6話 ベルモント亭
初クエストを受注した。
簡単な薬草採取らしいが、実際どうなんだろうか。
「もうこんな時間ですし、今日はお帰りになられてはいかがですか」
まだ頬を赤くしているリイナが書類をまとめながら聞いてくる。
確かに疲れたし、この状態で初クエストは無理があるか。
「そうですね。ここらでお勧めの宿屋はありますか」
自分の家に帰ると思われたのか、リイナが一瞬困惑した表情を見せた。
「それならば南内区のベルモント亭がお勧めです。南広場を挟んで3階建ての建物が目印です。その裏路地に入ってすぐの所にあります。私の紹介だと仰ってください」
「じゃあ早速行ってきます。それではジュリアさんもリイナさんも、色々とありがとうございました」
お辞儀をしてカウンターから離れる。
ジュリアとリイナが笑顔で見送ってくれた。
ベルモント亭の看板が出ている宿屋を見つけた。
石造りの外観には不似合いの深緑色の看板が下げてある。
よく見ると、板がカビているだけだった。
ドアを開けると小さなカウンターが目に付いた。
恰幅のいい女将がそろばんを弾く手を止め、顔を上げた。
分厚い書類が手元に置いてある。
総勘定元帳だろうか。
女将が値踏みするように俺を見る。
「えっと、一泊いくらでしょうか」
「一番安い部屋で300ドルクだよ」
仏頂面で冷淡な態度だ。
これのどこがお勧めなのか。
「分かりました。あ、リイナさんの紹介なんですが」
「あ?なぁんだそうかい。それなら150ドルクで良いよ。あんた名前は?」
「ユウキですけど」
「ジェンだ。よろしく!」
とたんに人が変わったように笑顔になった。
しかも半額とは。
「よろしくお願いします。でも今、手持ちのお金がないので、また寄らせていただきます」
「待ちな。大丈夫だよ、リイナはめったにウチを紹介しない。あの子の紹介ってことは、アンタは信用に足るってことだ。ツケてやるよ」
「そんなわけにはいきません。150ドルク持ってまた来ます」
知らない世界で知らない人にツケとか怖すぎる。
逃げるようにベルモント亭をでた。
広場を歩き回る。
困ったな。
本当に金がないぞ。
どうしようか。
何か売るかな。
スマホとかあったら高く売れただろうな。
ないものを嘆いても仕方がない。
手持ちのもので間に合わせよう。
幸いダガーが二本ある。
一本売るか。
武器屋はどこだろう。
広場の端で太極拳みたいな武術を練習している男がいたので、聞いてみた。
「すいません、武器屋はどこでしょうか」
「それなら西内区にあるぜ。あそこは冒険者向けの商業区だ。防具屋や道具屋もある」
行ってみよう。
礼を述べて西へ向かった。
武器屋は簡単に見つかった。
大きな剣を模した看板が壁に打ち付けられている。
武器屋と書かれたそれは西の広場から目視できた。
大きめのドアはギルドのそれと同じ高さだが、横幅は半分だ。
リザードマンが一人通れるサイズという事だろう。
中に入ると奥のカウンター付近に女性がいた。
正三角形の耳が頭にちょこんと乗っている。
だぼだぼのシャツを来ているにも関わらず、胸のラインがしっかりと見える。
下には長めのスカートを履いているが、お尻からはふさふさの尻尾が垂れている。
尻尾用に穴でも開いているのだろうか。
全体的に明るい茶色の毛並みだ。
狐の獣人族かな。
目が合った。
好戦的な切れ目だ。
またジロジロと見てしまっていたのか。悪い癖だ。
視線を逸らし、店内を見渡す。
さほど大きくないスペースだが品ぞろえは豊富だ。
入って右側には樽が並び、武器が差し込まれている。
剣、槍、杖、鎚などが種類別に分けられ、無数の樽が所狭しと置かれている。
左側には仕切りの入った机が並べられている。
こちらは小さめの武器のようだ。
大小のナイフが大半を占めるが、ワンドのような棒もある。
眺めていたいが、今日来た理由は買いじゃない。
「ダガーを一本売りたいのですが」
店番の女性に声をかけると、じろりと一瞥された。
宿屋のジェン同様、値踏みしているのだろう。
狐さん、あまり睨まないで?
