王都から脱出
城を抜け出した後、暫く街を彷徨った末近くの宿に泊まることにした
この世界の貨幣価値が分からず不安はあったが、支度金として王様から貰っていた袋の中には金貨が20枚
まさか宿に一泊も泊まれない金額を渡してくるはずがないということで、意を決して宿の中へ入り店主に声をかけた
「すみません、一泊したいのですがお部屋空いていますか?」
「空いてるよ。素泊まりなら銀貨3枚、朝食付きなら4枚だよ」
「じゃあ素泊まりで。お金は……これでいいですか?」
「はいよ、お釣り銀貨7枚ね」
金貨1枚を出してお釣りが銀貨7枚。つまり銀貨10枚で金貨1枚分の価値があるということ
銀貨1枚1000円くらいだとして素泊まり3000円くらいになるのかな?
もっと他のお店を見てみないことにはなんとも言えないな
「はいこれ鍵、2階上がって突き当たりの部屋ね。それにしてもお客さん見たことない格好をしているね。どこの国から来たんだい?」
「あーえーっと……ずっと東にある海を渡った国です」
「へーそんな遠い所から。そりゃあ大変だったね。ゆっくり休んでいきな」
「ありがとうございます」
適当に話を合わせてそそくさと説明された部屋へと入る
部屋の中は簡素なもので、ベッドに机、トイレと最低限の設備だけが置かれていた
「お風呂はないのか……お城にはあったっぽいし入ってから抜け出せばよかったかなぁ」
汗を流したい気持ちをグッと堪え、明日早くにここを出る為すぐにベッドで横になった
今後の予定をもっと考えておきたかったけど、今日一日でたくさんの事が起きたせいか疲労がピークに達してすぐに眠りについてしまった
翌朝、目が覚めて宿を出た後は朝食を買うついでに店を回って色々な話を聞かせてもらった
今いるのはアルダント王国の首都で、ここからずっと北にある魔王が統治する魔族の国と交戦中なのは本当なようだ
けど発端はアルダント王国が魔王の領地に侵入して好き勝手やっていたのが原因とか
城を抜け出してきたのは正解だったみたい。北が魔族の領地ならここを出たら南に向かうとしよう
そして貨幣について。一般的に流通しているのは銅貨、銀貨、金貨、大金貨の四種類で、一番価値の低い銅貨の順に100円、1000円、10000円、100000円となっていることが分かった
更にその上に白金貨というものがあるみたいだが、価値が高すぎて殆ど出回ってないらしい
「これである程度の情報は手に入ったかな。あとは……」
「ねぇねぇ、あのお姉ちゃん変な格好してるよ」
「シッ、あんまり見ちゃいけません」
「……とりあえず服を買わないといけないか」
宿の店主にも言われたがスーツはこの世界だと奇妙な格好に見えるみたい
城を抜け出した身としてこれから目立つ行為は避けなければ
「ありがとうございましたー」
「よしっ、これなら大丈夫でしょう」
近くにあったお店で服一式に替えを数着、それにフード付きの外套に靴とカバンを購入し着替えを済ませる
合計で金貨1枚。朝食が銅貨5枚したから残りが金貨18枚、銀貨6枚、銅貨5枚
日本円で186500円か。この世界に溶け込むのに必要な出費だから仕方がないけど、今の私には収入がないんだからなるべく節約していかないと
それにしてもここまで何件もお店を回ってきたが、全く知らないはずの文字を何の違和感もなく読むことができた
これもよくある転生特典なんだろうけど、前世では日本語以外ロクに読むことができなかったので不思議な感覚である
着替えを済ませた後は、南へ向かうのにお店の人から教えてもらった乗合馬車というものを利用することにした
ここから隣の国に一番近い町まで乗り継ぎなしでいけるんだとか
しかし料金は金貨3枚。一瞬どうするか迷ったが、道も分からない地図もない状態では自力で国境越えどころか次の町にすら辿り着ける気がしない
ここでお金をケチって命を落としていたら話にならないので、身を切る思いで料金を支払った
次の町に着くまでの間に食べる食料を買い込みいざ馬車へ
初めての馬車に最初こそ高揚したが、門の前に来ると正体がバレてしまうんじゃないかとハラハラした
けどその心配は杞憂に終わり、私は何事もなく王都を出ることができた
「とりあえずこれで一旦落ち着けるかな」
これから先どうなるか全く分からないが、今はただこの現実を満喫することにしよう
馬車に揺られながらもう訪れることはないであろう王都に別れを告げ、遥は国境沿いにある町を目指した
遥が王都を発った頃、城内では遥が消えたことの報せが国王の耳に届く
「申し訳ございません。四人目の勇者様が一名逃亡しました」
「あの女勇者か」
「今朝中々起きてこないので確認したのですがその時には既に。まさか召喚してその日に逃げられるとは……いかがなさいましょう」
「構わん放っておけ。今逃げるような者を連れ戻したところで使いものにならんだろう。それに本来召喚する勇者は三人。四人目などどうせ三人の出涸らしに過ぎんからな」
「畏まりました」




