7話 マニューバを運ぶぞ
真っ黒な空の中を輸送機が進む。その機首のコクピットに輸送屋の親方と乗員が乗り込んでいる。
「さて、街の奴らはどんな顔をするかな?」
「まぁ、喜ぶんじゃねぇの? ドラゴンの肉なんて滅多に食えないからな」
「偶然見つかっても、腐った死体のことが多いしな」
爺さんと一緒にいるのは、赤いマニューバ乗りの男。
輸送機は反重力炉で浮かんでいるので翼の必要はない。機体の前後に取り付けられたプロペラを使って小回りも利くし、その場での転回もこなす。
プロペラを駆動する機関も、マニューバとは少々違う。
マニューバは、炉で生み出された蒸気を高圧ピストンへ送って機関を動かすが、輸送機の機関には2種類のピストンが存在する。
高圧ピストンで機関を動かしたあと、圧力が残っている蒸気で次の低圧ピストンを動かして、更に動力を回収する。
それ故、マニューバより燃費が良い。
その燃費の良い輸送機が赤い航空灯を点けて、街の飛行場へ降下してくる。
「ポーッ! ポーッ! ポーッ!」
断続的に蒸気を利用した汽笛を鳴らす。蒸気機関車のアレと同じ物だ。
素敵な贈り物を持ってきた輸送機だが、街は静まり返り寝ている家庭もある。街の一角にある一軒家、この家もすでに家族揃って寝床に入っていた。
「なんだよ、うるせぇなぁ……」
騒々しい外の様子に、暗い部屋で寝ていた男が呟く。
安眠を妨害されて不機嫌そうな男だが、ドタドタと足音が聞こえてきて寝室のドアが開いた。
頭に何か布を巻き、薄ピンクの寝間着を着た、この男の女房だ。
「ちょっと! 大変だよお前さん!」
「なんだよ! うっせぇな!」
「ギュオール運送がドラゴンを運んできて、飛行場で肉を配るんだってさ!」
「冗談も休み休みいえ、ドラゴンなんて…………ドラゴン!?」
男がベッドから飛び起きた。
「本当なんだよ、お前さん! 街の皆が、飛行場へ走ってる!」
「なんだと!? こうしちゃいられねぇ! おい! ガキどもをみんな起こせ! 数で攻める!」
「あいよ!」
バタバタとセラミックのボウルと包丁を持って、街の皆がTシャツとパンツ、寝間着のままで走りだした。
「お前の所も行くのか?」
走っている家族の隣で、同じく走っているのは、近所の知り合いだ。
「当然! ドラゴンの肉なんて滅多に食えるもんじゃねぇからな!」
「ちげえねぇ!」
「しかし、ギュオールの奴らは、ドラゴンなんてどこから運んできたんだ?」
「まぁ飛行場まで行ってみりゃ解るってもんよ!」
街中の野次馬が、ボウルと包丁を持って、飛行場へ殺到した。
飛行場の滑走路の上に置かれた黒い大きな山。
その上にギュオール運送の親方が、輸送機のライトに照らされて仁王立ちになり、彼の手には白いメガホンが握られている
これも発掘品で、音声を拡大する装置がついているのだが、装置の複製はなされていない。
「本当にドラゴンだぜ!」「こりゃレッサードラゴンだな」「でも、ドラゴンはドラゴンだ」
「皆の衆、よく聞きやがれ! このドラゴンを倒した勇者様からのおすそ分けだ! 昼ごろ倒したんだが、輸送手段がなくて、時間が掛かっちまった! 故に、売り物にはならねぇと判断して、無料で配ることになった。タダだからな! 肉がクセェとか、当たったとか、苦情は一切受け付けねぇので、そのつもりで」
話を聞いていた、街の住民から野次が飛ぶ。
「おい爺さん! 口上はそのぐらいにしやがれ、どんどん肉が悪くなるじゃねぇか!」
「そうだそうだ!」
「ちっ! 気の短けぇ連中ばっかりだな――人のことは言えねぇが……いいか~肉だけだからな! 鱗には手をだすよな。よ~し! かかれ~!」
「「「うぉぉぉぉぉ!」」」
爺さんの合図と共にドラゴンの上から降りると、街の住民が一斉に飛びかかった。
竜の屍に群がった人々によって、次々と鱗が剥がされ投げられていく。運送屋の乗員が、それを拾い一箇所に集める。
「くんくん、大丈夫だな! まだいけるぞ!」
