⑤入学式と運命の時
アストには任せられないため、ルナの案内の元、島内で時間を潰して、迎えた午後。
受付の魔導具に学生証をかざし、受理されたことを液晶を見て確認する。
「これらをつけて、お好きな席へ座ってください」
受付の女性からネクタイピンと白い花を模したコサージュを受け取り、綺麗に並べられた椅子に座る。
二つ前の列にはツバサの姿が見えた。
「隣、失礼します」
ルナが持参した本を開けたとき、隣に人が来た。
「どうぞ」
ルナは了承すると、少女は椅子に座った。
「わたし、ラヴィ・オリヴィエ。よろしく」
「ルナよ。こちらこそ」
ルナは愛想の良い笑みを浮かべる。
「何を読んでるの?」
ラヴィは背表紙がカバーで隠れてしまっているルナの開けたままの本に興味を持つ。
「『早く縄を解く術、解かせない縄の結び方』というとっても、実用的な本よ」
キラキラとした無垢な良い顔で嬉々として話すルナ。
ラヴィは出会ったばかりで、個人の趣味に口を出す気もなければ言える勇気もない。
しかし、心の中で突っ込む。
タイトルからすでに矛盾してるし、実用的ってなに?どこで何に使う気なの?
聞いてはいけないとラヴィの勘が告げる。
ラヴィがルナに対し、引いていると、マイクに音が入った。
「あー、テステス」
夜空のような黒い髪に普通の黄金の瞳ではありえないほど鮮やかで、目を合わせたものに畏怖の念を抱かせるような蛇の目の年若い魔族の男がマイクに声を入れた。
「今から、フォルトゥーナ学園の入学式を開会する。本来であれば、生徒会が司会進行をしていたが、会長及び他の生徒会メンバーは集団入院をしたため、生徒会長の挨拶などは省略させていただく」
ルナに中で合点がいく。
生徒会全員欠席。首席不在。
入学式ですることは、学園長の挨拶や関係者の紹介などを合わせても圧倒的に時間が余ってしまう。ならば、望みは薄くとも、確実に出席するルナたちに声をかけた方がいい。
カティアに同情だけはした、後悔はしていない。
ルナとアストは事情を知った者として、口の端をつり上げ苦笑いを浮かべた。
2026/02/21 加筆修正




