12話 アイカ
獣戦士のジョブは初めて見る。
ステータスや装備は相変わらず妨害されたが、ジョブだけでも分かるのはラッキーだ。
でもなぜ先の四人と一緒に出さなかったのだろう。
見劣りするとか言ってたけど、よう分からん。
判断材料もその基準も分からないし。
「この娘は別に管理されていたのですか」
「お恥ずかしながら買い手がつきませんで。王都の奴隷商と連絡を取り合い、在庫管理をしていたところでございます」
在庫て。
しかしなぜ買い手がつかないのだろう。
レベルが他に比べて低いが、それが理由なのだろうか。
いや、違う。
そもそもジョブとレベルが分かるのは鑑定スキルのおかげだ。コレがなければ分かり得ない情報だ。
鑑定が使える考古学者ならともかく、他の冒険者も買わなかったという事になる。
何かあるぞ。
「如何でしょうか」
「値段の方は」
「雄の獣人族ですと一人20万ドルクから、雌の獣人族は一人10万ドルクからでございます」
高っ。
いま手元にあるのは、ダガーを売って宿代を払ったお釣りの350ドルク、薬草採取で得た2560ドルク、そしてギガントラット討伐の4万ドルク、合わせて4万2千910ドルクだ。
雄雌と言ったり、女性の方が安いのが気に触るが、戦闘奴隷としては一般的に男性の方が需要があるのだろう。
ステータスに大きな差はないだろうし、金銭的にも女性にした方がいいのかも。
メンタル面で見ても、可愛いオンナノコが仲間にいた方がハッピーな気分になれる。
オサーンでむっさぁなパーティーはちょっと。
ねぇ。
そうだね、女性にしよう。
女性を奴隷として迎え入れる事に対する下心はない。
ないったらない。
男女差別反対。
そう、男女平等な待遇を約束しよう。
全て平等に。
衣食住も平等に。
俺の着ている服と同じものを着させよう。
それはつまり、俺がすっぽんぽんなら向こうも同じ。
食事もベッd、ゴホン住むところも同様だ。
でも圧倒的に金が足りない。
もうしばらくクエストをこなして、貯金を貯めてからまた来ようかな。
唸っているとドゥアンが口を開いた。
「こちらの犬人族ならば5万ドルクで手を打ちましょう」
お、いきなり値段が下がったぞ。
しかも半額とは。
何故だ。怪しい。
「しかし見る限り華奢な体躯ですし、本当に戦闘奴隷なのでしょうか」
「元冒険者です。戦闘に関してはご期待に添えるかと」
「元、とは?」
「この娘は犯罪奴隷として当家に来ましたので」
「犯罪奴隷…何をしたのでしょうか」
「雇い主であったご婦人の旦那様と一儀に及んだそうなのです」
ぶっ。
「し、しかしその言い方だと確証が無いように聞こえるのですが」
「証人がおります故」
「あの、こ、行為を見られたのですか」
「存じませんが、旦那様の寝室に入るところを目撃されております」
「それだけですか。証拠は」
「雇われ冒険者が貴族の旦那様に不義を働かせた疑惑自体が問題なのです。貴族に対する犯罪はすなわち世界神への反逆行為です。したがって重刑者でございます」
なんだそりゃ。理不尽な。
一方的に彼女のせいにされているのではないか。
冤罪の可能性もあるんじゃないか。
しかも罰せられたのが既婚者ではなく、この子とは。
両方に罪があるように思うが。
アイカという名前の奴隷をちらりと見る。
まっすぐ俺を見返してきた。
やはり可愛い。
するとドゥアンがアイカの背中を軽く叩いた。
ピンと背筋を立たせると胸を張った態勢になり、その大きな曲線がぶるんと跳ねた。
吸い込まれるようにその上下運動に目がいってしまう。
ドゥアンが声を落として言った。
「犯罪奴隷としての経緯からも、性奴隷としてお仕えする事を了承させております」
この野郎。
俺がこんな可愛い奴隷を買ったらナニするか見越してやがる。
あくまでも戦闘だが。
やばい、欲しい。
戦闘奴隷が。
でもそのお金がない。
これでは戦いに行けない。
ぬぅ。
「分かりました。この犬人族の犯罪履歴、そしてジュリア様のご紹介という事もあり、特別サービスで2万5千ドルクでお譲りいたしましょう。これ以上はまかりかねません」
いつまでも黙っていたら向こうからどんどんと値段を落としてきた。
こいつ商売下手だなと思うが、いわゆる曰く付きの物件だ。