ドラゴンの身体に群がった男たちが、肉の塊を切り出して臭いを嗅ぐ。
「父ちゃん! まだ温かいね!」
一緒のやって来た子ども達が、竜の体温を確かめる。
「これだけデカイ図体なら、中々冷えねぇし、冷やすとしても大変だ」
住民達は、肉は大丈夫だと判断したようだ。次々と包丁やナイフで、切り込みが入れられ、巨大な肉のブロックが切りだされていく。
あっという間に太い骨が見えてきて、その周りも削られていく。
「へへへ、この骨の周りが美味いんだ」
「でも、あんた! 竜の肉はいいけど、血まみれで寝間着が買い替えだよ」
「何言ってんだ、母ちゃん。竜の血を浴びれば寿命が伸びるっていうじゃねぇか」
「そう言われれば、そうだけど……」
女性としては、あまり「うん」とはいえない状況だ。
ドラゴンの屍に街の住民たちが群がる光景を、親方と一緒に、ナイツのリオも眺めている。
「はは、すげぇな。あっという間になくなるんじゃね?」
「まぁ、そのほうが処理の手間が省けていいや。肉を売るとなると手間が掛かりすぎてな」
話している2人の所へ、生足に黒いジャケットを着た少女がやって来た。
ジャケットは男物なのか、かなり大きくて手が隠れている――シュラの女房、マキだ。
「あの、この輸送機でシュラが遺跡へ向かったはずなんですけど……」
「ん? お嬢ちゃんは?」
「私は――シュラの妻です」
「ああ? おいおい、こんな可愛い新妻を置いて宝探しか? あんな奴に可愛い女房がいて、俺は日照りってんだから――世の中間違ってる!」
リオが額に手を当て、夜空に向かって嘆いている。
「まぁ確かにな。新婚っていえば、新妻とやりまくりって相場は決まっているもんだが……あの男も罪な奴だぜ」
親方からシュラが無事だと聞かされたマキは、一安心した表情を見せている。
「嬢ちゃん、マニューバも見つかったから、すぐに帰ってくると思うぜ?」
「親方さん、ありがとうございます!」
「それから、マニューバのことは、しばらく内緒な」
「解っています」
「くそぉぉ」
リオがブツブツ言っているが、納得できないようだ。
シュラがレッサードラゴンを倒したことや、発掘マニューバを手入れたことよりも、可愛い奥さんと結婚していたことが重要らしい。
住民によるレッサードラゴンの解体は徹夜で続けられて、食えそうな内臓まで持ち帰る者まで現れた。
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――次の日。ギュオール運送は、従業員総出で輸送機に乗り込んだ。
輸送機がマニューバを運んでいる間に、遺跡に人員を送り込み、宝探しをするためである。
セラミックの壁や床等を掘り出すことはできないが、セラミック製品を集めて運ぶことはできる。
それに無尽炉や、駆動機関、発電機等を見つければ、一財産である。
勿論、儲けは発見者のシュラと折半。レッサードラゴンの巣になっていたため、シュラの父親が諦めていたことが実現した格好だ。
――遺跡では、シュラが朝飯を食べながら、輸送機が帰ってくるのを待っていた。
彼も宝探しをしたいところだが、先ずはマニューバの運搬がある。
「ゼロ、もうちょっと待っててね。すぐに運んであげるからさ」
『また空を飛べるようになるとは……』
「やっぱり嬉しい?」
『私に感情はないので、嬉しいとは何か解らないが――飛べない飛行機に価値はない。かつて、こういう言葉があった、【飛べない豚はタダの豚】』
「飛行機? 豚が空を飛んでたの?」
『豚は喩え話――飛行機は、マスターの言うマニューバのことだ』
「マスターはやめてよ。シュラでいいよ」
『承知した、シュラと呼ぼう』
やっぱり、話し相手がいるのはいい。それに彼と一緒なら、空の上でも退屈しないだろう。
「ねぇ、ゼロってやっぱり男なの?」
『私に性別はない』
「声やしゃべり方が男っぽいから、男かと思ったんだけど」
『それは設定したいで、どうとでもなる。【私、ゼロちゃん、よろしくね!】』
