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第五章 真相吐露⑬

三学期が始まって一ヶ月と少しが経った、二月も終わりを迎えていた今日。僕は二年一組の教室で、現代国語の授業を受けていた。

「それでは、次の段落から、永井さん、詠んでください」

「はい」

 永井が教科書を手に椅子を引いて立ち上がり、文章を読み上げる。

僕は、毎日を一歩一歩踏みしめるように、大切に生きていた――永井の言っていた「今を一生懸命に生きる」という言葉を刻みながら。

 僕が永井と仲直りをしたのを見て、亮祐も安心したのか、前のように子どもっぽくはしゃぎながら、美紀にちょっかいを出す。いつもの亮祐に戻っていた。楽しそうに美紀と話す亮祐の気持ちを胸に染み込ませながら、美紀の僕への想いを抱きとめて、僕は永井とたくさん笑った。

 常盤くんも、僕と永井が仲睦ましくいっしょにいる姿を見て、嬉しそうに、そして少しだけ悔しそうに、眼鏡の奥をゆるめていた。常盤くんの幸せそうな笑顔も、僕は心に焼き付けて、だからこそ、もっと永井といる今を大切にしたいと思う。

 窓の外に目をやる。朝から降り始めた雪は、お昼ごろから強くなり始めた。今年は雪の多い年となった。春はもう目前に迫っているのに、気温もなかなか上がらない。

 雪の舞い落ちる姿は、涙が頬を伝い落ちる姿に似ているのだと、誰かが言っていた気がした。もしかしたら、それは、僕自身かもしれなかった。

けれど、僕は思う。雪が舞い落ちる姿は、桜が花を落とす姿に似ているのだ。舞うように降る粉雪を、風花とも言う。そして、桜吹雪なんていう言葉もあるのだから、やっぱり雪と桜は似ているのだ。

 校庭には雪が降り積もっていて、白に、鮮やかすぎるほどの白に染まっていた。春になれば、この白は、桜色に染まる。けれど、桜の花びらも一枚一枚を取って見れば、ピンクというよりもむしろ白に近くて、結局、春になって桜が散っても、校庭に染まるのは雪と同じ白なのかもしれない。

 けど、そこにあるのは確かに桜で、雪の冷たさではなく、桜の暖かさが僕たちを包んでくれるはずだ。

 時間は巡る。季節も循環する。けど、それを感じる心は、ずっと変わらず確かにここに存在している。いや、もしかしたら、冬に雪が変わらず存在するように、春に桜が変わらず存在するように、僕たちは、季節の中に存在している。

 永井の朗読する声が聞こえる。目を閉じると、僕の中に永井の声が響く。永井がいる今を確かに確認できる。

冬に鳴る風鈴も、なかなか風情があって心地よいものなのだなと、舞い降る雪と永井の声を聞きながら思って、静かにほころんだ。


 春よ、こい。そして何度でも巡ってくるがいい。


 永井の朗読が終わって、次の生徒が立ち上がって教科書を詠み始める。永井は椅子に座って、振り向いて、はにかみながら僕に小さく手を振った。

 僕も微笑みながら永井に手を振り返す。

常盤くんがそんな僕と永井の様子を見て、「やれやれ、教室でしかも授業中にのろけないでくださいよ」とでも言いたげに苦笑いを浮かべた。その苦笑いはどこか悔しそうにも、嬉しそうにも見えた。


 窓の外では、まだ雪がしんしんと降り続いていた。


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