隣国へ
王都から馬車で移動すること10日、無事目的地である隣国に一番近い町エルランに到着した
「いたたたた……お尻がぁ……」
慣れない馬車の移動としっかり整地されていない道、そして衝撃を全く吸収してくれない座席のお陰であちこちを痛めてしまった
これで金貨3枚かと愚痴りたい気持ちもあったけど、移動中の間何かあった時に乗客達を守ってくれる護衛を雇っていて安全に移動ができたので思い留まった
「ここまで来ればもう大丈夫かな」
移動中ずっと城からの追手が来ないか心配していたが取り越し苦労だった
城の人間と顔を合わせていたのはほんの数時間だしこの世界には監視カメラもない
自分で言うのもなんだけど人目を引くような特別な見た目をしているわけでもないので、国を出てしまえばどこに行ったか特定するのは困難だろう
あとは国境を守る城壁がある場所で入国審査を受けて入国するだけ
町から目視できる場所にあって一本道で迷うこともなく、徒歩で向かう人達もいたので自分の足で向かってみることにした
「それにしてものどかだなぁ。空気も美味しい気がする」
雄大な景色を見ていると自然と心が洗われていくような感じがした
環境や心境の変化が多少関係しているのか、あっちにいた時の自分だったら綺麗な景色を見てもきっと見向きもしなかっただろう
景色を楽しみながらのんびり歩き、やがて城壁がある場所に到着すると検問所には入国する人達の列ができていた
「結構並んでるなぁ。どれくらいかかるかな」
いくら景色が綺麗だからといってずっと見続けていられるものではない
こんな時スマホでもあれば時間が潰せるが、当然そんなものはない
結局自分の番が来るまでの間、ひたすら一人でアニメキャラ縛りのしりとりを行っていた
入国の手続きでは手荷物検査と入国税として銀貨5枚を請求された
手荷物検査の際カバンに入れていたスーツを見られて怪訝な顔をされた
もうヨレヨレだしこの世界で着ることはないだろうから捨てればいいだけの話だが、このスーツは就職祝いとして祖父母がプレゼントしてくれた大切な物なので、たとえ変な目で見られようと捨てるつもりはない
それ以外は特に問題はなく入国審査をクリア、召喚されたアルダント王国からあ国境を越えてパルシオン王国に入国することができた
「無事に入国ー。さて、次はどうしようか」
目標としていた入国は一先ず達成した
次にやることと言えばやっぱり収入源の確保
個人的には一箇所に留まるよりも、色々な国を見て回ってみたいという気持ちが強い
となると必然的に場所に縛られない職業に限られてくる
始めは想像具現化のスキルでなんでも具現化できるなら元の世界の物を売って商人になることとかも考えた
けど試しに想像具現化のスキルで水を出そうとしてみたら失敗してしまい、代わりに注意事項のような文章が赤文字で現れた
どうやら今の私のレベルだと具現化できるものには制限があるみたいで、制限を解除するにはレベルを上げなくてはいけないらしい
ではどうすればレベルを上げることができるか
そこはファンタジー世界のお決まり。この世界にいる魔物を倒すことだ
「となるとやっぱり冒険者になるしかないよねぇ……」
これまで立ち寄った町で冒険者ギルドというものを見かけた。そこで冒険者となって魔物を倒し、レベルアップしてスキルのレベルを上げる
冒険者にならなくても魔物と戦うことはできるが、ギルドに入っていれば報酬を貰うこともできるそうなので加入はしておくべきだろう
「けど私に魔物とか倒せるかなぁ……スライムくらいならいけるかもだけど」
貧弱ステータスで戦闘経験皆無。できれば戦いたくないというのが素直な気持ち
よくある俺TUEEEE展開なんてこれっぽっちも求めていない。身の丈に合った生活ができれば十分なのだ
「ここで考えても仕方ないし、とりあえず近くの町に向かおっと」
今後の方針もある程度定まったところで再び馬車に乗り、お尻を痛めながら冒険者ギルドがある最寄りの町へと向かった




