㉖ 体育祭トーナメント (side:アレク)
ウィリデにいかにもパワー系の相手を押し付けられたアレク。
汗ひとつかかず振り下ろされるアックスを避け続ける。
アレクが攻撃したのはたった一度、ウィリデから注意を逸らすために仕掛けに行った時だけ。
そこからはずっと相手の攻撃を避け続けた。
あと何回耐えるか。
魔術は放っていないので、魔石が壊れる心配はない。アレクが心配をしているのは、武器として持っている木刀だ。
握った部分からささくれができ始めている。
また弁償か。
今年に入って何本目だろうか?
お金にそこまで緊迫していないアレクにしては弁償の金銭云々は別にどうでもいいのだが、毎回毎回破壊してしまうと罪悪感が募る。
アレクが攻撃を避け続けていると、魔力の塊がこちらに向けて放たれるのを感じた。
またか。
本日2度目のウィリデの乱射にアレクはため息をついた。
アレクは大きく後退し、それを難なく避ける。
相手の男も武器を盾にして防ぎきる。
さっさと終わらせたい。
そう思い構え直したとき、どこからか圧を感じた。
わざと負けるなと伝えられているような気がする。
アレクは実況解説席の方をみると、カティアが愛想笑いを浮かべながらこちらを見ていた。
やられようと思ったが、できそうにないな。
アレクはため息をついて、構えるのをやめた。
魔術を放つウィリデを置いて、アレクを先に叩きにきた男性教師のアックスを振り下ろさせる前に間合いに入る。
「力むなよ」
アレクは一瞬でみぞおちに捻じ込み、呼吸困難にする。
重たい音をしてアックスが地面に落ち、強制失格となる。
包まれる黄色い歓声、どのような伝え方をしたのか、ただの峰打ちだろう。
アレクはカティアの人々の誘導に感心した。
その歓声を受けるアレクたちとは反対に呼吸が戻ってきた惨敗した男に悔しさが募る。
まだだ、まだやれる。
アイツばっかりいい思いをしやがって、俺はまだやれる!
殺す、ころす、殺す、コロス。
男性教師の体から不自然な魔力が噴き出る。
再起不能となっていた男はゆらりと起き上がった。
腕をアレクに目掛けて振り下ろす。
アレクも他に気を取られていたため、気付くのが遅くなったが、なんとか木刀で受け止めた。
先ほどまでにはなかった強い殺気。
力も上がっている。
攻撃を受け止めるので精一杯のアレクは男を振り払うことができない。
しかし、男の体勢が崩れた。
ウィリデが男の足を払ったのだ。
2人は男から距離を取る。
「アレク、しっかりしろ」
「すまない」
アレクは助けてくれたウィリデに礼をいい、それから距離を取る。
それはもう、人の形などをしていなかった。
血管が浮き出るほど、筋肉は膨張し、元の肉体をさらに巨大化させる。
うめき声を上げながら、獣のように鳴く。
これをアレクたちは知っている。
「狂魔」
アレクは信じられないように呟く。
かつて、この地にいた厄災の神が振り撒いた負の感情を纏った魔石、狂魔石。勇者や魔王の手によって厄災を封印し、除去されたものだ。
だが、目の前にいるのは狂魔石を埋め込まれた人間の反応と同じ。
「狂魔かどうかはとっ捕まえればわかる話だ。いくぞ」
「ああ」
アレクはまだ使える木刀を持ち。
ウィリデはアレクから魔力を貯められるブレスレットを受け取り、杖で魔術陣を描き始めた。
お二人の過去が怪しくなってきましたよ〜。
次回はルナ視点に戻ります。
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