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4話 見習い

 祭壇に歩み寄ると、反対側に石碑が建てられていた。

 パパスーツが読み上げる。

 

「求めよ、さらば与えられん。

 尋ねよ、さらば見出さん。

 門を叩け、さらば開かれん…か」


 なに、この聞き覚えのある宗教的な文面は。


「よし、じゃあ順番に行こう。番号順で良いな」


 反対意見は上がらない。

 満足顔のパパスーツがつま先立ちで祭壇へ身を乗り出す。


 てめえ、自分が一番最初にやりたかっただけだろう。


 祭壇の上に左手を置くと、魔法陣が発動した。

 お馴染みの半透明の球体が現れ、パパスーツの左手を包み込む。

 今度は淡い金色だ。


 祭壇にヒビが入り、無数の石となり浮かび上がる。

 パパスーツを中心に円を描き始めると、どこからともなく声がした。


キースよ。

此度の試練、大儀であった。

汝の活躍を称え、ジョブを授けたもう。


 神なのか王様なのかよくわからない口調だ。

 キースって、パパスーツの名前か?


 頭上で流星群のごとく飛び回る石がスピードを上げ始めた。

 眩い光を放ち、半透明のカードが現れた。


キース ボガード

ジョブ 剣士

剣スキル解放

恩恵

体力+20

魔力

筋力+20

耐久+10

敏捷

器用


 そう表示されたカードは、パパスーツの左手に吸い込まれていった。


これで汝に剣士のジョブが授けられた。

日々精進し、汝が我が世界のために活躍する事を願う。


 キラキラと光っていた石が元の場所へ戻り、祭壇を再度形成する。

 

「おおお、やった、やったぞ!これで俺も剣士だ!」


 その場で飛び跳ねるパパスーツ。

 なるほど、これでジョブがもらえたことになるのか。

 求めても尋ねても叩いてもいないけど、これでいいのか?


