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第42話:新緑の茨 紅蓮の華

国会議事堂から数百メートル離れた、かつては美しく整備されていた中央広場。

 今は、亀裂の走ったアスファルトと、大岩剛が呼び出した巨大な岩の尖塔が乱立する、荒涼とした岩石地帯へと変貌していた。


「ガッハッハ! どうした小娘共! 避けてばかりでは勝負にならんぞ!」

 剛が巨大な岩槌を軽々と振り回し、一撃ごとに大地を粉砕する。

 その猛攻に対し、紫苑は涙目になりながらも、茨の杖を必死に構えていた。

「ひ、ひぃ……! ご、剛殿、お、落ち着いて……っ! お話し合いで……解決、できませんかぁぁ……っ!」

「無理に決まってんじゃん、しおんぬ! 剛っち、マジで話通じないタイプだし! ほら、右からデカいの一来るよ!」

 きららが自撮り棒を魔法杖に持ち替え、爆炎を噴射して空中に逃れる。

 直後、紫苑がいた場所を、直径五メートルはあろうかという巨岩が粉砕した。

「もう……! し、失礼しますっ! 展開――『深緑・千手大蛇(せんじゅおろち)』……!」

 紫苑が叫び、杖を地面に突き立てる。

 瞬間、岩盤を突き破って、太古の巨木を思わせる禍々しいほどに太い蔦が爆発的にせり出した。無数の蔦は意志を持つ大蛇のようにのたうち回り、剛が繰り出した岩の弾丸を空中で叩き落とし、その巨躯へと絡みついていく。

「おっしゃ! 私も混ぜて! 展開――『爆華・三尺玉』!!」

 きららが指を鳴らすと、紫苑の蔦を導火線にするかのように、超高熱の火球が剛の足元で炸裂した。

 ドォォォォン!! という派手な爆音が響き渡り、周囲の岩石が瞬時に溶岩へと変わる。

「あ、ああっ! き、きららちゃん! また私の蔦たちが……燃えてる、燃えてるよぉぉ!」

「てへぺろ! 威力が上がりすぎてマジウケるんだけど! 今のコンビネーション、超映えてない!?」

 泣き叫ぶ紫苑と、楽しげに火炎を撒き散らすきらら。

 かつての深層での共闘と同じく、静と動、水と油のような二人の魔法は、皮肉にもお互いの破壊力を増幅させ、軍拡派筆頭である剛と互角以上に渡り合っていた。



 しかし、土煙の中から現れた大岩剛の表情に、焦りはなかった。

 彼は不敵に笑い、胸元に装着された古代の心臓――黒い魔導核に手を当てた。

「……流石は七賢者。だが、ここからは『新時代』の力を見せねばならんな」

 魔導核が脈動し、剛の全身が黒い紋様に覆われる。

 瞬間、周囲の魔圧が重力そのものを変えたかのように重くなった。

「秘奥――『壊星の重圧』」

 剛が手をかざすと、紫苑が展開していた『千手大蛇』が、目に見えない圧力によって一瞬で押し潰され、塵へと化した。さらに、空中にいたきららも、見えない巨人の手に捕まったかのように地面へと叩きつけられる。



「きゃっ!? なに、これ……体が、重すぎて……!」

「う、うぅ……動け、ない……。魔力が、吸い取られて……っ」

 剛の足元から、黒い結晶が結晶樹のように伸び、二人を閉じ込めようと迫る。

 古代兵器によって増幅された岩魔法。それはもはや物理現象を超え、空間そのものを固定する絶対的な「檻」だった。

「ガッハッハ! 魔法の時代を終わらせるだと? 笑わせるな。この絶対的な力こそが、世界を統治する唯一の正義よ!」

 剛が巨大な岩の槍を頭上に形成する。

 それを振り下ろせば、二人の命はない。



「……そ、そんな……こと、ない……ですっ」

 押し潰されそうな重圧の中、紫苑が泥にまみれた顔を上げた。

 その脳裏には、先ほど見た一ノ瀬蓮――葵の蒼い瞳が浮かんでいた。

(……一ノ瀬くんは、葵さまは……私たちを信じて、任せてくれたんです……っ!)

「ウチら……葵っちに、マジで頼りにされてんだから……! ここで、リタイアなんて……死んでもできないし!」

 きららが強引に指を動かし、自らの衣服を焼くほどの至近距離で小さな火花を散らした。その熱気が、一瞬だけ重力の呪縛を緩和させる。

「しおんぬ……! 全力、いっちゃうよ!?」

「……は、はいっ! き、きららちゃん、私を……信じて、ください……っ!」

 二人の魔力が、絶望の淵で共鳴した。

 紫苑の「生」の力と、きららの「滅」の力。真逆のベクトルを持つ二人の賢者が、互いの手を強く握り合う。


「「――合体奥義!!」」


 紫苑が残されたすべての魔力を振り絞り、自身の命を削るようにして、白銀に輝く神聖な大樹を召喚する。

 『常世の聖樹とこよのせいじゅ』。

 その枝が剛の重力圏を内側から突き破り、剛の動きを完全に封殺する。

「な、なにィ!? 貴様ら、どこにこれほどの魔力が……!」

「……これが、私たちの……絆、ですっ!」

「映えすぎて、視界不良にご注意だよ! 燃え尽きなさいッ!!」

 きららが、聖樹のすべての枝を導火線として、自身の生命力を燃料に変えた究極の点火を行う。

「『極彩・紅蓮浄土ごくさい・ぐれんじょうど』!!」



 ドゴォォォォォォォォンッ!!



 聖樹の枝、一本一本が数千度の熱量を持つ熱線へと変わり、剛を包み込む。

 凄まじい爆炎と光の柱が天を突き、議事堂周辺の夜空を真っ白に染め上げた。

 爆風が収まった後。

 そこには、古代の鎧を砕かれ、全身を煤で汚して膝をつく大岩剛の姿があった。

 魔導核は砕け散り、彼からはもう、戦う意志も力も感じられなかった。

「ガッハッハ!よもや魔力も残っておらん!完敗だ!」

 剛が仰向けに倒れ、意識を失う。

 それを見届けた紫苑ときららは、同時にその場にへたり込んだ。

「やった……やった、よぉ……きららちゃん……っ」

「マジ、死ぬかと思ったし……。でも、超……最高の、一枚が撮れた……かも……」

 二人は泥だらけの手を重ね、勝利を噛みしめる。


 賢者同士の死闘。その第一幕は、穏健派の絆が、古代の暴力を打ち破る形で幕を閉じた。

こんばんは!よつばです!

合体奥義、一度どこかの話で書いて没にしたものだったんだけど、やっぱり採用しました!

心残りがあるならばやはり技名。基本的に

展開ー〇〇。上位技は、展開ー〇〇・〇〇。最上位技は、展開の号令不要

と言う設定だけど、上位技の命名、前半の部分は個人技で統一して個性を持たせた方がいいなと今になって思いました。帰ることはもうないが、仮に書籍化するようなことがあったら技名も見直したいな。


改めて紫苑に煌々おめでとう!

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