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番外編4 スウィート・ノイジー・ホワイトデー! 2

「健太郎」


微笑みながら理央が俺を見詰める。

おお、綺麗だ。

まさに女神。


「僕も薫君から、ホワイトデーのお返しの意味について教わったよ」

「そ、そう」

「キャンディーは(君が好き)そしてクッキーは(友達でいよう)という意味だね?」

「ああ」

「僕はね、健太郎、君にとって一番の友人であり、恋人でありたいと常々思っているんだ」


つまり俺の特別でいたいってことか?

理央、お前。


「だから、二つの意味を重ね合わせた贈り物をしようと思った、そういった理由での今回のチョイスだ」

「おお!」

「それと、これは僕の個人的な都合なのだが、マカロンは僕にはまだ少々敷居が高い、でも、君からはマカロンを贈られたい」

「り、理央ッ!」

「別々の菓子を作ることになってしまうし、ただの我侭なのだが、どうか協力して貰えないだろうか?」


勿論いいぞ、いい!

そういうことなら何も問題はない!


「任せろ!」


ドンと胸を叩いて返す!

可愛い理央の我侭なら、俺が全部叶えてやる!

世界一美味いマカロンを作ってやるからなッ、楽しみにしてろよ!

理央が作るステンドグラスクッキーも楽しみだ!

ホワイトデー最高!


「―――ね? ケンちゃんって単純でしょ?」

「知っている、だが時折心配になるよ」

「分かる、お人好しだからね」


ん?

今、二人で何か話してなかったか?

お菓子作りの相談か? それなら俺も混ぜてくれ!

三人で材料を選んで作ろう、よーし、やるぞ!


「いよし! イッツオーライッ、承知したぜ! そんじゃ今回もおススメをチョイスしてGreatにお届けだぁッ!」


早速アンジェロが材料を選んでサクサクと集めてくれる。

薫がそれを吟味して、専門用語も飛び交う本格的な雰囲気だ。

俺と理央はその様子を感心しつつ眺めさせてもらう、素人が口出ししてもノイズにしかならなそうだからな。


「凄いね、薫君は、さながらパティシエだ」

「あいつさ、愛原さんのチャンネルにも何度かゲストで呼ばれて、この前なんかウェディングケーキならぬヴェルサイユケーキなんてものを作ってたんだぜ」

「ヴェルサイユケーキ?」


首を傾げる理央に説明する。

元ネタは18世紀頃のフランスを舞台にした少女漫画で、主人公とその主人をイメージした三段のデコレーションケーキを作成していた。

とにかく派手でゴージャス、そして薔薇! 薔薇! 薔薇! って感じだったよな。

ちなみに愛原は俺と同じクラスの女子で、登録者数十万人を誇るお料理チャンネルの配信者だ。


「そういえば元ネタの漫画の主人公、お前にちょっと似てるかもな」

「僕に?」

「ああ、境遇とか雰囲気とかがさ」


へえ、と関心を持つ理央に、漫画の方のあらすじを教える。

そうやって俺達が雑談をしている間に、薫はアンジェロと材料を全部決めてくれた。


「さて、支払いは誰が持つ?」

「当然俺だ」


会計カウンターを挟んでアンジェロの前に立ち、財布を取り出す。


「いいねぇKENちゃん、それでこそ漢ってもんだ!」

「おう」

「安心しな? その漢気に免じて、今回も全品三割引きだぜ」

「サンキュー、アンジェロ!」


理央と薫が両脇から口を挟んでくる。


「いいってケンちゃん、私も払うよ」

「いや、僕が持とう、下世話な言い方だが、大した額じゃないからね」


だが俺は二人を「いいや」と押しとどめる!


「ここは払わせてくれ、三人でお菓子作りをさせてもらえるってだけで、俺には金を払うだけの価値がある」

「おっ、KENちゃん、格好いいねぇ!」

「まかせろッ」


正直に言うと財布にはかなり大打撃だが、その程度のこと構っていられるか。

生前ばあちゃんも言っていた、金は出すべき時に出してこそ活きると。

それに可愛い理央からあんな理由を告げられて、そのうえ金まで払わせるようじゃ男が廃るってもんだ!


