16話 ゼロと見知らぬ街を散歩
シュラはある地方都市に来ていた。シュラが住んでいる街――エスランから1200kmほど離れた街である。
帝都に近いせいもあるし、この街の近くにはセラミック鉱山もあり、中継基地としての役割も果たしている。
そのため物資も豊富。街には沢山の商品が並んでいる。
その街の一角、人で溢れる賑やかな市場にシュラは訪れた。
乱雑に様々な露店や商店が立ち並び、近場から発掘されたよく解らない物が店先に並べられてる。
「賑やかだな」
『そうだな、人々の営みも1000年前とはあまり変わってないように思える』
「1000年前もこんな感じだったの?」
『人々は同じだが――街にはもっと様々な乗り物があったし、天を突くような超高層な建物も沢山建っていた』
「へぇ~」
――とはいえ、シュラが持っている謎の記憶にも、その光景がなんとなく頭に浮かぶのだ。
(俺が発見した遺跡も、鉱山として開発できれば、エスランの街もこんな感じになるのかも……)
希望に胸を膨らませるシュラであったが、エスランの街は帝都よりかなり離れている。
シュラは市場を見て回ると――最初に黒い革製の背嚢――バックパックを購入した。
彼が使っているバックパックは、子供の頃に父親から買ってもらったものだが、小さいし、かなりボロボロになっている。
仕事に使う、もう少し大きい物が欲しかったのだが、ちょうど良いものを見つけた。
値段は銀貨1枚(5万円)である。この世界にもミシンは存在しているので、機械縫いで丁寧に作られている。
手入れをして使えば、一生ものだ。
続いてシュラが目を付けたのは、回路ブロックだ。立方体をした集積回路だと思えばいい。
いわゆる集積回路と違う点は、よりファジーな動きをする一種の人工知能回路なのが特徴だ。
集積回路は1か0か、ONかOFFか、それしか出来ないが、回路ブロックは1とも0とも付かない動きをする。
通常のマニューバでは、水バルブの制御ぐらいにしか使われていないが、シュラの機体はすべての操作がゼロが制御する回路ブロック経由で行われている、フライ・バイ・ワイヤ方式。
沢山の回路ブロックを使用しているので、在庫は潤沢にあったほうがいい。
この回路ブロックは現在32種類が確認されているが、完全なロストテクノロジーで、もうこの世界では生産できない。
便利なブロックだが、未確認のものもあるといわれている。
露店で、動作未確認の回路ブロックが一山銀貨1枚(5万円)で売っている。
シュラは、それを二山購入した。
「あとは……」
夕方になり、あちこちの店に、蛍草の明かりが灯り始めた。
市場のジャンク屋を見て回ると――よく解らない白いセラミック製のパーツが山のように積まれている。
蛍草の明かりに照らされて、白いセラミックの肌が白く輝く。
色んな物が鉱山から発掘されているが、使い方もよく分かっていないものも多い。
そもそも壊れているのか、動くかどうかも解らないのだ。
「こういう所に、君の仲間が落ちていないかな?」
『その可能性は無きにしもあらずだな。感応通信できない人々からすれば、私のような思考ユニットは、ただのガラクタに等しい』
「なんて勿体無い……」
蛍草の明かりの中で露店の一つを見ていると――しばらく沈黙していたゼロが声を上げた。
『シュラ、面白いものがある』
「え? どこどこ?」
『右端の棒のようなパーツだ』
「う~ん――これ?」
シュラは、箱に立てて入っていた油性マジックのようなパーツを拾い上げた。
ペンのように、ポケットに入れるためのクリップが装備されている。
『それだ』
「字が書いてある」
この世界の文字ではないが――シュラにはそれが読めるのだ。
「99式改遠隔ユニット……」
『そうだ、今確認したが完動品だ。購入してくれ』
「分かった――おじさん、これいくら?」