「次、儂!儂!」


 甲冑がパパスーツを横に押しのけ、祭壇に左手を叩きつけた。


 皆がまだかまだかと自分の順番を待っている。

 誰もパパスーツのことなど気に留めていない。

 主役のように持ち上げられると思ったのか、パパスーツはいじけている。


 子供かよ。

 子供か。

 苗字があるから貴族のボンボンか。


 祭壇上で同じ現象が起こり、甲冑のカードが表示される。 


レドゥル

ジョブ 重騎士

重騎士スキル解放

恩恵

体力+20

魔力

筋力+10

耐久+20

敏捷

器用


 余韻に浸る間もなく、次々と左手が置かれていく。

 甲冑の次は中二君の番だ。


シュン

ジョブ 探索者

探索スキル解放

恩恵

体力

魔力

筋力

耐久

敏捷+30

器用+20


 4人目はポニーテール。

 ぴったりした服が眼福です。

 ご馳走様です。


ヴィー 

ジョブ 拳闘士

拳闘スキル解放

恩恵

体力+10

魔力

筋力+20

耐久

敏捷+20

器用


 リザードマンが頭を天井にこすりつけながら前に出る。

 滴り落ちる血が怖い。


レネガス

ジョブ 狂戦士 

狂戦士スキル解放

恩恵

体力+10

魔力

筋力+20

耐久+10

敏捷+10

器用


 次は魔女っ娘の番。

 パパスーツよりも小柄な体躯だ。

 何処からか踏み台替わりの石を持ってきて、つま先立ちで左手を祭壇に置く。


ルルカ アラルカ

ジョブ 魔法使い 

魔法スキル解放

恩恵

体力

魔力+40

筋力

耐久

敏捷+10

器用


 金髪少女が祭壇に左手を置く。

 明らかに浮き浮きしている。

 今までの冷たい印象とは対照的だ。


ソラ

ジョブ 神官 

聖魔法スキル解放

恩恵 

体力

魔力+20

筋力

耐久+10

敏捷+10

器用+10


 ジョブを貰うと同時に、何かしらのスキルが解放されるようだ。

 さらに恩恵もあり、ステータスに補正が掛かるらしい。

 全員50ポイント振り分けられている。


 ようやく俺の番が来た。

 息をのみ、ゆっくりと祭壇に手を乗せると祭壇が光った。


サイトウ ユウキよ。

此度の試練、大儀であった。

そなたの活躍を称え、ジョブを授けたもう。


 おお、これこれ。

 俺の中に残っている中二心が擽られる。

 これで俺もジョブが貰えるのか。


 一連のムービーを見てカードが現れるのを待つ。

 スキップできないのがもどかしい。


 やっと頭上にカードが現れた。

 しかしそれを見て愕然とした。


サイトウ ユウキ

ジョブ 見習い 

見習いスキル解放

恩恵

体力

魔力

筋力

耐久

敏捷

器用


 はい?

 恩恵無し?


これで汝に見習いのジョブが授けられた。

日々精進し、汝が我が世界のために活躍する事を願う。


 ほわっつ どぅー ゆー みぃん?

 あい どんと あんだーすたん。


 光が消え、祭壇が再構築された後も俺は左手を祭壇に乗せたまま呆然と立ち尽くしてしまった。

 

 静寂。

 そろりと周りを見てみると皆俺を見ている。


 冷たい視線の魔女っ娘。

 哀れみ、何かに祈る金髪少女。

 ゴキブリを見るような目で俺をみるポニーテール。

 壁に凭れ掛かり、目をそらす中二君。

 背を向け、小刻みに体を揺らすパパスーツ。笑いをこらえているのだろう。

 その脇腹を肘で突く甲冑。


 慰めようとしたのかリザードマンが肩に血まみれの手を置くと、俺はついに床に崩れ落ちた。


 見習い?

 何の見習い?

 ただの見習い?




 祭壇を後にし、帰路に就く。

 遠足は学校に帰るまでが遠足だ。

 

 皆が飴玉をもらった子供のようにはしゃぐ中、俺は無言で後に続く。

 

 たしかにダンジョン攻略中は何も出来なかったけどよ。

 他の奴らにおんぶにだっこで俺は何もしなかったけどよ。

 

 あんまりじゃないか?

 だって俺は慎重派だ。

 死にたくないから戦闘を観察してたんだ。

 何階層か進んだら参戦しようと思っていたのに。

 

 このダンジョンがたった3階しかないなんて聞いてない。

 活躍の場がなくなったのは俺の所為じゃない。


「お、ステータスの剣スキルにダブルスラッシュってのが足されてるぜ。早く使ってみてえな!おい、レドゥル、お前はどうだ?」


 パパスーツが甲冑に聞いている。

 キース ボガードなんて格好いい名前で読んでやるものか。

 お前なんか一生パパスーツだ。


「がはは、かばうなんてスキルがでてるぞい。儂向きだ」

「私はラッシュ…相手の懐に入り連打する…技」


 洞窟の中を反響して前にいる奴らの会話が聞こえる。


 いいな。

 羨ましい。

 俺もそんなスキル使ってみたいよ。


 ステータスと念じ、自分のステータスウィンドウを開く。


 そこにははっきりと書かれている。

 何度も何度も読み返した。

 見間違えようもない。


斉藤優樹

Lv1

Fランク冒険者

ジョブ 見習い

見習いスキル

体力7 (+0)

魔力0 (+0)

筋力6 (+0)

耐久5 (+0)

敏捷4 (+0)

器用3 (+0)

