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第四章 告白、告白、告白……⑲

 冬の朝は冷え込んでいて、空気もキンッと音がしそうなほど冷たい。

「明日、なんだね」

 僕は美紀を見て言った。

「でも、本当に、何もないからね。お母さんが、死んじゃうような出来事が起こるとは思えないくらい。一応、私も、明日は一日中お母さんといっしょにいるつもりだけど」

「そっか。僕もいっしょにいようか? 美紀一人で大丈夫?」

「大丈夫も何も、何かするわけじゃないんだから。もしも、手を借りたいときがあったら呼ぶよ。だから、誠太も明日の日曜日は、家にいてよね」

「了解」

「ところでさ、誠太が書いている短編なんだけど……」

 美紀は、そうして文芸部で今書いている短編小説の話を始めた。

普段通りだ。当たり前すぎるくらいに普段通りだ。だから、僕も普段通りに美紀と接する。昨日の今日だったが、美紀は気にしている様子はない。だから、僕も気にしない。美紀が僕のことを好きだとしても、僕は永井のことが好きだし、美紀もそれでいいと思っているのだと、思うから。

 駅に着いて、電車に乗り込んだ。車内は少し混んでいたが、何とか二人分のシートを確保できた。

 電車の中で、美紀は少し眠った。疲れているのだろう。僕は昨日の出来事を思い出す。あれは、美紀なりに、精一杯の告白だったのだから。

 僕は、いつかの美紀の言葉を思い出していた。

 大切だから、いつも通りに接するし、いつも通りの私でいたいと思えるのは、その人が大切だからでしょ。

 美紀にとって、僕は大切な存在になれているだろうか。それは、恋愛感情じゃなくたっていい。僕にとって美紀は、姉のような、妹のような、親友のような、家族のような、大切な幼馴染なんだと、そんな大切な存在なのだと、思っている。

恋愛感情は、やっぱりない。でも、僕は確かに美紀のことが大切で、臭い言葉を借りれば、愛しているのだから。それは、もちろん、友達や家族に言う意味での愛している、だったが。


 駅に着いて、僕たちは電車から降りた。

「ごめん、私、ちょっと寝ちゃってたみたい」

「いいって、気にしなくても。わざわざ謝るようなことでもないよ」

「もう、振られたあとにそんなに優しくされたら、また好きになっちゃうじゃない。本当に、誠太は、バカなんだから。その優しさ、ちゃんと、はるちゃんにも向けてあげなさいよ」

「うん、分かってる」

「それなら、よし!」

 僕たちは歩き出す。まずは、この通りの先にある本屋だ。色んな本が、まるで図書館みたいにずらっと並んでいるこの街で一番大きな本屋だった。

 並んで歩いているときに、僕はふと口を開いた。

「ねえ、美紀。昨日、常盤くんが言っていた話って何だろう。たぶん、タイムループの話だとは思うんだけど……」

「そうね。私は嫌な予感しかしないんだよね。常盤の話すタイムループの話って、ろくな話がないじゃない。私たちがバスの事故で死んだ、とかね。それに、常盤、昨日怒ったような様子だったし。やだなあ、私、聞きたくない」

「委員会もいい顔をしない、とか言ってたよね……。本当に、何なんだろう。怖いな。でも、」

「でも?」

「まずは、永井とちゃんと話さないとね。どこまで話せるか分からないけど……。でも、僕の気持ちをちゃんと永井に伝えないとね」

「はるちゃんに、告白するの?」

「ううん。まだしないよ。永井に今までのことを謝ることが最初。そこから、もし永井が許してくれるなら、少しずつ、前みたいに話せるようになりたい」

「そっか。頑張りなよ。私は、いつだって誠太を応援してるから」

「ごめんな、美紀」

「何を謝ってるのか分からないんだが?」

「美紀……。っていうか、何、その口調」

「別に、なんでもないよ。気分よ、気分」

 美紀は少し顔を赤らめてぷいっとそっぽを向く。僕はくすりと笑う。それにつられて美紀も「ふふっ」と笑った。

 冬の日差しは弱々しい。太陽の熱よりも吹きつける風の冷たさの方が、肌に沁みる。それでも、太陽は頑張って僕たちを照らしてくれる。明日もまた太陽は昇る。僕たちを弱い光で見守ってくれる。

 神様が、僕たちをこの世界へとタイムループさせてくれたのなら、僕は神様に祈り、そして誓おう。

 永井を必ず守ってみせる、と。だから、僕たちを見守っていてほしい、と。

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