魔物料理
「ふぅ、やっと帰ってこれた。思ったより時間かかっちゃったな」
川でシザーロブスターにキングトラウトを倒した後、大量の材料を運ぶのに手こずってしまい材料調達から帰ってきた頃には日が傾き始めていた
氷と水の魔法で鮮度は保っているが、急いで材料をお店に運びに向かった
「あった、ここのお店だ」
納品場所であるお店の前まで来ると、看板にはモンスターキッチンと書かれていた
取ってきた材料に相応しい名前のお店だ
店は夜からの営業なのかまだ閉まっていた
「ごめんくださーい。依頼されていた材料の納品にきたのですがー」
何度か声をかけてみても返事がない
出かけているのと思い一度出直した方がいいかと考えていると、奥の方でドンッと大きな音が聞こえてきた
店の中に入り奥に進むと、大柄な男性が厨房で作業しているのが見えた
「すみませーん……」
「ん?」
男性に声をかけるとこちらを振り向いた
全身が血まみれで大きな包丁を持つ姿はまるでホラー映画で見る殺人鬼のよう
叫び声を上げそうになったのをグッと堪える
「あの、店主さんでしょうか?依頼で材料を調達してきました。確認をしてもらいたくて声をかけたんですが返事がなくて、奥から音がしたので勝手ながら入らせてもらいました」
「おぉ、アンタが受けてくれたのか。今この肉の解体が終わったら確認するからちょっと待っててくれ」
食材を持ってきた事を伝えると店主は笑顔で応じてくれた
血まみれの姿で笑顔だとサイコパスみが凄かったが、感じのいい人だったので気にしないようにした
どうやら夜の営業に向けて仕込みの準備をしていたようで、解体していた肉も魔物だったらしい
「うん、依頼していた材料は全て揃っているみたいだな。ご苦労さん」
「ありがとうございます。ちなみにこの魔物って美味しいんですか?」
「なんだ、冒険者なのに魔物は食べた事ないか」
「はい。実はまだ経験がなくて……興味はあるんですが」
今まで戦ってきた魔物はどれも食べられるような見た目をしていなかった
だが今回の魔物達は形こそかなり違うが、食べたことのある形をしているので興味がないといったら嘘になる
「よかったら食ってくか?簡単な料理だったら出してやれるぞ」
「本当ですか?それじゃあせっかくなので頂いていきます」
「よっしゃ、ちょっと待ってな」
店主の厚意で料理をご馳走してもらうことになった
魔物の料理、一体どんな味なんだろう
期待と若干の不安が入り混じりながら席に座り料理が出来上がるのを待っていると、店主が厨房から出てくる
「お待ち。モンスターアヒージョだ。熱いから気をつけてな」
「おぉ……いただきます」
スキレットの中でグツグツと音を立てているのは今日私が採ってきた具材達
運んでいる最中も強烈な臭いを漂わせていたマンドラガーリックも今や食欲を刺激する匂いだ
見た目はよく知っているアヒージョ。まずはバゲットと一緒に食べず食材だけを口に運ぶ
「ふぅーふぅー。あむっ……ん!美味しい!」
魚介から出た旨味が油に溶け出し口いっぱいに広がっていく
キノコは肉厚でコリッといい食感がするしニンニクはホクホクで豊かな風味を感じる
どれも普通の食材より味がしっかりしている気がする。魔物ってこんなに美味しかったのか
「どうだい?口に合ったか?」
「はい!凄く美味しいです!」
これと一緒に白ワインを飲んだら美味しいだろうなぁ。けど営業時間でもないしこれ以上は仕込みの邪魔になってしまう
このお店には他にも魔物を使った料理があるみたいだしどんな味なのか気になる……お酒と一緒に食べるのは次来た時の楽しみにとっておこう




