三話青の上級竹精霊、襲来
まだ、霧は出ていないか。
巨大樹の外にやってきたアサルトは、竹精霊を探すため風探知を発動しようとした。だがそんな間もなく、弘毅が上からスルッと降りてきた。
「おい、治療は?」
「終わった。敵はどこだ?」
「あっちだ、って行くな」
弘毅は一度指差したが引っ込めた。アサルトは怪我人だからだ。場所を教えてもらえなかったので、再び風探知をしようとした。そのとき──
『ボンッ』
空中に水色の円盤が現れた。それは霧を出しながら二人の周りを不規則に回っている。
なんだこれは?
アサルトは壁際に退避した弘毅を見る。しかし弘毅は首を横に振っているので知らないことがわかった。
じゃあなんなんだこれは?
まもなく、その円盤が弘毅の正面で停止した。そして青いタケノコになり、すぐ青い竹になった。
竹!? まずいっ!
その青い竹が伸びる先には弘毅がいる。このままなら弘毅を貫通してしまう。
アサルトは青い竹に手をかざし【旋風】と念じた。しかし──
出ないっ!
手が覆われているため手から風が出せなかった。風魔法は繊細で肌からしか出せないからだ。
へそから【風刃】……はダメだ。人間に当たってしまう。
魔法でなんとかしようと考えたが、手でないと緻密なコントロールができないことに気付いてやめた。
よって、アサルトは拳を振り上げ竹に向かって飛び込んだ。竹を叩き落とす、いわゆる脳筋戦法だ。
だがしかし──
ふにゃっ、とした感触の電気信号がアサルトの脳に伝わった。
なんだと!?
アサルトの手は布でぐるぐる巻きされている。それによってダメージが吸収されてしまったのだ。
今も青い竹は弘毅に向かって直進している。
間に合わないっ! もう体を張って守るしか、だが……
そう思った瞬間──
「【炎焔】」
茜が竹を斬った。
硬竹!?
だが、アサルトの目に映ったのは竹を斬った茜ではなく、炎を纏った硬竹の姿であった。
「茜、助かった」
「おうよ、ほんで鬼、これ」
茜はアサルトに硬竹を手渡した。
「助かる。だが、持てない……」
茜はアサルトの手がぐるぐる巻きにされているのを確認した。そしてアサルトも今持てないと気づいた。
「確かに、弘毅これ持っとけ」
「おう……それで美琴は大丈夫か?」
「くくりつけてある」
──巨大樹の中──
「うえ~ん」
「それなら大丈夫やな」
「というか今の竹はなんなん!?」
「おっほん!」
そのとき背後で誰かが咳払いをした。アサルトが振り向くと、そこには入れ歯を装備した里長がいた。
いつの間に来た……?
「さっきのは転移竹、どうやら上級竹精霊がおるようじゃな」
上級と聞くと雰囲気が悪くなった。アサルトも上級と戦ったことはない。このおじいさんはなにか知っている気がする。
「勝てんの……?」
茜は顔を強張らせながら聞いた。
「わからぬ。じゃから、わしも向かう。鬼よ、共に向かうぞ」
「じいちゃん!」
「こうた、お前は見るんじゃ、未来を」
「弘毅……」
「そうじゃった、間違えた、すまん」
入れ歯していても話が通じにくいとはこういうことだったらしい。
「あまね、こうた、おぬしらはここを、祐介が戻ってくるまで、なんとしてでも死守するんじゃ」
「じいちゃん……名前違うけどわかった」
「わかりました、名前間違ってるけど」
弘毅と茜は名前を間違えられるも納得した。(祐介は合ってる)
「では向かうぞ。鬼、いいや、アサルトよ」
「!?」
なぜ俺の名前を知っている……
霧の中、おじいさんは斧を振るい竹を斬る。アサルトはその後ろについていく。
「人間……なぜ俺の名前を知っている?」
「Assault Demon計画、というものを知っておるか?」
「知らない」
