第五章 真相吐露③
告別式が行われた日の就寝前、僕は常盤くんにメールを送った。
「先週言ってた話って、タイムループの話だよね?」
常盤くんはすぐに返信をよこした。
「そうです。それよりも大丈夫ですか? 今野くんのお母さんが亡くなったことは、先生から聞きました。今野くんの様子はどうですか?」
「ありがとう。美紀は昨日から全く話そうとしないんだ。呆然としてて……全然大丈夫じゃないと思う。たぶん、しばらくは学校を休むことになるよ」
「そうですか……。遠野さんは大丈夫なんですか?」
「僕は、まあ、あんまり大丈夫じゃないけど。明日からは学校に行くつもり。それで、常盤くんに聞きたいことがあるんだけど、タイムループのことに関して」
さっきまではすぐに来ていた常盤くんの返信が、今度はなかなか来なかった。ベッドの上でうとうととしながら待っていると、ケータイが震動した。
「分かりました。それは、明日、遠野さんが学校に来たときにお話しましょう。今日はもう遅いですから、ゆっくり体も心も休めてください。それでは」
「ありがとう。お休み」
「お休みなさい」
そうして僕はベッドにもぐり込んだ。日曜日の寒さは、ずっと続いている。今日も、真冬のように寒かった。
もしかしたら、この世界では、過去を変えることはできないんじゃないか……。そんな絶望的な気持ちにもなった。そう、絶望的な気持ちに。もちろん、真相は分からない。でも、でも、でも……。
もし明日タイムループの話を聞いたら、僕はどうなってしまうのだろうか。
怖かった。いっそ知りたくもなかった。いや、僕が知りたくないと拒んだとしても、常盤くんが自ら話すだろう。先週の部室での常盤くんの表情が思い浮かぶ。
同時に、まだ永井に自分の気持ちを伝えられていないことにも気がついた。美幸さんや美紀のことで頭がいっぱいになっていた数日間だったのだから、それも無理はないことなのかもしれない。
眠りにつこうとしたそのとき、再びケータイが鳴った。常盤くんからかな、と思っていると、あて先は亮祐になっていた。たった一行の、絵文字も顔文字もなく味気ない、だから、本気で真剣な気持ちが伝わってくる。
「今野のこと、よろしく頼みます」
僕は返信をしなかった。してはいけないのだと思った。安易に言葉を返していい類の言葉ではない。返信をしないことが、そのまま亮祐の気持ちを受け取ったというしるしになるのだと思った。
知るということは、やはり残酷なことなのかもしれない。何も知らないことは幸せなことなのかもしれない。でも、知らなければ何もできない。知らないまま、取り返しのつかなくなってから知るということの方が、はるかに残酷なことなのだから。
次の日、僕は二日ぶりに登校した。美紀は、今日も立ち直れそうにない。そばにいてあげるべきだったかもしれない。幼馴染として、親友として、いや、僕にとって大切な美紀という存在のために、僕がそばにいてあげるべきだったのかもしれない。それができるのは、僕だけなのだから。
一人で通るいつもの通学路は、心に穴を開けるほど寒々しかった。




