番外編/幕間 閑話休題 1
※この番外編は完全に趣味に走った蛇足の蛇足です。
作者の自己満足なのでお好みでどうぞ。
ザックリ説明:朝チュン
LOOP:×××
It For My Own Enjoyment!
「ん」
ふっと瞼を開く。
柔らかな枕、心地いい感触のシーツと上掛け。
どこだ、ここ?
俺の部屋じゃない。
暫くぼんやりして、ふと隣を見ると頭がある。
色素の薄いフワフワした髪、柔らかそうだな、いい匂いがする。
―――ああ、そうか、理央だ。
俺にくっついて眠っている。
スヤスヤと安らかに寝息を立てる姿はまるで天使だ。
「理央」
髪の上から軽くキスする。
ああそうか、これ夢だ、いい夢だなあ。
隣で理央が寝ているなんて、もしかして俺達結婚したのか?
理央、理央。
俺の可愛い、り―――お?
「ん?」
いや、待て。
ここは確か天ヶ瀬邸の客室、そして俺は、俺はッ!
おわああああっ!
背後にキュウリを置かれた猫よろしく、飛び退きそうになるのを必死に堪えた!
お、落ち着け、落ち着け!
ええーっと?
―――そうだ、昨日は押し負けて、理央と一緒のベッドで寝たんだ。
しかし、それにしても。
眠る理央は形容できないくらい可愛い。
やっぱり天使、いや、女神だ、ドキドキする。
この世で最も尊くて可愛い理央の寝顔を堪能しつつ、昨晩のことに思いを馳せる。
えーッと確か、この部屋に連れ込まれて一緒にベッドに入って、グイグイくる理央を宥めたりあやしたりしているうちに眠くなってきて、そして―――寝た。
いやあ、こんなシチュエーションでも普通に寝れるもんだなあ。
健康優良児な自分が憎い、どこでもいつでも安眠爆睡、アホか、図太すぎるだろ。
せめてちょっと寝不足で文句が言えるくらいの状態でありたかった。
すっかり疲れも取れているし、ああ、よく寝たなあ。
ふと小鳥の声がした。
カーテンを引いた窓の向こうからだ。
これが俗にいう朝チュンってやつか?
理央はよく眠っている。
安心しきった寝顔だ、可愛い、とにかく可愛い。
前に図書館で見た寝顔よりもっと可愛い、今はこんなに近くで、しかも一緒のベッドの中で眺めていられるんだよなあ。
フサフサの長いまつげ、スッと通った鼻筋、薄く開いた唇から規則的に漏れる吐息。
まるでスリーピングビューティー、眠れる森の美女だ。
いつまでも見ていたい、ずっと眺めていられる、なんだか美術品を眺めているような気分だ。
でも、触れている部分が温かい。
生きてるんだよな、本当に奇跡だ、理央は神が創り賜うたこの世で最も尊い存在に違いない。
ん?
天使の温もりを堪能する俺の―――股間界隈がちょっと盛り上がってきた。
これは、マズい。
朝だし普段は放っておけばそのうち収まる生理現象だが、この状況でそれは望むべくもない。
むしろ血気盛んになる一方だ。
よし、ベッドを出よう。
理央に気付かれないように、絶対に起こさないように、そーっと、そーっと。
「けん、たろ?」
はい失敗でーす!
ギクリとなった俺の視線の先で、伏せられていたまつげがフルリと震えて、奥から星の輝きを宿す瞳が覗く。
―――そのまま見惚れてしまった。
寝起きのぼんやりした表情で、理央はポヤンと俺を眺めている。
「おは、よ」
「お、おはよう、理央」
返事すると嬉しそうにフニャっと笑った。
ぐああああああッ! か~~~~~わ~~~~~い~~~~~い~~~~~ッッッ!!
可愛過ぎる!
なんだこの愛くるしい生命体は! 間違いなく国際的な保護対象に指定されているだろ!
「きみだ」
「お、おお」
「きみがいる、えへへ」
不意に両腕を伸ばすと、まるで小さな子供のように無邪気に抱きついてきた。
はぁッ、はあはぁん、はぁああぁ~~~ッ!
―――愛い。
寝起きの体が温かいなあ、ポカポカして甘いお花の匂いがしゅる、しゅき♡
「うれしい」
「そっ、そうだな」
「あたたかいね、健太郎」
んんっ、お顔を俺の胸にスリスリしないでくれ!
股間にいよいよ血が集まってきた! デンジャーッ! デンジャーッ!
それにしても柔らかいなあ。
理央ってマシュマロでできてるんじゃないか? どこもかしこもスベスベでモチモチ、柔らかすぎる。
ん? この特に神がかったまろやかな柔らかさの、結構質量のあるふくらみは何だ?
俺にムニュッと押し付けられているぞ、これは、まさか、よもや―――!
う、うおお。
うおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!
「あれ?」
ッくぅ! ちょ、待った。
何か股間に触れてる!? グイグイ押してくる!
「これ、なに?」
「はぅッん!」
「健太郎、どうしたの?」
ち、違う。
理央ちゃんダメ、ダメッ!
「ねえ、硬いよ、これ、なに?」
「こ、これはねえ、なぁんでもないぞ~ッ!」
笑って誤魔化しつつ手でガードしようとして気付いた。
あたってるの、理央の太ももだぁ!
うわーっ柔らかい! モチモチ! ちくしょう!
太ももってことは付け根にお股があるってことじゃないか、つまり俺はッ、俺はッ!
「健太郎?」
「だ、大丈夫、大丈夫だから、それより理央」
「なに?」
「おしっこ行きたい、行かせて?」
涙目で頼み込む。
もう限界だ、これ以上元気になる前にどうか見逃してくれぇ。
「トイレかい?」
「う、うん」
「いいよ」
やっと俺の脚の間から理央の脚が抜けた。
諸々誤魔化しつつベッドから降りようとすると、不意にクスクスと笑い声が聞こえてくる。
ん?
振り返ると、上掛けの影から様子を窺うように見ている色素の薄い目と目が合う。
「早く戻っておいで」
―――おい理央、お前まさか。
「こら」
「なんだい?」
「お前、今のワザとだろ」
またフフッと笑って、理央は上掛けの中にモゾモゾと引っ込む。
こいつ!
「こら理央!」
「うわっ」
飛びついて押さえ込んだ!
上掛けで包んだ理央をギュウギュウと抱きしめる!
こいつめ、からかいやがって、許さないぞ!
「ごめんごめん! 苦しいよ健太郎、許して!」
くぐもった声に腕の力を抜くと、また上掛けの中がモゾモゾして、理央がプハッと顔を覗かせる。
「ハハッ、改めておはよう、朝から元気だね?」
「お陰様でな!」
「怒るなよ、健康な証拠じゃないか、結構結構」
またからかいやがって。
そんな可愛い顔しても許してやらないからな!
「俺が言うのもアレだけど、お前は少し慎みを持て」
「なんだい、昨夜は僕に手も出さず、先にさっさと眠ってしまった薄情者の分際で」
「そ、それは、仕方ないだろ、それに俺はまだそういうことはしないんだ」
「ふぅん」
理央はつまらなそうに鼻を鳴らす。
「じゃあ、キスは?」
「キスはする」
クスッと笑う理央と見詰め合って、唇を重ねた。
―――柔らかい。
甘く蕩けるおはようのキス。
こうしているだけで無限に幸せが広がっていく。