突然、ゼロが女声で話始めたのを聞いて、シュラが朝食の管虫を噴き出した。
「なんだよそれ! 止めてよ! ははは」
『喜んでくれてよかった。前のマスターも、これを喜んでくれた』
「マニューバから、突然人になったりしないよね?」
『シュラは、そういうのが好みなのか? 確かに、思考ユニットを人型に入れて、倒錯的な趣味にふけるマスターもいたらしいが……』
「え? もしかして本当になれるの?」
『人型のユニットが残っていればの話になるが』
「へぇ――凄いね」
ゼロから聞く先史の都市や技術に、シュラは思いを馳せる。
「遠い所と会話ができる機械とかは、ゼロの中に入っていないの?」
彼の持っている謎の記憶でも、無線機なる物をなんとなく理解できるが、具体的な構造は解らない。
『その機能はないし、具体的な設計図のデータも入っていない。本当に思考ユニットだけだからな。だが中央のアマテラスに接続できれば、ダウンロードも可能なのだろうが……』
「アマテラス?」
『中央コンピュータ――我々の母親と言うべき存在であろうか?』
「へぇ、お母さん! ゼロにもお母さんがいたんだ」
それを聞いて、シュラは急にゼロに親しみが湧いたようだ。
(感情はないって聞いたけど、どうみてもあるようにしか……)
シュラがそんなことを考えていると、高い排気音が聞こえてきた――マニューバだ。
「親方が、仲間を連れて戻ってきたんだろうか? ちょっと出口の所へ行ってくる!」
彼が出口へやって来ると、空を飛んでいたのは赤いリオのマニューバ。
青空の上空を旋回している機体から発火信号がくる。
『マタナ、ガンバレヨ!』
シュラは荷物から発光信号機を出して、返信を送った。
『アリガトウ』
空の上でマニューバを操りながら、下で輝いている返信の発火信号をリオが見つめている。
年下のシュラが結婚していたことに、かなりのダメージを受けた彼だが、彼はナイツだ。ナイツなら、嫁さんより空で見返すしかない。
今回の騒ぎに絡んだことで、それなりの収入を得た。
「あらよっと!」
リオは右に旋回すると次の仕事へ向かった。
――それから1時間後。輸送機がやって来ると、またゆっくりと、マニューバのある通路へ進入してくる。
前回は前から進入してきたが、今日はバックで入ってきた。これは反重力炉を持っている輸送機ならではの芸当だろう。
今回は明るいので昨日の夜よりは難易度が低い。機体が、シュラがいるマニューバの前まで来ると静止した。
機関が停止すると、機体下部のリフトが降りてきて、乗員と日雇いのバイト達が、わんさか降りてきた。
男性だけではなく女性もいるが、ほとんどおばさんだ。
農作業を行う時のような、色とりどりのズボン姿の作業着を着ている。
輸送機には、ゼロを穴から引っ張り出すための、ウインチも用意されているのが見える。
シュラの所に、輸送機から降りた親方がやって来た。
「おっす! シュラ、昨日は眠れたか?」
「はい。ドラゴンを見た街の様子はどうでしたか?」
「そりゃもう、虫の巣を突いたような大騒ぎよ! わっはっは! ああなると、虫と然程変わらねぇ」
「肉は大丈夫そうでしたか?」
「まぁな。切り出してた連中の話では、問題ないみたいだったぞ。しまいにゃ内臓まで持って行ってた」
「臭いのを我慢して洗えば、美味しいですよね」
「はっはっは!」
大笑いしている親方の脇から、日雇いの女性達が顔を出した。
「ちょいと! まさか、この子が竜を倒した勇者様かい?」
「その通りだ」
「まぁ! ウチの娘が年頃なんだけど、どうだい?!」「ウチの孫娘はいい子だよ!」「ババァ、抜け駆けするんじゃないよ!」
喧々囂々の女達に、シュラが冷水をぶっかける。
「あの……俺、結婚してるんで」
「ババァ共、シュラの言ってることは本当だぞ。可愛い娘だったな」
「マキに会ったんですか?」
「ああ、お前さんの身を案じていたぞ。無事だと伝えておいた」
「ありがとうございます!」