ステテコのようなものを着た、露店の店主に声を掛ける。太ったバーコードハゲのオヤジだ。
「そこにある一山が小銀貨1枚(5000円)だよ」
「それじゃ、小銀貨1枚」
「まいど!」
箱に入っていた、細長いパーツを全部購入してしまったが、使えるのは、シュラが手にとった物だけ。
残りは、買ったばかりのバックパックに放り込む。
「これは、何をするものなんだい? 遠隔っていうぐらいだから、離れた場所で何かできる機械?」
『そのとおり、これは私とのリンクを中継出来る装置だ』
「え? それじゃ、ゼロと離れた場所にいても話せるってこと?」
『そのとおりだ』
「え~っ!」
シュラが大声を出したので、周りの人間が訝しげな表情で見ている。
思わず、彼は小さくなってヒソヒソ声で話す。
「どのぐらいの距離なら大丈夫なの?」
『この街の中ぐらいなら大丈夫だ』
「それじゃ、君をマニューバから取り外したりしなくてもいいってことだよね」
『そういうことになる』
ゼロの言うことが確かなら、彼を駐機場に置いたまま、家でも会話出来るということになる。
「そりゃ、便利だな」
『私もこんな場所で、遠隔ユニットが落ちているとは思わなかった』
「それじゃ、本当に君の仲間も落ちてるかも」
『あり得る話だが、今のところは反応はない。少なくとも、この市場に思考ユニットが存在して回路が生きていれば解る』
ゼロの言うとおり、遠隔ユニットをシャツのポケットに挟み、本体はバックパックに入れる。
「これで、見えてるの?」
『ああ、大丈夫だ』
(遠隔ユニットってのは、目もついているみたいだな。けど、ゼロの本体を持って歩かなくてもいいのは便利だ。外すのは大変だし、結構重いし……)
それに、このまま歩きまわって、彼にジャンクの値踏みをしてもらえばいいのだ。
そう考えたシュラは、そのまま市場を歩き回ったが、掘り出し物は遠隔ユニットだけのようだ。
「う~ん、残念」
『掘り出し物は中々ないということだ』
「それじゃ、何か食べるか――」
シュラは、露店で焼き鳥を買った。いつも管虫ばかり食べているが、鳥肉も食べたい。
焼き鳥といっても、串に打たれているわけではなく、セラミック製の白い皿に山盛りにされて、銅貨2枚(2000円)。
塩味の鳥肉の種類もバラバラだが、たっぷりと食える。
(脂が焦げる香ばしい匂いが、美味しいそうだ)
そして、一口食べる。
「美味い……一食に、こんなにお金を使うなんて贅沢だなぁ……」
彼は既に大金持ちなので、本当は贅沢し放題なのだが、貧乏性が抜けないのである。
夕飯を食べたあと、宿屋に戻ろうとすると、ゼロから提案を持ちかけられた。
『シュラ、宿に戻る前に、あれをやろう』
「あれって?」
ゼロが言うあれとは――市場でやっていた博打。
4つのセラミック製のカップに球を入れて、テーブルの上でシャカシャカとシャッフルする。
どのカップに球が入っているのかを当てる博打だ。当たると賭け金が倍になる。
簡単そうに見えるのだが、シャッフルしている男のカップ捌きは、かなり素早く巧みだ。
シュラが賭けずに目で追って見たのだが、何回か間違う。
完全にランダムだと倍率は4倍のはずだが、人間がシャッフルしているので、目で追える部分もある。
それを踏まえて2倍の倍率なのだろう。客に負けが混んでくると、少々スピードを遅くして客に上手く勝たせる。
勝たせず、負けさせず――金を徐々に吐き出すようにコントロールしているのだ。
賭け金を見ると、銅貨(1000円)や小銀貨(5000円)が多いのだが、小銀貨を賭けている男は、負けを取り返そうとかなり熱くなっているように見える。
いいカモだ。
ゼロがやると言うので、とりあえず――銅貨1枚を出した。
「よござんね!」
男がカップに球を入れると、凄い早さでシャッフルしていく。
『シュラ、左端だ』
「左ね」
シュラから見て、一番左のカップの前に銅貨を置く。
