これはわらしべ長者?
コーラルの町から南下し続けること数週間、私は様々な町を点々としながらのんびりと旅を続けていた
そんな自由な生活ができるのも全てシャンプーの売れ行きが絶好調だからである
風の噂で耳にした内容によると近隣の町にも商品の存在が知れ渡っていて、売れ行きは収まるどころか勢いは増すばかりなんだとか
町に出る前に置いて行った商品が底をつくのも時間の問題だろう
「もうすぐ終点の町に到着しますよー」
「おっ、本当だ。見えてきた」
丘を登り切った先に見えたのはこれまでのどの町よりも大きいルルイエという町
この町はお酒で有名な町らしく、お酒好きな観光客で賑わっているようだ
待ちの外には広大な果樹園や麦畑などがあり、丘の上から一望することができた
黄金色に染まりサワサワと風に揺られる麦、耳心地のいい音を聞きながら町の中へと入っていく
町に着き馬車を降りようとすると、同乗していたお婆さんが声をかけてきた
「お嬢さんありがとねぇ。これのお陰で普段よりずっと楽だったよ」
「ううん気にしないで」
お婆さんが渡してきたのはクッション
馬車に長時間乗っているとどうしてもお尻を痛めてしまうので具現化したものだ
これがあるのとないのとでは雲泥の差。お婆さんも辛そうにしていたので貸してあげたというわけだ
「よかったらそれあげるよ」
「えぇ?そんないいのかい?」
「うん、私の分はあるから」
「悪いねぇ。それじゃあ代わりにこれをあげるよ」
クッションをくれたお礼にとお婆さんが渡してきたのはこの町にある酒造の見学招待券だった
「貰ったのはいいけど私はお酒が飲めなくてねぇ。自分で使うなり誰かに譲るなり好きに使っておくれ」
「へー、飲み比べとかもできるんだ」
「そこは町一番の酒造場だから色々あるはずだよ」
「ありがとうお婆さん」
招待券を受け取るとお婆さんとはそこで別れた
招待券に記載されている内容によると見学日は3日後、せっかくお酒の町に来たことだし行ってみるか
「えーっと、場所はどこだろう」
「そこの嬢ちゃん!ちょっと待ってくれ!」
「私?」
券を眺めながら歩いていると呼び止められた気がしたので振り返ると、そこには自分の腰位までの背丈で髭を生やした筋骨隆々なおじさんがいた
その姿を見てある種族が思い浮かんできた
「もしかして……ドワーフ?」
「そうじゃ、ワシはドワーフのギールという」
「どうもハルカです。それで私になんの用ですか?」
「お主招待券を持っておったじゃろ」
「これのことですか?」
「おぉ!それじゃ!それをワシに譲ってくれんか!」
ドワーフといったら酒好き
この招待券はドワーフにとったら夢の国のチケットのようなものなのかもしれない
「勿論礼は弾む!だから後生じゃ!」
「えぇ!ちょっとやめて下さいこんな目立つところで!分かりました!あげるので頭を上げて下さい!」
「本当か!恩に着る……!」
人目もはばからず地面に頭を擦りつける勢いで必死に頭を下げてきたので、招待券はギールに譲ることにした
クッションから招待券に変わり今度はドワーフからのお礼。なんだかわらしべ長者みたいになってきたな……