それを聞いた女達がうなだれる。
「ババァ共、何しに来たんだ! お宝探して働きやがれ!」
「そうだよ!」「こうしちゃいられない!」「そうそう!」
女達は、早速遺跡の中へ散らばっていった。
「おい! 迷っても怪我しても、自己責任だぞ!」
「「わかってるよ!」」
手を振る女達に親方が呆れている。
「本当に大丈夫なのか?」
彼女達は遺跡の中を物色して、使えるセラミック製品などを集めて持ってくるのだ。
それを街や、他の都市へ売る商品にする。セラミック類は、生活必需品なので、いくらでも売れる。
なにせ、もうこの世界では作れないのだ。
「竜種がいたってことは、他の魔物や虫の巣にはなってないので、他のギョヨよりは安全だと思いますけど……」
「人間、金に目が眩むととんでもないことをしでかすからな」
親方は長い人生の中で、そういう事例を沢山見て実体験しているのだ。
「まぁ、セラミック製のカップや、鍋を漁るぐらいなら大丈夫だと思いますよ」
「もっとデカイお宝も見つけてくれればな」
ここにマニューバがあったということは、予備の炉や、駆動機関がある可能性もある。
「ここが何らかの施設なら、大型の発電機もあるかもしれません」
「そうだ、それよ! こいつはデカいしのぎになるぜぇ」
親方が、胸の前でパチンと掌と拳を合わせた。
親方の号令で、マニューバが穴から引き出されることになった。タイヤは、なくなっているので、脚にスキッド(そり)が装着される。
「ゼロ、本当に外が見えているのかい?」
『ああ、見えているぞ。沢山の人がいるな。今まで1000年1人だったのに、急に賑やかになった』
「すぐに空でも、君の仲間に会えるよ」
『それは楽しみだ』
(楽しみってのは、感情じゃないのかな? それとも俺の話に合わせてくれているんだろうか?)
マニューバの脚にワイヤーが巻かれて、ウインチに繋がれた。
そのウインチには輸送機から電源コードが下ろされて、モーターに接続される。
スイッチが入れられて、ゆっくりと、ウインチの巻取りが始まると、徐々に白い機体が前に動く。
暗い穴の影から明るい通路へと、その白い姿を現した。
この機体もそうだが、マニューバは通常1人乗りだ。
軍の偵察機には2人乗りの機体もあるが、普通は滅多に見かけない。
それより大型の複数人乗れるものは全部輸送機に分類され、さらに大型のものは~艦と呼ばれて、船扱いになっている。
マニューバと呼ばれるものは1人乗りの、いわゆる戦闘機――ということになる。
機体の燃料は水なのは前記の通りだが、水蒸気を噴射するだけで飛ぶ噴進機が存在する。
これらは大量の水を消費するため、航続距離が極端に短い。
「おやまぁ! 発掘マニューバかい!? あたしゃ初めて見たよ、こいつは孫に自慢ができるねぇ!」
いつの間にかやって来ていた、日雇いの婆さんが声を上げた。
「婆さん、あっちへ行ってろ! こいつが空に飛ぶまで、街の奴らに話すんじゃねぇぞ」
「わかってますよ」
「でも親方――輸送機が機体を吊り下げていったら、すぐにバレるんじゃ」
マニューバは輸送機の格納庫には入らない。主翼を分解すれば可能だろうが、発掘マニューバは構造が特殊で、この時点でバラすのは少々無理がある。
「心配いらねぇ。ちゃんと隠蔽用の布も持ってきたからな」
親方が示す輸送機の格納庫から、巨大な茶色のシートが下ろされている最中だった。
これで簀巻きにして輸送機後部の下へ吊り下げるらしい。この機には竜も運べるぐらいの馬力があるので、マニューバなら余裕だ。
実際に、故障したり墜落した機体を運ぶこともある。
作業が完了し、グルグル巻きにされたマニューバが輸送機の下にワイヤーで固定された。
「ゼロ、大丈夫かい?」
『大丈夫だ、問題ない』
輸送機がゆっくりと1m程上昇すると、マニューバも一緒に持ち上がる。
「大丈夫みてぇだな」
「はい」
シュラと親方が、機内から降ろされた昇降機に脚をかけると、ゆっくりと引き上げられていく。
