よくある異世界転生
私の名前は琴吹遥24才
アニメやゲームが好きな所謂オタクだが、それ以外はどこにでもいるしがない会社員……だった
仕事で疲弊していた時にSNSでたまたま異世界へ転生する方法が書かれたつぶやきを見つけ、胡散臭いと思いながらも現実逃避で試しにやってみたら突然目眩がしてそのまま気を失ってしまった
そして目が覚めると冷たい床で見慣れない格好をした人達に囲まれていた
「おぉ、四人目の勇者様が召喚されましたぞ」
「勇者?というかここどこ……?」
目が覚めたら知らない場所で見慣れない格好をした人達
言葉が聞き取ることができたので近くにいた人から話を聞いてみたところ、どうやら勇者として魔王を討ち果たす為にこの国に召喚されたらしい
ゲームやアニメ等をそれなりに嗜んできてこんな展開の作品も散々見てきたが、まさか自分の身に起こるなんて思いもよらなかった
オタクならばここで異世界転生キター!となる場面なんだろうが、いざ自分が当事者になってみたら不安しかなかった
戻れるか一応聞いてみたら召喚された者の元の肉体は魂の器としての役目を終えていてーとか、こちらの世界に肉体と魂が定着しているからーとか小難しい話をされたけど、ようは帰すことはできないとのこと
戻る手段がない以上ただの会社員である私にはどうすることもできなかった
まさか遊び半分でやったせいで本当に異世界に来てしまうなんて……
「そういえば四人目って……ということは私の他にも転生した人が」
転生してきたのは自分だけじゃない
男性は苦手なのでせめて同性の子がいてくれたらと他に転生してきたという三人の方を見た
一人はチャラそうな男性、もう一人はボディビルばりにムキムキな外国人、そして冴えない小太りのオタクTシャツを着た男性
絶望である
それから派手な格好した王様と妃に面会し祝賀会のようなものが開かれた後、用意された部屋で休むよう伝えられた
しかし無駄に部屋が広く却って気が休まらなかったので、外の空気を吸って落ち着くことにした
「月は元の世界と一緒なんだなぁ……」
普段と変わらない月を眺めていたせいか、元の世界での記憶が蘇ってきた
幼い頃に両親を事故で亡くし、育ててくれた祖父母も二年前に他界
特別親しい友人もおらず、会社と家を往復するだけの日々。唯一の楽しみといえばアニメやゲーム、漫画の鑑賞
思い返してみると元の世界にそこまで未練がない。いや、途中までだったアニメとかの今後の展開は気になるけど……
いっそ開き直ってこっちでの人生を謳歌するのも悪くないかもしれない
一人で考える時間ができたからかそんな風に思うようになってきた
ただこのままだとあの三人と一緒に魔王を倒さなくてはいけなくなる。それだけは避けたい
男の人、しかも三人と生活を共にするなんて絶対にやっていける自信がない
けどそんな理由で城に残ることをあの王様が許してはくれないだろう
「なんとかしてここを抜け出せないかな?」
どうにか城から脱走する方法はないかと頭を悩ませていると、ふとアニメでのワンシーンが思い浮かんできた
「転生した人って何かしら特別な力があったりするよね。こういう時って……ステータスオープン。とか?」
定番の単語を試しに口にしてみると目の前に薄透明な板のようなものが現れた
そこには私の能力が数値になって記されていた
「本当に出た!えーっと私の能力値が書かれてるのか。なになに……体力100、攻撃、防御15。敏捷性が30で魔力が0……私のステータス低くない?レベル1とはいえ勇者として召喚されたんだったらそれなりに強かったりするもんじゃないの?こんなんじゃここから抜け出すなんて……ん?」
自分のステータスの低さに落胆し項垂れていると、スキルの欄にも何か書かれているのを見つけた
「具現化……?」
そのままの意味で解釈するなら頭の中で思い描いた事を実現されるスキルということだろうか
ある意味このファンタジーのような世界にはピッタリなスキルなのかもしれない
とにかく他にスキルはないしここから抜け出すにはこの具現化のスキルに賭けるしかなかった
「あそこの城壁まで飛べればここから出られるかも。えっとイメージすればいいのかな?じゃあ、私は世界レベルの陸上選手……世界レベルの陸上選手……」
とりあえず自分が城壁がある場所まで悠々と飛ぶイメージをひたすらし続けた
するとスキル具現化の隣に(跳躍)というスキルの追加が確認できた
「できた!あとは飛ぶだけなんだけど……」
この部屋から地面までの高さは20メートル近くある
よく分かっていないスキルでこの距離を本当に飛べるのか?
もし届かなかったら怪我では済まない高さだ
それでもここにいたくないという気持ちの方が勝り、飛ぶ覚悟を決めた
「いち、にの……さん!」
助走をつけ城壁目掛けて勢いよくジャンプ
跳躍スキルがしっかりと発動し、まるで体に羽が生えて空を飛んでいるような感覚だった
「あとちょっと……!」
途中失速して肝を冷やしたが、どうにか城壁の上に着地することに成功
しかし着地の事まで考えてなかったせいで足に激痛が走る
「いったー……けどなんとか届いた」
城壁に到達したあとは巡回している警備に見つからないよう気をつけ、跳躍スキルで建物を伝って移動
こうして私は城からの脱走に成功した




