ご飯食べたらお風呂に入ろうね。大勢の人の前に出るんだから綺麗に、しておかないと」
「アゥ……」
「ピィ!」
露骨に嫌な顔をするシロを連れて宿の扉を開ける
そこで再会したくない相手と再会してしまう
なんと先程の転生仲間である男性達が受付に立っていたのだ
「ゲッ!あの人達一緒の宿だったの……最悪だ。バレる前に早く行こう」
受付の人と話しているようなので、その隙に気配を殺して部屋へと続く階段に向かう
しかしそれに気がついた宿の従業員に声をかけられてしまった
「ハルカ様、おかえりなさいませ。建国祭初日はいかがでしたか?」
「ちょっ!?シーシー!」
「ど、どうかされましたか?」
「ん?ハルカ?」
それまで受付の人と話していた男達がこちらへ一斉に視線を向けてくる
名前を聞かれてしまった。もしかして気づかれた?
そう思っていると会話を中断してこちらに近寄ってきた
逃げたら怪しまれてしまうかもしれない
けど顔を見られたらそれこそバレてしまうかも
この場をどう凌ぐか迷っているうちに相手が目の前まで来てしまった
「そこのあんた、ちょっといいか?」
「は、はぃー。なんでしょうかぁ……」
できるだけ髪で顔を隠し声は裏声。その場凌ぎかもしれないが一先ずこれで対応する
「いやこっち国では聞き慣れない名前だと思ってね。どこの国から来たの?」
「え、えーっとぉ海を渡った東の国から来ました」
「へぇ、そりゃはくしまた随分と遠いところから。そっちではそういった名前が一般的なの?」
「ソ、ソウデスネー」
このチャラそうな見た目をした人、グイグイくるな……
でも今のところ気づかれてはいなさそうだし適当に話を合わせてさっさと部屋に戻ろう
「ねぇねぇこの後俺達呑みに行くんだけど君も来ない?もっと君の国の事教えてよ」
「あー……すみません、この通り食事買ってきてしまったので……」
「じゃあ部屋に行ってもいい?それ肴にちょっと呑もうよ。お酒はこっちが出すからさ」
「いやぁ、それはちょっと……」
「いいじゃん一緒に呑もうよー」
ダメだ、こういう相手の事を考えない押しの強いタイプは昔から苦手なんだ
どう断れば納得させられるか……
「ちょっとちょっとイサム氏、初対面の女性の部屋に上がり込むの関心しませんな。この方も困っているじゃないですか」
こちらが困っていることを察したのか、後ろにいた小太りの男性が割って入ってきた
「別にいいじゃねぇか。ただ楽しく飲もって誘ってるだけじゃん」
「できるだけ問題は起こさないようにと言われているでしょう。我々の目的を忘れてはいけませんゾ」
なんかよく分からないけど揉めてくれてる
今のうちにさっさとこの場から立ち去ろう
「私達はこれで失礼しますね。ソレデハー」
「あっ、ちょい!あーあ逃げられちった。お前のせいだぞノリオ」
「誰かれ構わず女性を連れ込もうとするイサム氏が悪いんですゾ。もう少し勇者としての自覚をですな……」
「あーはいはい。それもう聞き飽きたわ。ん?どしたのウィリアム?」
「イヤ、アノガール。ドコカデアッタキガ……」
「気のせいだろ。俺見覚えねーもん」
「拙者も同じく」
「ソウカ……」
「さっ、呑みに行こうぜ。途中で可愛い子でも捕まえてさ」
「だからそういう事をするのはやめるようにと何度も……」
そう言って3人の勇者は宿を出て夜の街へと消えて行く
そして翌日を迎え建国祭2日目、シロ達が参加する従魔大会の日がやってきた