「おい! 後を頼んだぞ!」
「解りやした!」
「ババァ共を、しっかりと見とけよ! 何をしでかすか解らんからな!」
「解ってやす!」
昇降機に掴まりながら、親方が下にいる部下に檄を飛ばす。
そのまま機内へ収容された。
「よし! 帰るぞ! 機関始動、微速前進!」
「機関始動、問題なし」
「ヨーソロ~微速前進」
マニューバの駆動機関と同じように、無尽炉に水を入れれば瞬時に機関が始動する。
駐機中も反重力炉に電力が供給され続けているが、その時の電力源には、キャパシタが利用されている。
このキャパシタも発掘品であるが、反重力炉を一緒に発掘されることが多いので、元々そのような用途で利用されていた物と思われる。
――そして、昼前。
そのまま輸送機は、遺跡を離れて樹海の上を飛行。何事もなく、シュラが住む街へ戻ってきた。
ゆっくりと街の滑走路に併設されている、ギュオール運送の敷地内へ着陸。
マニューバは無事に街へ到着した。
早速、輸送機から人員が降りて、荷降ろし作業が行われる。固定していたワイヤーも外されて、マニューバの両脚がこの街へ降り立った。
ここが、彼――ゼロの第二の故郷となるが、シートはかかったままだ。
「ゼロ、到着したよ」
『ほう、シートで見えないが、ここが私の本拠地になるのか』
「すぐに直して、飛べるようにしてあげるからね」
『期待している』
少しの間、小声でゼロと話した後、親方の所へ行く。
「これから、どうするんですか?」
「この機体の周りに、小屋を立てて、その中でレストアする。金目の物があると解ると、ウジ虫共が集まってくるからな」
マニューバや輸送機を使って、金品やマニューバを丸ごと強奪する空賊もいるのだ。
駐車していたバイクをユニック付のトラックで釣り上げて持っていく奴らに近い。
ならず者も多いので、用心に越したことはない。
街の滑走路や、ギュオール運送屋の屋上にも対空機関砲が設置されて、上空に睨みを利かせている。
「それじゃ、親方! 俺は一旦家に帰ります」
「おう、後は任せろ! デカイ管虫の方も回収しておくからな!」
「よろしくお願いします。小屋の建築や、マニューバのレストア作業はお手伝いしますので」
「なんだ、坊主――じゃねぇ、シュラ様は持ち主なんだぜ? 高い所から見てりゃいいのよ」
「そうはいきませんよ。こんな楽しいことを見てるだけなんて」
「は! わっはっは! その通りだな。それじゃ、さっさと帰って、新妻をしっかりと可愛がってやりな! 逃げられてもしらんぞ?」
「解りました!」
シュラは走って街の外れの自宅に向かう。
この街の住民は、ここを開拓した古参が中心街にいて、外に行くほど新参者になる。
マキや、キラの家は中堅に当たる。
「マキ! 今、帰ったよ!」
シュラは勢い良く、我が家の扉を開けた。
「シュラ! お帰りなさい!」
この声を聞いた瞬間、胸が熱くなり、指先までぽかぽかと温かくなるのを感じる。
(待っていてくれる人がいるってのは、こんなに素晴らしいことなんだ)
駆けてきたマキが、シュラに抱きついた。
「ごめんよ、俺のわがままに付き合わせてしまって」
「ううん、シュラのことを知ってて、この家にやって来たんだから。怪我もなくて本当によかった」
マキがシュラの首に手を回しながら、涙を流し始めた。
「君には言わないほうがいいと思うけど……レッサードラゴンに追いかけられた時は、死ぬかと思ったよ」
「もう! やっぱり、そんな危ないことを! でも――マニューバを手に入れたって……」
「ああ、それは本当さ。それに、レッサードラゴンも倒したので、お金にかなり余裕ができる! これで、マキに苦労させる心配もなくなったよ」
「私は、お金なんかより、シュラのことが大事なの!」
マキは、口を尖らせた。
「ごめんよ……」
「それじゃ――今日は、たくさん私を可愛がってね」
「……うん」
彼女を満足させられるか、即答できないシュラであった。