ジャージ サンダル ダガー ダガー


 理不尽だ。

 世界神さんよ、あんた酷すぎるぜ。

 神ってんなら俺が転移者だって分かるだろ。

 異世界転移ものは大抵チート能力貰って無双するもんだぞ。


 それがなんだ、俺は最底辺ジョブでスキルも無しか。

 恩恵も無しか。

 ざっけんな。


「気を抜くな。前方から2匹、左から1匹。来るぞ」


 中二君が十字路でモンスターを感知する。

 同時にドロンと消えた。

 探索者のスキルか。

 羨ましい。


スキル サーチ をラーニングしました。

狩人のジョブを授かりました。

狩人の恩恵を授かりました。


スキル 潜伏 をラーニングしました。

探索者のジョブを授かりました。

探索者の恩恵を授かりました。


 頭の中で声がした。

 コンピューターで合成されたような声だ。


「え?」


 思わず声が出た。


「だからモンスターだよ。見習い君は引っ込んでな」


 パパスーツが嘲るように言う。


 おこちゃまは無視して、今聞いた台詞を反芻する。

 ラーニング?

 

 前方から大モグラが現れた。


「来た来た来た。食らえ、ダブルスラーッシュ!」


 パパスーツが一瞬のうちに二撃を放つ。

 大モグラの胸部に大きなバツ印が現れ、鮮血を挙げながら倒れた。


スキル ダブルスラッシュ をラーニングしました。

剣士のジョブを授かりました。

剣士の恩恵を授かりました。


 まただ。

 ラーニング?

 なんだって?


「ラッ…シュ」


 ポニーテールが俺の前を横切る。

 いつの間にか蝙蝠が左から接近していた。


 ボクサーよろしく身を屈めて懐へと滑り込み、左ジャブを二発顎に命中させる。

 蝙蝠がのけぞると同時に渾身の右ストレートを放った。


スキル ラッシュ をラーニングしました。

拳闘士のジョブを授かりました。

拳闘士の恩恵を授かりました。


 まさか。

 ラーニングって。 

 まさか。


 戦闘中にもかかわらず、自分のステータスウィンドウを開く。

 そこにはスキルが表示されていた。


斉藤優樹

ヒュム

Lv1

Fランク冒険者

ジョブ 見習い

    ┗ 狩人

    ┗ 探索者

    ┗ 剣士

    ┗ 拳闘士

見習いスキル

 ・サーチ

 ・潜伏

 ・ダブルスラッシュ

 ・ラッシュ

体力7 (+30)

魔力0

筋力6 (+50)

耐久5 (+10)

敏捷4 (+70)

器用3 (+40)

ジャージ サンダル ダガー ダガー


 やっぱり。

 幻聴じゃない。

 気のせいじゃない。


 ステータスウィンドウを閉じ、目の前で繰り広げられる戦闘に意識を集中させる。


 俺の考えが正しければ。

 

 甲冑の隣まで走り、大モグラの間合いに入る。

 両手を交差させ、ドリルのように回転しながら突進してきた。


 来た。

 まだか。

 まだかよ。

 おい、おっさん、俺死んじまうぞ。


「危ねえぞ!突っ立ってんじゃないわい!」


 大モグラの爪があと数センチの距離まで迫ると、甲冑が盾を掲げて俺を庇った。


スキル かばう をラーニングしました。

重騎士のジョブを授かりました。

重騎士の恩恵を授かりました。


 あぶなかった。


 でもこれで確信した。

 俺は他の奴らのスキルをラーニングできる。

 そしてそのジョブと恩恵まで自分のモノにできる。




◇◇◇


斉藤優樹

ヒュム

Lv1

Fランク冒険者

ジョブ 見習い 

    ┗ 狩人

    ┗ 探索者

    ┗ 剣士

    ┗ 拳闘士

    ┗ 重騎士

見習いスキル

 ・サーチ

 ・潜伏

 ・ダブルスラッシュ

 ・ラッシュ

 ・かばう

体力7 (+50)

魔力0 (+0)

筋力6 (+60)

耐久5 (+30)

敏捷4 (+70)

器用3 (+40)

ジャージ サンダル ダガー ダガー

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― 新着の感想 ―
[良い点] …戦闘スタイルだけでなく、主人公を覗いたコイツらの本性を知れたな…唯一、リザードマンは良いやつだな…主人公が血塗れの手を肩に置かれたけど!(笑) [気になる点] …パパスーツ野郎なんかは……
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