なんとしてでも売り払ってしまいたいのだろう。
「ではそれでお願いします」
出来るだけ平静を装い、交渉成立の宣言をする。
「ありがとうございます」
深々と頭を下げられた。
こっちからは何もしていないのに得した気分だ。
大銀貨3枚を取り出し、ドゥアンに渡した。
「細かいのが手元に無いので、3万ドルクからお願いします」
「ありがとうございます。確かに受け取りました。只今5千ドルク持って来させますので、今しばらくお待ちくださいませ」
ドゥアンが執事と奴隷全員を退室させ、再度頭を下げてから去っていった。
数分後、銀貨5枚をトレイに乗せて戻ってきた。
その後ろにはアイカがいた。手に鞄を持っている。
「3万ドルクお預かりいたしまして、5千ドルクのお返しとなります。ご確認ください。それではこれより、アイカはユウキ様の所有奴隷となります。契約魔法を行使いたしますので、左手をこちらに」
ドゥアンが板を取り出した。
ギルドで再三見たタブレットだが、倍近く横長だ。
契約魔法が何か分からないが、多分主従契約に関係しているのだろう。
タブレットがあるところを見ると、ライセンスカード関連か。
左手を出すと、タブレットの左側に置くよう促された。
アイカが左手を右側に置く。
ドゥアンが両手を確認するとタブレットを操作した。
半透明の球体が現れ、二人の手を眩く包む。
光が収まると、ライセンスカードが表示された。
サイトウ ユウキ
Fランク冒険者
ジョブ 見習い
所有奴隷 アイカ
そしてアイカのライセンスカードも表示された。
アイカ
奴隷
ジョブ 獣戦士
所有者 サイトウ ユウキ
「お疲れ様でした。これでアイカは正式にユウキ様の所有奴隷となりました」
晴れて奴隷を購入したわけだ。
2万5千ドルクで。
定価の四分の一の価格で。
今更言えた義理ではないが、人の命って安くないか。
礼を述べ奴隷商館を出た。
ベルモント亭に向けて歩き始める。
後ろにはアイカが付いてきている。
角を曲がってすぐに立ち止まり、アイカに向き直す。
「えっと。これからキミの主人となる、ユウキだ。よろしく」
手を差し出し、握手を促す。
奴隷を買ったのは良いが、ぶっちゃけどう接すればいいのか分からない。
とりあえず敬語は無しでいこう。
主人と奴隷なんだからもうちょっと偉そうでも良いのかもしれないけど。
しどろもどろになる可能性があったから、少し移動して人目のない細道で切り出したのだ。
「よろしくお願いいたします」
「うん。早速なんだけど、ハイ、これ」
ジャージの上着を渡した。
「そんな布切れじゃ寒いでしょ。これ着てよ」
「これはご主人様の上着では。そんな、恐れ多いです」
「見てるこっちが寒いから。いいから着てちょうだい」
ジャージの上着を押し付ける。
ボロボロの安物だから恐れ多くない。
耐寒性は皆無だろう。
実は理由は他にある。
目の保養、ゴホン目の毒になるものを隠して欲しいのだ。
柔らかく揺れる土台の上に接合された小さな突起が二つ、追尾ミサイルのように随時視界に飛び込んできているのだ。
ちょ、まじでヤヴァイ。
往来でこんなものを隠さずにいて良いのか。
ていうか他の男どもに見られたくない。
ちゃんとした服を買い与えるまではジャージを着させよう。
「わ、わかりました」
根気よく粘るとジャージを着ることを了承してくれた。
袖を通し、前を留めようとすると手が止まった。
「あの、ご主人様。これはどうやって使うのでしょうか」
ご主人様て。
一瞬意識が遠のくが、足を踏ん張り意識を保つ。
そういえばこっちでジッパーは見たことないな。
大抵ボタンや紐で前を留めている。
「ジッパーだけど、知らない?」
「存じません」
「こうやって端を合わせて、上に引き上げると…ほら閉まった」
手こずったが、前を閉めることに成功した。
「すごいです、ご主人様。これは見たことありません」
この質量を抑え込めるジッパーが凄いと思う。
バツン。
案の定、圧力に耐えきれずジッパーが弾けた。
続いて極めて激しい局地地震が起きた。
ちょ、待って。
ムスコよ、静まってくれ。
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