第四章 告白、告白、告白……⑱
次の日の朝、僕は美紀の家のインターホンを鳴らした。ほどなくして美幸さんの「はーい」という声が聞こえてきて、その声に応えるように「お母さん、私が出るからいいよ」という美紀の声が聞こえてきて、さらにそれに応えて美幸さんが「いいじゃない、私だって、誠ちゃんとお話したいから」という声が聞こえてきて、がちゃり、という音を締めくくりに、玄関のドアが開いた。
「誠ちゃん、おはよう」
「おはようございます。二人の声、外まで聞こえてましたよ」
「あら、恥ずかしいところを聞かれちゃったわね。それよりも、誠ちゃん。今日は美紀とデートなんだってね」
美幸さんが「うふふ」と笑う。
「お母さん、どいて。私、もう行くから」
美幸さんを押しのけながら、玄関の外に出てきた美紀は「あと、デートじゃないからね」と美幸さんに笑いかけながら言った。
「美紀……」
「さ、行こう、誠太」
「……うん。よし、行こう!」
「行ってらっしゃーい」
美幸さんが笑顔で僕たちに手を振る。僕は「あ、そうだ、美幸さん」と振り返った。
「あら、どうしたの、誠ちゃん」
「明日の日曜日って、何か予定ありますか?」
明日の日曜日、十二月一日の日曜日は、マラソン大会が行われる日だ。
「いいえ、何もないけど。どうしたの?」
「あ、そうですか。分かりました。でも、何でもないんで、気にしないでください」
「よく分からない子ね。じゃあ、二人とも行ってらっしゃい。事故には気をつけるのよ」
「小学生じゃないんだから。そのくらい分かってるよ。じゃあ、行ってくるね」
美紀は呆れ顔で、でも少し嬉しそうに美幸さんを振り向いて手を振った。




