冒険者登録
「着いた。ここがアルテールの町」
入国後馬車に乗ってやってきた最初の町アルテール
国境近くに位置する町というだけあって人も多くそれなりに栄えていた
ゆっくり町を見て回りたい気持ちもあったが、夕暮れ時だった為その日は宿に直行し体を休め、翌日になって宿の店主から場所を聞き冒険者ギルドを訪れた
「あった、ここが冒険者ギルド……」
早速手続きをと思ったが、扉に手をかけたところで少し思い留まった
自分の中で冒険者といったら粗野で乱暴なガラの悪い男の人が多いイメージがある
もし中に入って怖い人にでも絡まれてしまったらどうしようか
「入る前にちょっとだけ確認をー……っと」
問題がなさそうであれば入ろう
そう決めて扉を少しだけ開けて中の様子を確認すると、言い争う声が聞こえてきた
「テメェ今なんつった!もういっぺん言ってみろ!」
「前衛の癖してビビって前出れねぇなら冒険者やめちまえって言ったんだよ!」
「あれは後衛の射程範囲に入れる為に敢えて待ってたんだよ!そんな事も分からねぇテメェがやめちまえ!」
「なんだとテメェ!」
「やんのかコラ!」
「いいぞー!やっちまえー!」
冒険者と思われる二人の男性が殴り合いをしていて辺りは滅茶苦茶、それを誰も止めようともせずイベント感覚で盛り上がる観衆
まさかこごまでイメージしていた通りだったとは……
「今日はとりあえず町を散策しようかな……」
こんな状況で入っていけるはずがなく、扉を開けようとしていた手をそっと戻してそのままギルドを離れた
その日は町の露店を眺めたり観光スポットを巡り、今朝起きたことはなかったものにして楽しんだ
町に着いて3日目、今日こそは冒険者登録を済ませようと再びギルドに足を運んだ
「でもなぁ、やっぱり怖いなぁ……」
また喧嘩をしていたらどうしようか
やっぱり冒険者になるのはやめて地道に働く方が無難だろうか
昨日の事が原因で行こうか行くまいか葛藤して立ち往生していると、突然背後から声をかけられる
「そこのあなた」
「ひゃ、ひゃい!」
ビックリして思わず上ずった声が出てしまった
もしや絡まれてしまったのではと怯えながら振り返ってみると、そこには白銀の髪色をした美麗な女の人が立っていた
お人形のような整った顔立ちと装備の上からでも分かる見事な曲線美
元の世界でもここまで綺麗な人は見たことがなく、同性の自分でも思わずドキッとしてしまった
「綺麗な人……」
「はい?」
「え?あ、もしかして口に出てた?ご、ごめんなさい!」
あまりに綺麗な人だったから思わず本音が漏れてしまったようだ
こちらが慌てて謝罪すると女性はクスッと笑った
「まさか初対面の、しかも同性相手に口説かれるとは思いもしなかったわ」
「いや、そういうつもりは……」
「冗談よ。けどこんな場所で立ち止まっていたら邪魔になるわよ」
「すみません、すぐにどきますね」
注意してくれたのがこの人で助かった
昨日の殴り合いしてたような人達だったら怒鳴られていたかもしれない
それにしても本当に綺麗な人。服装は冒険者って感じじゃないけど、ギルドに来たってことはこの人も冒険者なんだろうか
そんな事を考えていると女性が再び話しかけてきた
「あなた見ない顔だけど依頼しにきた子?それなら右の受付の人に声をかけるといいわ」
「いや、実は冒険者になろうと思っていて……」
「あらそうなの?数少ない女性の冒険者が増えるのは歓迎よ」
「ということはあなたも冒険者なんですか?」
「えぇ、今日は休息日で依頼の報酬を受け取りに来たの」
こんな綺麗な人も冒険者になるんだ
武器は何使うんだろう。細剣かな、それとも魔法?どちらにしてもきっと戦う姿も優雅なんだろうなぁ
「というわけであなたさえよければ……ねぇちょっと聞いてる?」
「ハッ!ごめんなさい、ちょっと考え事を。なんでしょうか」
「登録に来たのならよければ案内してあげようかと聞いたのだけれど」
「それは……こちらとしては凄く有難いですけどいいんですか?予定とかあったりは……」
「報酬受け取った後暇だったからちょうどいいわ」
これは非常にありがたい
このまま一人でいたらいつまで経っても中に入るのを躊躇ってウロウロしていただろう
誠実そうだしなにより同性で接しやすい。こちらが断る理由はない
「それでしたら……お言葉に甘えさせてもらいます」
「決まりね。私はエリシア、よろしく」
「ハルカっていいます。よろしくお願いします」




