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第六章 また、いつかの春に③

「じゃあ、そろそろ帰ろうか」

 本日の文芸部の活動を終え、永井は帰り支度をしながらみんなに声をかけた。夕方の五時を過ぎていたが、外はまだ明るかった。

「あ、はるちゃん。今日は、私と亮ちゃん、ちょっとまだ部室に残ってるからさ、先に帰ってて」

 美紀が亮祐と目配せをして、椅子から立ち上がりながら、言った。

「そうなの? だったら、私もいっしょに部室で待ってるよ。何かやらないといけないことがあるの?」

 永井は、背負いかけたバックを机の上に置きながら言った。

「ちょっとね、亮ちゃんがまだ春休みの宿題を終わらせてないって言うから、勉強手伝ってあげようかと思ってね。だから、先に行っててよ。たぶん、一時間くらいやっていくから」

「そっか。亮祐くん、勉強のことになると、本当にいつも問題起こすよね」

 永井はいたずらっぽく「あはは」と笑い、僕に笑顔を向けて「そういうことだったら、私たちも手伝うよ。ね、誠太くん」

「うん、そうだよ。僕たちも手伝うからさ。その方が早く終わるでしょ?」

 亮祐は、手伝おうとする僕と永井に手を振って、「いいって、いいって。化学の宿題をやろうかと思ってるから。お二人は帰りなって」と言った。

美紀も「そうだよ、二人で帰りなよ」と微笑む。

タイムループ前と同じ、だ。僕は永井と視線を交わした。永井も、僕を見て申し訳なさと嬉しさが混じったような笑顔を浮かべて、大きく頷いた。

「分かった。そういうことなら、私たちは先に帰るね。じゃあ、またね」

「ばいばーい。誠太ちゃんに、はるちゃん」

「ほら、亮ちゃんは勉強するの。はい、シャーペン持って。じゃあ、誠太、はるちゃん。またね」

 僕と永井は二人で部室を出た。戸口越しに、美紀と亮祐の話し声がぼんやりと聞こえていたが、廊下を進むうちにそれも聞こえなくなった。


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