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第四章 告白、告白、告白……③

 僕の用事とは、時田といっしょに期末テストの勉強をして、晩ご飯を食べに行くことだった。

 二日前に「期末テストの勉強を兼ねて、ご飯でも食べに行きませんか」と時田にメールをしたのだ。時田はすぐにメールの返信をしてきて、快諾したのだった。

 しかし、僕の本当の目的は、時田といっしょに勉強をすることでも、ご飯を食べることでもなかった。

 時田から、永井への気持ちや考えを引き出したかった。時田がどういう性格で、どういうふうに永井のことを考えているのかを知っておきたかったのだ。


 時田は化学部に所属している。化学部でも、こんな遅くまで活動してるんだなと、どことなく失礼な感想を思い浮かべていたら、廊下から足音とともに声が聞こえてきた。

「遠野くん、ごめん。待たせちゃったね」

 ノッポな身体をゆっさゆっさと揺らしながら時田が走ってくる。面長の顔は、どこか馬に似ている。

「別に、待ってないよ。よし、行こうか」

「うん」

 僕と時田は学校を後にした。外は、もう日も落ちて真っ暗だ。夏まではあんなに日が長かったのに、もう冬の足音が聞こえる。月日の流れを、感じる。

「化学部って、何をやってるの?」

 巡り川沿いの遊歩道を歩いているとき、僕は時田に声をかけた。

「えっとね、色々あるんだけど……。今は、炎色反応の実験を主にやっているんだ」

「へえ、そうなんだ。炎色反応って、僕は文系だからよく分からないけど、どういうものなの?」

「あのね、金属を燃やすと炎に色々な色がつくんだ。で、これを炎色反応っていうの」

「ふーん。面白いね。もっと詳しく教えてよ」

「面白いかな? えっと、そうだね……。じゃあ、例えば、花火も炎色反応の一つなんだ。火薬に金属の粉を混ぜていて、これが炎色反応をおこして、花火は綺麗な色になるの。炎色反応は、ナトリウムは黄色、銅は青緑色って決まってて、だから、僕なんかは花火とか見上げてても、今のはナトリウムで今のはリチウムで……、とか、考えちゃって、全然花火に集中できないんだけどね」

 時田は「くすくす」と笑って、「花火だけじゃなくて、野外演出用の炎色たいまつにも炎色反応が使われていて……」と話を続け始めた。目を輝かせてぺらぺらと喋る。

「何か、時田って変わってるよね。そんなに化学が好きなの?」

「まあ、そりゃあ、化学部だから。ほら、元素周期表ってあるじゃない?」

「え? ああ、うん」

 元素記号が、番号順で一覧表に並べられたあれ、か。

「小学校の頃に、何かよく分からないんだけど、化学記号覚えるのにはまっちゃってさ、107番まである元素記号全部覚えて……。それからもう、ずっと、って感じ」

 時田は、頬を紅潮させて、手振り身振りを交えて早口に喋る。楽しそうに、炎色反応の魅力を伝えてくる。これだけ一つのものにのめり込めるのも凄いなと、僕はどことなく時田に感心していた。

 随分と時田と親しくなったものだ、と僕は自分で自分にも感心していた。こんなに憎らしい相手と、ここまで仲良くなるとは、僕自身思ってもみなかったことだ。

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