番外編/幕間 初めての…… 1
※この番外編は健太郎と理央が延々イチャつくだけのパートです。
もちろん作者の趣味です。
物語自体の続きを早く楽しみたい方は読み飛ばして問題ありません。
お好みでどうぞ。
LOOP:×××
Round/Oh! My Sweet Darling!
「それにしても」
さっき天馬さんが来て「お茶のおかわりを」と淹れなおしてくれた紅茶を一口飲んで、思う。
―――大変だったな、この四日間。
協会とサラに振り回された日々だった。
理央も天ヶ瀬家の後継者としての資格を試されていたらしいし、お互い災難だったよな。
だが結果オーライ、俺はちゃんと理央を取り戻した。
そしてどうやら俺達は自動的に婚約状態になったらしい。
本当にいいんだろうか。
俺としてはエビでタイを釣ったくらいの気分なんだが、こんな平凡な男に天ヶ瀬財閥総帥の夫なんて大層な立場が務まるのか?
いや、弱気はよくない。
腹を括って努力しよう。
ひとまず目下の目標としては、理央のご両親に気に入ってもらうことだな。
あと、親父にだけは絶対に理央を会わせない。
ヤツは美女と見れば色目を使うケダモノだ、母さんにも協力を仰いで必ず阻止しなければ。
「どうしたんだい、健太郎」
話が済んでから俺にベッタリ甘えっぱなしの理央が見上げてくる。
改めて普段とのギャップが凄い。
こんな姿を見られるのも彼氏の、いや、婚約者の特権だよな。
「あーいや、なんでもない」
「そう、ところでそろそろ昼だよ」
「ん? ああ」
理央が指した置時計を見ると、確かにそんな時刻だ。
トリュフチョコもオペラもカップチョコも美味しかったけど、腹の足し程度にしかなっていない。
そろそろガツンとした飯が食いたいよな。
「ねえ、よければこのまま、一緒に昼食を取らないか?」
「おっ! いいのか?」
「勿論」
「サンキュー理央、恩に着るよ」
フフ、と笑った理央は不意にモジモジする。
「それで、その―――」
どうした、トイレか?
いいぞ、行ってこいよ。
生理現象だもんな、俺に気なんか遣わなくていいぞ。
「少々提案があるのだが」
「ん?」
「今日はこのまま休むとしよう、君は疲れているだろうし、ほら、怪我もしている、安静にするべきだ」
結構平気だけどなあ。
傷は手当てしてもらったし、体力も風呂に入ってのんびり休んでほぼ回復した。
あとは飯を食えば完全復活だ。
「どうだろうか?」
上目づかいで伺ってくる理央を見て、うーんと考えこむ。
まあ、いいか。
今更登校するような気分でもないし、このまま理央と一緒に過ごす方がずっと有意義だ。
それに、理央成分に関してはまだ全然不足している。
四日もチャージできなかったから当然だ、もしかすると理央もそうなのかもしれない。
「いいぞ」
「そうか!」
途端にパアッと明るくなる表情にグッとくる。
よしよし、可愛いやつめ、今日は久々に二人でのんびりしような。
「よかった、実は既に学園には連絡を済ませている」
「え?」
「君の御母堂にも話は通したよ、それで、その」
またモジモジする理央の頬がポッと赤く染まる。
「伝言を預かっている」
「なんて?」
「くれぐれも節度は守るように、とのことだ」
か、母さんッ!
俺を親父と同じ枠で括らないでくれ!
しかし、バレンタインに俺達が揃って休んだら、後で当然勘繰られるだろう。
冷やかされるのはまあいいとして、問題は皆が俺に渡すために用意してくれているであろうチョコだ。
ループ前は貰ったもんな。
だから今回も多分ある、それを受け取れないのが申し訳ない。
まあ、諦めよう。
理央も知ったら確実に拗ねる、今度こそ八つ裂きにされるかもしれない。
フォローはホワイトデーにするか、貰ってなくてもお詫びの品を用意しよう。
女の子を悲しませるのはよくないもんな。
義理だけは通すぞ。
「どうした、健太郎?」
「えっ、いや、まいったなーと」
「そうだね」
恥じらう理央は可愛い、あと勘違いしてくれて助かった。
それはともかく、母さんの思い違いと、外堀を埋められているような感覚は、まあ―――気にしないでおこう。
細かいことに拘らないのもいい男の条件だからな。
理央に案内されて食堂へ移動する。
金持ちの家は飯を食うためだけの部屋があるから驚きだ。
しかも着いて更に驚いた。
俺の家のリビングの十倍くらいの広さがある、あちこちに飾られた芸術的な調度品、おお、暖炉まであるぞ!
部屋の中央には染み一つない真っ白なクロスの掛かった長いテーブルが置かれて、そのサイドに等間隔で並べられた椅子の間はゆったりと距離が取られている。
ん? 端の方の席だけ妙に近いな。
スタスタと歩いて行った理央はその席に座り、隣の席を俺に勧める。
なるほど、そういうことか。
「えっ、からあげ!?」
間もなく運ばれてきた料理を見て驚いた!
大皿にてんこ盛りになったから揚げ!
この雰囲気でから揚げが出てくるなんて、唖然とする俺に理央がクスクス笑う。
「君のために作らせたよ、僕からのささやかな労いさ」
「おお、マジか!」
「好きなだけ召し上がれ、足りなければおかわりもある」
「あッ、有難う、理央!」
「どういたしまして、さあ、どうぞ」
「いただきます!」
天ヶ瀬邸のシェフが腕を振るったから揚げ!
うわーっ、弁当で食うやつより揚げたてはサクサクでジュ~スィ~!
美味いッ! 香ばしい衣! 肉汁たっぷりで柔らかなモモ肉! 噛むたびに口いっぱいにジュワッと広がる旨味!
はわ、はわわっ、あッ! ああ~ッ!
満たされていくぅぅぅ~ッ!
美味い、美味過ぎる、これぞまさに至高の唐揚げだぁッ!
「君は本当によく食べるね」
気付くと理央がニコニコしながら俺を見ている。
周りで給仕してくれるメイドさんたちも心なしか微笑ましげだ。
「りふぉもたふぇろよ」
「こら、食べながら喋るなといつも言っているだろう、行儀が悪い」
「ふぁ」
取り皿に移した唐揚げを、ナイフとフォークで一口大に切って、はい、どうぞ。
理央は戸惑ったように俺を見て、唐揚げを見て、意を決したようにフォークにパクッと食い付く。
「美味い?」
「うん」
そうだろう、なにせ唐揚げには一家言あるこの俺が認めた美味さだからな。
しかし理央の一口はやっぱり小さい、可愛い。
こういうところに育ちの良さを感じる、お嬢様というか、俺からすればお姫様だ。




