④ 学園長・カティア
学園に着くと、一番はじめに目に映るのがしなやかな身体の竜と剣を持った青年とが背中を合わせるような構図の彫像。
これはかの有名な魔王と勇者を模したものである。
敵同士であった2人が協力関係を築き、共に革命の最後まで尽力した。
このことから、誰もが共に戦う仲間であるという意味を持たせ、設置するのは珍しくない。
ルナたちが驚いたのは、校門をくぐってすぐに、巨大な石像が中央を占領しているのが、とても目をひいたからだ。
「失礼します」
学園長室と書かれた看板の扉を叩く。
「はーい」
幼い子どものような、明るく高い声の返事が返る。
誰もが知っている事なので、今さら驚く者はいない。
ルナとアストは学園長室の中へと入る。
大きなショーケースの中にはたくさんの賞状やトロフィーが飾られている。
中には、ニュースで報道されたものまである。
重々しい部屋の中心の椅子に腰をかけている少女、いや、幼女がいた。
彼女こそ、この学園の創立者であり、学園長でもあるカティア・クレア。
幼い見た目だが、勇者と魔王の革命時代から生きている見た目詐欺な女性。
「まずは、入学おめでとう」
「ありがとうございます」
祝いの言葉を直々に述べられ、二人は素直に礼を言う。
「君たちをひと足先に呼んだのは、君たちが今年の入学試験で同点の首席を取ったから、入学式の新入生代表の挨拶を読んで欲しいの。
本来なら、合格通知と一緒にお願いする予定だったんだけど、君たちから多額の寄付…ん゛っ、君たちは不在だったから、泣く泣く引き下がったんだ」
カティアはノリのまま寄付金と言いかけて、慌ててわざとらしく咳き込み言い直した。
この見た目で、寄付金がどうのこうのと言われるとすごい違和感がする。
2人はたしかに合格通知を受け取ると同時にとある知人名義で学園に寄付金を渡していた。
それは事前に学園について調べていたとき、学園長が守銭奴であると知った。
余計な詮索を入れられたくなかった2人は、大金を積めば入学までは何も言わないのでは?と考えた末の行動だ。しかし、まさか首席を取っていたとはルナたちでさえ予想できていなかった。
それにしても、実際見ると本当にしっくりこない。
ルナはカティアの一瞬のうっとりとした顔を見て思わず唖然としてしまった。
この学園、大丈夫かな?
これから送る学園生活に一抹の不安がルナの頭をよぎる。
すでに、お腹いっぱいだ。
「もちろん、断ってくれても構わないよ。けど、理由が欲しいかな」
先ほどまでニコニコとと無邪気な笑みを浮かべていたカティアが急に何かを諦めたような真剣な顔をした。
「こっちも、なりふり構っていられなくなったから」
乾いた笑みと死んだ目をして、低くつぶやくカティア。
本当に何があったのだろう。
2人も思わず、カティアがそこまで追い詰められるに至った経緯を知りたかったが、聞いたら最後延々と愚痴に付き合わされそうだと、ルナたちは2人でで目配せをして、押し黙ることにした。
「嬉しいお誘いですが、予定通り私たちは辞退させていただきます」
「理由は?」
「私たちが、寄付をしたことを鑑みていただけると自ずと」
喧嘩腰のような返答であったが、各種族の王族や、大企業の社長などが見守る中で、自ら枷をはめにいくようなことはしたくない。なんのために情報を必要最低限にとどめているのか分からなくなる。
これは2人の総意だった。
「わかった。無理に頼んじゃってごめんね。入学式まで島内を観光しておいで。
私のオススメは学園近くのカレー屋さんだよ。具材がトロトロでおいしいの」
意外にも、カティアはすんなり引き下がった。
すぐに、無邪気に笑い、ルナたちを帰した。
2人はカティアがこんなにあっさりと引き下がるとは思わず、互いの顔を見合わせ驚き、言われるがままに席を立った。
2人が退出した扉の閉まる音を聞き、カティアはつぶやく。
「こっちでも、独自に調べさせてもらうから」
守銭奴たれども、人の命を預かっている。
カティアは生徒の安全を可能な限り守る義務がある。
「見た感じ、害を加える気はなさそうなんだよね〜」
だからこそ尻尾がつかみにくい、ボロを出す気がないから。
まあ、彼女たちのクラスは“あそこ”だろうな。
カティアの机の上にはアストとルナの入学試験の結果が書かれた書類が置かれている。
それはカティアでさえ見たことのないデタラメな数字だった。
やっと、入学式にいける。
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この作品、ハイファンタジーかローファンタジーか判らないのですが、どちらなのでしょうか?
一応、独自の解釈や現実にない神話などが存在する、現実世界とは別の世界ということなので、ハイファンタジーにしているのですが、違ったらすみません。
2026/02/21 加筆修正




