第四章 告白、告白、告白……⑤
一時間ほど勉強したところで、晩ご飯を食べた。僕は和風ハンバーグにライスを、時田は野菜サラダとグラタンを注文した。
食事を終えたあと、僕は、そろそろ本題に入らないと、と思い、時田と向き合った。
「時田って、あんまり食べないんだね。勉強してるのに、それじゃあお腹空かない?」
「うん。大丈夫だよ。でも、不思議に思わない? 僕は、あんまりご飯食べないのに、背が高いって」
突然、時田が自分の話を振ってきた。僕は怪訝に思いながら答える。
「不思議かもしれないけど、そういう人もいるんじゃない? そもそも背の高さって遺伝でほとんど決まるんでしょ」
「僕の家は、両親の背が高いから、僕の背が高いのも、たぶん親の遺伝なんだと思う。昔からご飯を食べる量は少なくて、小学校のときなんか、給食もよく残していたんだけど、背は勝手に伸びていったんだ。でもね、僕はあんまり背が高いって言われるの、好きじゃないの。コンプレックス、っていうかさ。ほら、僕、身長の割りにおどおどしているし、運動も苦手だし、弱虫だし。それで周りからよく、でかいくせに情けないって、バカにされてたんだ」
「そうなんだ。そういうこと言う人、いるよね」
僕は形だけでも、同意を示した。
「うん。もう、たくさん。あのね、僕、遠野くんと仲良くなれて嬉しいんだ。遠野くんは僕のこと、背が高いくせに、とか言わないで、普通に話してくれるし。もちろん、最初に会ったときに胸をつかまれたのは驚いたけどね」
「まあ、あれ、その、ごめん」
「はは、ごめん、ごめん。ちょっと意地悪しちゃった。でもね。遠野くんとちゃんと話してみると、遠野くん、優しくて。僕はあんまり友達もいなくて、他のクラスで知り合いとかほとんどいなかったから、遠野くんと友達になれてよかった」
時田の目尻が下がる。頬が緩む。本当に嬉しそうな表情をしていた。ただ嬉しいという感情だけが、時田の顔には浮かんでいる。
友達、か。その言葉は、口には出さず、僕は息を吐きながら、言った。
「時田って、永井ともたまに話してるよね」
「うん」
「どうして?」
「永井さんは、中学校がいっしょだったんだ。二年生のときは同じクラスで、だから、それで、今も廊下とかで会ったら話すこともあるんだけど……」
時田が急にもじもじとし始めた。僕は、ここだ、と思って話を切り出す。
「時田、永井のこと好きなんでしょ」
「え、えええ?」
「ほら、好きなんだ」
僕は死ぬ気で、精一杯に頬を緩めた。そうしないと、引きつったような顔になりそうだった。
「いや、その、どうして知ってるの。まだ誰にも言ったことないのに……」
「ふふふ、すごいでしょ。この前、時田が永井と話しているのを見た時にね、気づいちゃったんだ」
もちろん、嘘である。
「そ、そうなんだ。うーん、遠野くんだったら言ってもいいのかな……。僕ね、その、永井さんのこと、す、好き、だよ」
「ほらー、やっぱり好きなんじゃん。もう、隠さなくてもいいのにー」
「やめてよお。恥ずかしいじゃん」
「いつから永井のこと好きになったの?」
「えっとね……。中学の、ときから……」
「中学の、いつから永井のこと好きになってたの?」
「二年生のとき……」
「きっかけは?」
「も、もういいでしょ。恥ずかしいからやめてよお」
矢継ぎ早に質問を繰り返す僕に、時田は大きな体をくねらせながら、手を振った。
「いいじゃん、教えてよ。僕たち、友達でしょ? 時田の心の本音、友達である僕に聞かせてほしいな」
体は大きいくせに、弱々しいやつだ。僕は心の中で毒づきながら、時田に笑いかける。体は大きいくせに、と。
なりふり構ってはいられない。時田の永井への思いを知っておかなければ、これからどう行動すればいいのか、決められない。そのためだったら、憎い相手だろうとも友達を装ってやる。幸い、時田は僕を友達だと思ってくれている。そこに何とかつけこまなければいけない。
「もう、しょうがないなあ……。誰も言わないでよ?」




