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第四章 告白、告白、告白……②

 昇降口まで降りたところで、僕は靴を履き替えずに下駄箱の前で立ち止まった。

「ごめん。今日、これから用事があるんだ。だから、みんなは先に帰っててよ」

「え、何それ。私を駅から一人で歩かせるつもり?」

 美紀が不満顔で僕に文句を言ってくる。

「誠太ちゃーん。俺、寂しいよー。いっしょに帰ろうよー」

 亮祐が駆け寄って僕に抱きついてきた。

「はいはい、分かったから離れて」

「もう、誠太ちゃんのバカ!」

「まあ、寒いから、風邪は引かないでよ。私がうつされたら困るから。バイバイ」

 美紀が僕に手を振って昇降口の外へ出ていった。

「じゃあ、その代わり、今度、俺とたくさん遊んでよ!」

「はいはい」

 亮祐も、僕から腕を離し、美紀のもとへ駆けて行く。

 永井と僕だけが、下駄箱に残った。永井は上目遣いにじっと僕を見つめている。何かを言おうと、でも何も言えないように、ただ黙って僕を見つめていた。

 二学期に入ってから、永井は僕に声をかけることがほとんどなくなっていた。視線は向けても、話しかけてはこない。僕が何も反応をしないからだ。

 だから今みたいに、ただ黙って僕の顔を見つめて――寂しそうに、困った表情で微笑むだけだった。

「はるちゃーん。早く帰ろうよー」

 美紀の声が下駄箱の中に響く。僕はその声に反応するように、リュックを肩から下ろして、中に入っている文庫本を取り出した。

 永井は美紀の声には反応せず、じっと僕を見つめているのが雰囲気で分かったが、僕は永井には目を向けずに、ひたすら本の中の字を追うことに集中した。そうしないと、永井に謝ってしまいそうだった。ごめん、今まで無視していてごめん、また仲良く話したい、と自分の奥にある気持ちを訴えてしまいそうだった。

「はるちゃーん」

 美紀が再び永井を呼ぶと、永井はゆっくりと体を半回転させ、外に出て行った。 僕は並んで歩くみんなの背中を、永井の背中をぼうっと目で追った。姿が見えなくなると、すうっと肩から力が抜けて、ふうっと息がもれた。

 しんどくない?

 いつか美紀に言われた言葉が僕の頭をよぎる。

 辛くなんか、ないよ。そのとき、僕はそう答えた。

 しんどくない? 今度は、今の僕が今の僕に問いかける。そして、答える。

辛いよ。

 永井と笑い合えないことも、永井の悲しそうな顔を見るのも、永井の、これから起こるかもしれない事件に思いを向けることも、全部、辛い。

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