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第六章 また、いつかの春に⑧
時田と必死に戦いながら、本当は、分かっていた。永井は、ここで死んでしまうんだということも、永井は死を受け入れていたということも。それでも、僕は必死だった。永井を守りたいという気持ちは、理屈ではなかった。
倒れた永井の腰のあたりに、一枚の花びらを見つけた。血で赤く染まっていたが、それは桜の花びらだった。
渡り廊下で永井の頭にのって、僕がとって永井にあげた、あの桜なのかも、しれない。永井は、それを大事にしまっていたのかも、しれない。
これが、あのときの桜だという証明は、どこにもない。でも、僕は、この桜は、あのときの桜だと、決めた――信じた。それもやっぱり、理屈ではなかった。
どこかから、救急車のサイレンが聞こえてきた。もう、お別れみたいだ、永井。最後まで、僕は永井のそばにいるよ。永井が、もう僕のことを見えていないとしても、僕はこうやって永井のそばにいるよ。だって、永井は今まで、僕の知らないところで、ずっと僕のそばにいてくれていたのだから。
ねえ、永井。また、会えるよね? いつか、また、会えるんだよね? だから、今は桜から、さよならを言うよ。また、いつかの春に、会おう。そのときは、またいつもみたいに笑い合えるかな。
だって、永井はもう、いないのだから……。