ちょっと怖いけど、これもまたイイ。
癖になりそう。
「出してみな」
小さく細い口を開けると八重歯が除いた。
ダガーを一本ベルトから外し、カウンターに置く。
狐さんはそのままカウンター越しにダガーを見つめている。
何をしているんだろうと思ったら合成音声がした。
スキル 武器鑑定 をラーニングしました。
スキル 鑑定 に統合されました。
武器職人のジョブを授かりました。
武器職人の恩恵を授かりました。
ああ、そうか。鑑定してるのか。
それに何故か知らないけど武器鑑定と鑑定が勝手に統合されたぞ。
便利だな。
「銅のダガーだね。あまり手入れも行き届いていないようだ。これなら500ドルクで買い取ってやる」
足りた。良かった。
野宿は嫌だ。
この武器が500ドルクの価値か分からないが、とりあえず3日分の宿代は稼げた。
「はい、大銅貨5枚な」
狐さんがコインを5枚カウンターに置いた。
これ一枚で100ドルクという事か。
お礼を言って金をポケットに入れ、カウンターを離れた。
もっと武器屋の中を見て回りたいが今日は止めておこう。
早く宿屋に戻って休みたい。
ベルモント亭へ戻り、女将のジェンに挨拶をする。
外は暗くなり始めているが、まだそれなりに明るい。
「すいません、先ほど伺ったものですが」
「ああ、アンタか。部屋は用意できてるよ」
待ってくれていたようだ。
半額にしてくれた事といい、リイナさんアンタどんだけ人望あるんですか。
「ありがとうございます。とりあえず1泊分のお金です」
ここに何泊するか分からないので一泊分だけ支払う。
大銅貨2枚を渡すと、一回り小さい銅貨が5枚戻ってきた。
その小銭をジャージのポケットに突っ込んだ。
「まいどあり。こっちだ」
ジェンの後をついていくと、2階の廊下の最奥の部屋へと案内された。
「じゃ、ごゆっくり」
ジェンが去った後、部屋を見回した。
なんというかまあ、古い部屋だ。
床板は所々反り返っているし、体重を乗せると激しく軋む。
壁も黒ずんでいる。
安いだけはある。
薬草15本の草むしりで一晩泊まれると考えれば破格の値段だ。
しかし安いが手入れが行き届いているのは良く分かる。
反り返った床には棘などがないし、天井に煤や蜘蛛の巣などもない。
備え付けのベッドも悪くない。
座ってみるとバネが若干耳障りだが、文句は言えない。
クローゼットを開けるとハンガーがあったので、ジャージの上を脱いだ。
その泥だらけの服を見て思った。
俺は異世界に転移したのか。
分かっていたつもりだったのに、頭がようやくこの現実を受け入れ始めた。
朝起きて部屋をでたらこの町に出た。
チンピラに絡まれ、ジュリアと出会った。
ギルドでリイナと出会って冒険者登録した。
神の試練を受けて見習いというジョブを授かった。
魔法やスキルがあって、リザードマンやエルフもいる。
そんな世界に今朝、来たのか。
今朝。
今日の朝。
つまりまだ一日も経っていない。
信じられない。
でもこれは現実だ。
本当に異世界に来たんだ。
面白い。
ワクワクしてきた。
思わずにやけてしまう。
が、いきなり欠伸がでた。
さすがに疲れた。今夜はもう寝よう。
ゆっくり休んで、明日は初クエストの薬草採取だ。
楽しみだ。
その夜、ベッドに横たわっていると、壁の向こうから声がした。
激しい吐息がリズミカルに聞こえてくる。
こ…これは。
間違いない。喘ぎ声だ。
お隣さんがハッスルタイムに突入したのか。
起き上がり、壁に耳を密着させる。
壁が薄いのが分かっているのか、カップルは声を抑えようと必死だ。
喘ぎ声と濡れた吐息が聞こえる。
顔が見えない分、想像力が働いて余計にエロい。
しばらくそのままでいると、壁に穴が空いていることに気づいた。
壁に穴。
この状況。
やることは一つしかない。
罪悪感はあるが好奇心には勝てない。
まだ16歳だ。
絶賛思春期中だ。
誰が俺を咎められようか。
いただきます。
スキル 絶倫 をラーニングしました
男娼のジョブを授かりました。
男娼の恩恵を授かりました。
な、なんて素晴らしいモノを!
ごっつぁんです!
◇◇◇
斉藤優樹
Lv1
Fランク冒険者
ジョブ 見習い
┗ 狩人
┗ 探索者
┗ 剣士
┗ 拳闘士
┗ 重騎士
┗ 狂戦士
┗ テイマー
┗ 魔法使い
┗ 神官
┗ 考古学者
┗ 武器職人
┗ 男娼
見習いスキル
・サーチ
・潜伏
・ダブルスラッシュ
・ラッシュ
・かばう
・バーサク
・テイム
・ファイアボール
・ヒール
・鑑定
・絶倫
体力7 (+70)
魔力0 (+80)
筋力6 (+120)
耐久5 (+110)
敏捷4 (+120)
器用3 (+150)
ジャージ サンダル ダガー ダガー
ご愛読ありがとうございます!
この小説を読んで「面白い!」と思ったり、「続きが気になる!」と思ったら、↓でポイントをいれて応援してくれると嬉しいです!
★でも★★★★★でも、正直に評価してください!
また、『ブックマーク』と『いいね』もよろしくお願いします!
読者様の応援やコメントが、執筆を頑張るためのモチベーションになります!
よろしくお願いします!




