表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
33/69

第四章 告白、告白、告白……⑧

「永井と、付き合えたらいいね」

「うん。それが一番いいよね。でも、永井さんが笑ってくれれば、それが僕の幸せなんだから、それでいいんだ」

「そっか。時田は本当に優しい男だね。ここまで想われて、永井も幸せ者だね」

「そんなことないよ。だって、永井さんが幸せになればいいとは思うけど、他の男の人といっしょにいるのを見るのは、嫌だもん。だから、実を言うと、僕は永井さんが遠野くんと話しているのをみるの、すごく嫌なんだ」

「おお、えらく素直に出たね。でも、そういう気持ちになるものかな」

 時田に微笑みを見せた僕は、時田と話していくうちに、ある恐怖感を抱いていた。

 時田が永井に告白をして振られた場合、こいつはどんな行動をとるのだろうか。それを想像すると、怖くてたまらなくなる。そして、どうして時田がいるんだ、と理不尽な思いを抱いたりもしてしまう。

 びゅううっと風が電線を揺らして、落ち葉を吹き飛ばしていった。

「寒いね。遠野くん、マフラーも手袋もしてないけど、大丈夫? よかったら、僕のマフラー使う?」

 時田は今にも自分の首に巻いていたマフラーを取ろうとしていた。

「いや、いいよ、大丈夫。ありがとう」

 時田は普通にしていれば、いいやつなのだ。気持ちがお互いに通じていれば――いや、決して僕とは通じ合っているわけではないけど――こんなにもいいやつで、優しい男なのだ。

 臆病でおどおどしていて、人見知りもして、でも、仲良くなると急に人懐っこくなって、自分の好きなことには夢中になれて――でも、だからきっと、思い込みも強い、のだろう。思い込みが強ければ、一つのものに執着する気持ちも強くなる。執着心が強ければ、それだけ裏切られたときの反動も、強烈なものとなる。

 時田のこの優しい性格が、狂気に走らせる最大の要因であるとするならば、僕にはもはや、優しさの意味など、分からなくなってしまう。

 背中が、ぞっと冷たくなった。吹き抜ける冬の風のせいではなかった。

 ファミレスでの時田の言葉を思い出す。

 何というか、永井さんは誰にも汚されたくないっていうか、綺麗なままでいてほしいっていうか。自分の好きな人が誰かの手で染められちゃうって想像すると、堪らなく嫌だよね。

 この言葉を聞いた瞬間、僕は立ち上がって時田に掴みかかりそうになった。

 永井を何だと思っているんだ。永井はお前の人形なのか? と。

 怒りで身体が震えた。心の中で大きく深呼吸をして、拳を必死に抑えていた。笑顔は崩さないようにしていたが、頬がぴくぴくと痙攣していた。

 永井と付き合うようになって僕を殺そうとしたのも、この『永井を汚されたくない』という自分勝手で汚らしい考えに基づいているのかもしれない。そう考えたら、怒りとか悔しさとか悲しさとか、色んな感情が身体の奥から込み上げてきた。

僕は、それを何とかこらえるために、「もう、帰ろうよ」と声をかけて、足早にファミレスを出て行ったのだ。

 優しい優しい時田は、やはり僕を殺そうとする狂気を隠し持っているように思えた。僕が永井と付き合ったら、永井を汚されたと感じて僕を殺そうとするだろう。 時田にとって永井は、いつまでも優しく可愛らしい、お人形のように都合のいい女の子でなければならないのだから。

 時田の永井への想いが、未来を覆い隠すほどに憎らしかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