二話巨大樹の中へ
注意:この世界ではカラフルな竹が生えています。
アサルトたちは巨大樹の麓へとやってきた。
巨大な根が大地と地上をうねり、一部は壁のようになっていて、根の上からは無数のツルが伸びてきている。
「おい鬼、その竹預かるわ」
アサルトは茜に警戒されているのがわかっているので素直に硬竹を渡した。
「なあ鬼、この硬竹どうやって入手したんや?」
「折って整えただけだが?」
「「「えっ……」」」
「鬼さん……さすがに冗談が……」
「事実だが?」
硬竹はあまりに硬すぎて人間には斬ることさえできない特殊な竹なのだ。
「お~い!」
そのとき、声が聞こえたと思えば、根の上から緑のローブを着た男、服部弘毅がスルスルっとツタを滑り器用に降りてきた。
「ちょっと待って、なに連れてきてんの?」
目の前に降り立った弘毅は、アサルトの上から下までを見てから柚奈に聞いた。
「鬼らしい。ケガしてるから治療する」
柚奈はアサルトの手を弘毅に見せながら答えた。
「聞いたことないな。じいちゃん知ってるかな?」
「さあ?」
「うーん、通して大丈夫か?」
「通してくれないと治療できない」
「うーーーん」
弘毅はアサルトの目をジーッと見つめて悩む。
「弘毅くん通して、鬼さんは私を助けてくれたからいい人? だから」
「お前またやったんかい、まあええわ。通す。柚奈、もしなんかあったらすぐ俺呼んで、すぐ飛んでくし」
「心配しすぎ」
「いや、でもほんまに大丈夫か?」
「見張りつけるから大丈夫や、もしなんかあったらすぐ斬る」
「わかった、通ってよし」
最終的に茜に説得され、アサルトは通された。これから巨大樹の中へ入っていくらしい。
巨大樹の玄関は暗がりであった。足が触れた瞬間はふわふわとするが、踏み込むとしっかり反発する足場を歩いている。
アサルトは先ほど柚奈にこの先の足場は全てこんな感じだと忠告されていた。注意して進んでいく。
変わったニオイだな。湿り気のある少し甘い、なんとも言えないニオイがする。
「鬼さん、この先すごいから期待しててね」
「そうする」
しばらく進むと視界がぱあっと開けた。
すごい……
巨大な空洞の中央にそびえ立つ巨大な柱、それに螺旋状の大階段が絡みつき、上の方まで続いている。
上部からはさわやかな光が降り注いでいて神秘的である。美琴が言った通りのすごい光景であった。
そんな中、アサルトたちは橋を渡ってゆく。
そのとき、アサルトの耳にザバザバという音が入った。どうやら橋の下から聞こえるようだ。アサルトはふと覗いてみる。
アサルトは固まってしまった。
その目線の先には巨大な池が見える。
この世界の水はとても貴重で、アサルトは水たまり程度なら見たことがあったが、ここまでのものは見たことがなかったのだ。
それと同時に理解した。水が大量にあるから人間はここを竹精霊から守っているのか、と。
「鬼さん、水、初めて見るの?」
「いや……こんなに多いのは知らない」
「見たことないわけないやろ」
美琴の天然ボケに拗ねたままの茜がつっこんだ。正論である。それには美琴も納得した。
「それもそうか、生きるためには水必要だしね」
「鬼に水は必要ない」
「「「!?」」」
しかしアサルトは鬼である。正論は通用しない。
「治療できるかな……?」
「大丈夫! 柚奈ちゃんならできる!」
「まあ、やってみる」
アサルトという異常生物を治療できるか不安になった柚奈は美琴に力で押された。美琴自身は気づいていないが、美琴はみんなの精神的バッファーなのである。
そしてアサルトがふわふわで登りづらい階段を登り始めてすぐ、柚奈に腕を引っ張られた。
「鬼さん、こっち」
柚奈が呼ぶそこには木造の建物があった。
「それじゃあ鬼さん、また後でね」
「ああ」
美琴は手を振りながら階段を登っていった。手を振るのは一体どういう意味なのだろうか。
「柚奈、そいつと二人で大丈夫か?」
「茜、大丈夫、この鬼さんは悪くない」
「まあ柚奈がええんやったら別にええけど……」
茜は頭を掻きながら言った。
「おい鬼、もし柚奈になんかしたら許さんからな」
言葉が強い茜に負けて、アサルトは一歩下がった。
「茜ちゃんはやく!」
「美琴、説教やぞ!」
「あ~やっぱ来ないでーー!」
硬竹を持った茜は美琴を追いかけ階段を登っていった。
俺の硬竹……
「じゃあ鬼さん、中入ろう」
柚奈は部屋への扉を開けた。
「鬼さん、ここ座って」
部屋の中にはぽつんとベッドがあった。アサルトはベッドに座るよう言われ座ることにした。
柔らかい……また知らない素材だ……
アサルトはベッドを知らなかった。鬼なので睡眠をしないからだ。
「はい、手出して」
アサルトはただれた手を柚奈に向ける。すると消毒液をかけられ治療された。
「痛くない?」
「全く」
「全く……まあ鬼さんだもんね」
柚奈は鬼だからと納得することにした。しかしアサルトは水を掛けられたと思っているので頭の中には疑問符が浮かんでいる。
「はい、終わったよ」
アサルトの両手は布でぐるぐる巻きにされている。
「これでは戦えないが?」
「戦う気だったの!?」
「そうだが?」
そのとき扉が開き、杖をついた緑のローブを着たおじいさんが入ってきた。
「しゅしゅしゅしゅしゅ──」
おじいさんの歯がすかすかで聞き取れなかった。
「えっと、入れ歯はどうしたんですか?」
「しゅしゅしゅ──」
おじいさんは去っていった。
なんだったんだろう……
「今の人はここの里長で、さっき会った弘毅のおじいちゃん、里一番の物知りだよ」
「そうなのか? でも何を言ってるかわからなかったが?」
「うん、実は入れ歯しててもよくわからない」
「わからないのか?」
「うん」
「それ意味あるのか?」
「ない、わけでもない」
──そのとき、
「敵襲! 敵襲!」
部屋に弘毅の声が響いた。
それを聞いたアサルトはすぐに扉を破壊して飛び出した。
「鬼さん! 扉!」
茜が言っていた見張りはおじいさんのことです。




