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番外編/幕間 初めての…… 3

「さあ、既にお話は伺っております、こちらをお召しになって、どうぞの調理台へ」


別のシェフが俺と理央にエプロンと三角巾を手渡してくれる。

おおっ! うおおおおおおおおおッ!

理央の三角巾アンドエプロン姿!

か~~~~~わ~~~~~い~~~~~い~~~~~~ッッッ!!


「さて、健太郎」

「おう!」

「せっかくの機会だ、今日はぜひ僕に料理をご教授願いたい」

「ほえ? おにぎり作るんじゃなかったのか?」


理央はまたモジモジする。

ん~可愛い、いいぞ、何でも教えちゃう。

俺に任せておけ!


「じゃあ、まず理央は手の保護だ、怪我しているからな、お前のためにも料理を作る上でも必要だ」


そう言った直後にシェフの一人が「こちらを」と使い捨てのビニール手袋をサッと出してくる。

準備がいいな。


「着けたよ」

「よし」


改めて調理台の前に立つ。

さて、何を作ろうか。

理央には危ないから刃物も火も使わせられない。

実際、理央一人でトリュフチョコを作った結果があの怪我だ、周りにいるシェフたちも止めるだろう。

俺達の背後では料理長が腕を組んで見守っている。

うーん―――あ、そうだ!


「じゃあ、ちぎりキャベツのサラダを作ろう」


突然、調理場に拍手が鳴り響く!

料理長とシェフたちだ、全員が笑顔で手を叩いて、うう、気まずい。

本職の前で家庭料理を披露するのはだいぶ、いや、かなり肩身が狭いんだが。


「ええと、材料だけど、キャベツとツナ缶、それから塩昆布、あと、黒コショウと粉チーズもあるといいな」

「どうぞ」


言った端から全部出てきた。

まるでテレビの料理番組みたいだ。


「それじゃ、理央」

「はい」

「まずはキャベツの葉を剥いて、洗って、手で千切る」


手順を説明しながら実際にやってみせる。

理央も俺を真似してキャベツの葉を剥いて、洗い、千切っていく。

脇からすかさずザルが理央の傍に置かれ、理央は千切ったキャベツをそのザルへ入れる。

なかなか手際がいいな、呑み込みも要領を掴むのも早い。

流石は俺の理央。


「キャベツが用意できたら、ボウルに移してツナ缶と混ぜ合わせる」


またすぐボウルが出てきた、しかも手頃なサイズ。

ボウルに移したキャベツの上にツナ缶の蓋を開けてオイルごと中身を投入する。

ツナを菜箸で軽く解したら、続いて塩昆布を入れ、家ではここでうま味調味料を振りかけるんだが、今回は流石にナシだ。


「あの、ゴマ油と白だしってありますか?」

「勿論ございます、どうぞ」


出てきた、意外だ。

ゴマ油はともかく、だしはかつお節や昆布からひいているだろう、市販品のダシなんて置いてないかと思った。

じゃあ、うま味調味料もあるか?

いや、やっぱり今回はいい。塩昆布もあるしな。


「ごま油大さじ一、白だしは大さじ二、黒コショウ少々」

「大さじはこちらです、どうぞ」


段々このやり取りにも慣れてきた、受け取った大さじを理央に渡す。

理央は俺が言ったとおりさじで計量したゴマ油と白だしをボウルに入れる。

黒コショウだけは俺が適量ふりかけた。


「さて、そしたらボウルの中身を手で揉んでよく混ぜ合わせるんだ」

「揉んで、混ぜる?」

「こうだよ」


俺もビニール手袋を嵌めてやってみせて、理央にバトンタッチ。

理央は今度も上手に作業する。

その様子をシェフたちが固唾を飲んで見守っている。

―――なんだか授業参観めいてるな。


「健太郎、どの程度混ぜ合わせればいい?」

「キャベツがしんなりするくらいかな」

「しんなり、の基準が分からない」

「うん、そろそろオッケーだ、こんな具合だよ」

「これがしんなりか」


和えたキャベツとツナを、またもや知らぬ間に用意されていた器に移して、仕上げに粉チーズを振りかける。

これにて完成だ!


「ブラヴォーッ!」


突然の喝さいと同時に再び厨房中に拍手が鳴り響く!

料理長とシェフたちは揃って感激して、料理長なんか涙ぐんだ目元を手で拭っているし、なんだこれ。


「素晴らしい! 大磯様のお手前、まことお見事! 理央様も素晴らしいッ、美味しそうなサラダが出来上がりましたな!」

「ああ、健太郎のおかげだ、教え方が上手いから僕でもどうにかこなせた」

「ええ、それはもう、全てにおいてパーフェクトでした、流石は理央様の御眼鏡に適った御仁、感服いたしました!」


色々と突っ込みどころしかないが、いいか。

褒められて嬉しそうな理央も可愛いし。

でもまあ実際サラダは美味そうにできた、理央の手作りだからこれも俺の好物確定だな。


「では、こちらはひとまず厨房にてお預かりいたします、晩餐の際に改めて卓へお持ちいたしましょう」

「よろしく頼む」

「理央様、おにぎりは如何なされますか?」

「それは健太郎が小腹を空かせているから、作って部屋へ持っていく」

「承知いたしました、調理の準備は整っております、さあ、どうぞこちらへ」


俺と理央で作ったサラダに、シェフの一人がラップをかけて業務用の冷蔵庫にしまう。

その間に俺達は別のシェフの案内で炊飯器が置かれた調理台の前へ移動した。

おにぎりの具や器具、材料と道具が一通り揃っていて、あとは握るだけって状態だ。


「それでは大磯様、今回も理央様をお任せしてよろしいですか?」

「あ、はい」

「理央様、何かございましたらお声がけください、どうぞお怪我の無いように」

「分かった」


料理長とシェフたちはやっとそれぞれ仕事に戻っていく。

だけど時折こっちをチラチラと伺って、まだ気になるそぶりを見せている。

興味津々って雰囲気だ、相変わらずやり辛い。


「健太郎、早速始めよう」

「ああ」


今度は理央とおにぎり作りだ。

俺はカレーと唐揚げに関してはどんな状態でも幾らでも食えるから、晩飯のことは気にせず作るぞ。

のりを巻いたベーシックおにぎり、ゴマ塩を振ったシンプルおにぎり。

理央もなかなか手際がいい。

おにぎりは作り慣れたんだろう、一生懸命に米を握る姿が可愛いな。


「これくらいでいいか」

「そうだね、結構作ってしまった」

「平気平気、全部食えるよ」


作ったおにぎりをシェフの一人が用意してくれた皿に乗せ、軽くラップをかけて俺が持つ。

夕食前の忙しい時間帯に調理場を使わせてくれた料理長とシェフたちにお礼を言い、厨房を後にした。

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