「わしもよく知らんが、あやつ……あのこんな変なのをしたやつが言っとったんじゃ」
おじいさんは斧を持ったまま、手をドーナツみたいにして両目に当てた。(眼鏡のこと)
「あの人間のことか?」
「たぶんそやつじゃ、よく脱いでおったじゃろ?」
「あの人間だ」
アサルトとおじいさんの言う人物は一致した。
「そやつはのう」
『『『タケノコタケノコニョッキッキ~♪︎』』』
そのとき、竹精霊たちの歌が聞こえてきた。
「続きは倒してから話そう、生きておれるかはわからんが」
「わかった」
しばらく進むと竹精霊の群れを発見した。見た感じ下級竹精霊しか見当たらない、上級はどこにいるのだろうか? おじいさんと相談し、下級を蹴散らして呼ぶ作戦を決行することにした。
「今じゃ」
アサルトはおじいさんの合図に従い、腹から【風刃】を出した。それは下級竹精霊に命中する。
『うぎゃーーー!!』
手前の一体を倒すことができた。
それと同時におじいさんは斧を振り回し、竹精霊たちの命をどんどん刈り取っていった。竹精霊は奇襲には弱いのだ。
攻撃されていることに気づいた竹精霊たちは逃げていく。いつもなら追いかけるが、上級の竹精霊を倒すためやってきたので追いかけない。手が足りないのだ。
『タケェ!!』
「来たぞ」
青色の大人サイズの竹精霊が現れた。それを守るように下級の竹精霊が集合している。
あいつが上級か、見た目は強くなさそうだ。
「アサルト、油断するな」
『タケノコタケノコニョッキッキ~♪︎』
上級竹精霊は両手をゴシゴシして、そこら中に水色の円盤を出した。下級の竹精霊も竹を生やしてきた。
なかなか手強いな、だが遅い。
アサルトは両手の布を覆うように風の刃を纏わせる。簡易版旋風だ。それで竹を斬りつけバッサバッサと倒していく。
「わしも負けられんのう【身体強化】」
おじいさんはムキムキになり、斧で竹をバッサバッサと斬りつけ、竹精霊も倒していく。
『うぎゃーーー!!』
「人間の癖になかなかやるな」
「これくらいやれんと生き残れんわいっ」
だが上級竹精霊は全力を出していない。アサルトたちへは片手間に攻撃し、竹を転移させているのに集中している様子が見えるからだ。
──巨大樹の下では──
「【炎焔】!」
──パカッ、
霧の中、茜は転移する青い竹を一本一本割っていた。しかし、一度に転移する竹はかなりの数で辺りには霧が充満している。
「茜、大丈夫か?」
「頭痛いけど、祐介の兄貴が帰ってくるまで……」
そして茜も限界が近づいてきている。
「【炎焔】っ!」
「このままじゃとまずいなっ」
いくら竹や竹精霊を斬っても、下級竹精霊が転移で無限に補充される。時間稼ぎ、いいや遊ばれているのだ。
「なぜだ?」
それを理解できないアサルトはおじいさんに聞いた。
「さっき転移した竹から霧が出とったじゃろっ、霧は巨大樹の天敵なんじゃっ」
アサルトは竹精霊の目的が巨大樹を倒すことなのはわかっていた。今までに何個も倒れた巨大樹を見てきたからだ。だが霧が弱点なのは知らなかった。
「じゃから一刻もはやくあれを討伐せねばっ、あやつらに見せる顔がなくなってしまうわっ」
アサルトは理解した。この上級竹精霊をすぐに倒さないと巨大樹を失い、それにより水を失った人間が枯れ果ててしまう。このままだと人間を守れないことも……
「アサルトよ、わしはもうすぐ命を失う。じゃから──」
「倒してから聞く、それでも遅くない」
だがアサルトは人間を守りたい。あの、人間たち、それとこのおじいさんをだ。
「行くぞ人間!」
「そうじゃなっ、【身体強化】っ!」
簡易版旋風はぐるぐる巻きされてない腕部分から出してます。簡易版なので形が崩れるらしい。