「まいどあり! KENちゃん、KAORUちゃん、そしてレディRIO、ハッピーホワイトデー!」


買ったものを全て俺が持ち、アンジェロに見送られつつ酒屋を出る。

また来年会おうぜ、バレンタインの狂信者、達者でいろよ。


「ケンちゃん、重い?」

「平気だ、俺は力持ちだからな」

「商店街の出入り口に天馬を待たせている、さあ行こう、行き先は君の家でいいね、健太郎?」

「おう」


天馬さんが運転する車に荷物を積み込んで、商店街から俺の家へ直行する。

天ヶ瀬邸の厨房だと、またシェフたちに見守られて作るハメになるだろうからな。

それに薫もお邪魔させてもらうのは流石に少し気が引ける。


俺の家に到着。

天馬さんに礼を言って車を降り、理央と薫を家に上げて、まずは手洗いうがい。

そしてキッチンに集結する!

俺はいつもの着慣れたエプロン、薫には俺の家に置いてある薫用のエプロン。


「ねえケンちゃん、理央ちゃんのエプロンは?」

「任せろ、これだぁッ!」


取り出したりますは、俺が今日のために選び抜いて用意した、理央専用のエプロン!

見よ!

この清楚とキュートが一体化したスーパーウルトラ可愛いエプロンを!

薫のエプロンはフリルたっぷりの姫仕様だが、理央のエプロンは楚々とした控えめなレースとフリルが慎ましやかさを醸すお嬢様仕様だ。

絶対に似合う、絶対可愛い!

これを店先で見つけた瞬間天啓を受けた、まさしく、理央のためのエプロンだと!


前に天ヶ瀬邸の厨房で着けていた素朴なエプロンと三角巾姿も最高だったけどな。

やっぱり、こういうのは男の夢だろう。

だからこそ俺が選んだエプロンを着けて欲しい思いがあった、感無量だ。


「僕にこれを着ろ、と?」

「ああそうだぞ、着方が分からないか?」

「いや、その」

「手伝ってやるよ!」

「理央ちゃん、絶対似合うよ、よかったね」


薫もそう思うだろう、うんうん。

戸惑っている理央を手伝ってエプロンを着けてやる。


おお!

うおおおおおおおおおおおッ!

かッ、かッ!

か~~~~~わ~~~~~い~~~~~い~~~~~~!!


メチャクチャ似合ってる! 最高、可愛い! 似合い過ぎる!

うわー可愛いなッ、可愛いな理央、可愛いなッ!

想像以上だ、有難う! 感謝しかない、この世に生まれてきてくれて、俺の選んだエプロンを着けてくれて感謝ァッ!


「その、こういったものは着慣れない」


恥じらう様子も最高だ。

このエプロンにして本当によかったなあ。


「健太郎、忖度なく答えてくれ、今の僕の姿はどうだろうか?」

「最高だ、似合ってる、可愛い、愛してる」

「そ、そうか」

「ねえケンちゃん、私は?」

「薫も勿論可愛いぞ、そのエプロン似合うよな」


薫も満足そうにニッコリ笑う。

さーてアンジェロじゃないが両手に花だ、俺の士気も十分過ぎるほど高まった!

よし、お菓子作りを始めるぞ!


手が空いたらお互いに手伝うということにして、俺はマカロン、理央はステンドグラスクッキー作りに取り掛かる。

薫は俺達両方の監督役だ。

確かに三人で同じ作業を同時にするより、ある程度分担した方が効率はいい。

キッチンには一緒に立つわけだし、三人でお菓子作りしているとも言えるよな。


俺が担当するマカロン。

お返しとしての意味は『君は特別な人』

まさに理央に贈るに相応しいお菓子だ、勿論、薫にも該当する。

―――薫に対してはあくまで友情だけどな。

その辺りは深く追求しない、俺も薫も、前の騒動の時にきっぱりケリをつけた。

今、薫は前を向いて、自分が選んだ道を堂々と進み続けている。

その姿は眩しい、やっぱりお前は凄い奴だよ。

だから俺にとっては変わらず、薫は自慢の幼馴染だ。


今回作るマカロンは、ピスタチオとストロベリーの二種類。

まず器具で粉を振るって、ミキサーで卵白と砂糖を泡立てる。

生地の着色には食用色素を使う。

この辺りはセンスの見せ所だ、ストロベリーの赤色はともかく、緑は色味によっては食欲を減退させるから慎重に着色しよう。

そうしてピスタチオ用の緑、ストロベリー用の赤の、二種類の生地を用意した。

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