皆が一斉に賭け始める。
「揃いました!」
男が2つずつカップを取ると、左端に球が入っていた。
これで、銅貨2枚ゲットである。
「なんという、先史技術の無駄遣いだろ……」
『前のマスターと一緒に、こうやって博打を楽しんだものだ』
(それって郷愁って感情じゃないのかなぁ……)
それから銅貨2枚ずつを4回賭けて、最後は小銀貨を賭けた。
儲けは、銅貨9枚(9000円)と小銀貨1枚(5000円)で1万4000円の儲けである。
儲けたので帰ろうとすると、おっさん達から野次が飛んだ。
「兄さん、勝ち逃げか?」
「博打は勝ち逃げが基本でしょ?」
シュラの正論に、おっさん達がたじろいだのだが、カップを振っていた男から、思わぬ申し出があった。
ステテコに丈の短い紺色のズボン、そして腹巻きのような物をしている――短髪の男だ。
「それじゃ、兄さん。俺とサシで勝負しようや」
「1対1ってことですか?」
「ああ――」
「それじゃ、銀貨1枚(5万円)ならいいですよ」
涼しい顔をして、シュラが懐から銀貨を出すと周りが盛り上がる。
「「「おお~っ!」」」
勝負を申し込んで、これだけ盛り上がっているのに、胴元としては、ここで引き下がれない。
「くくく……」
カップを持った男は脂汗を流しているが、かろうじて動揺を飲み込んだ。
「大丈夫ですか?」
「そ、それでいいのかい?」
「もっと出せますけど、そちらの払いができなくなったら困るでしょう?」
「くそ! このガキが舐めるなよ! なんぼでも払ってやらぁ!」
「それじゃ金貨1枚(20万円)で」
「「「おおお~っ!」」」
シュラが金貨を出すと、観客が盛り上がりまくる。その騒ぎを聞きつけた市場の連中もやって来た。
「おいおい、どうした? どうした?」
「金貨を賭けるんだとよ」
「そいつは、豪気だなぁ!」
集まってきた観客を前に、男がつぶやく。
「言っておくが、客を勝たせないようにはいくらでもできるんだ。だが、それだと客が離れちまうからなぁ」
男はそう言って、両手を合わせると気合を入れた。そのあと、手がゆっくりと円を書くように動く。
「俺の奥義を見せてやる! あた~! あたたたたたたたたたた!」
残像を残して、目にも留まらぬ早さでカップが入れ替えられる。
「おい、全然解らねぇぞ!」「これが、ヤツの本気か?!」
男の動きがピタリと止まる。
「どうでぇ!?」
『シュラ、右端だ』
「右端ね」
「なっ!」
何の躊躇もなく、右端を選んだシュラに、皆が度肝を抜かれたようだ。
「若いの、それでいいんだな?」
「ええ」
男が、カップに手を掛けたのだが、そこで動きが止まってしまった。
「おい! どうした!?」「まさか、ここまできて逃げるつもりじゃねぇだろうな」
「そんなことをすりゃ、もう市場じゃ商売ができなくなるぜ?」
周りから観客の野次が飛ぶ。
「くっ……」
男は観念したように、カップを開ける――そこには当然、球があった。
「「「おおお~っ!」」」
「くそっ!」
男は、後ろの荷物から、金貨を投げてよこした。
「ありがとうございます」
金貨を受け取ったシュラは、周りに挨拶をする。
「皆さん、お騒がせしました」
とりあえず市場で使ったお金はすべて回収できたので、賭場をあとにする。
「儲かったね」
『シュラ、君も中々の悪人だな』
「あはは、人聞きの悪いこと言わないでよ、博打をやろうって言ったのは、ゼロなのに」
笑うシュラだが、ゼロと話していると、彼の後ろを男たちがぞろぞろとついてくるではないか。
「あの? 皆さんどうしたんですか?」
「いやぁ――兄さんが、どこへ行くのかと思ってなぁ」「そうそう」
「どこって、宿へ帰るんですけど……」
男たちの1人が、シュラたちが泊まっている宿を知っていた。
「この方角だと、滑走路の脇にある、森屋か?」
「ええ――その宿屋です」
「兄さん、もしかしてナイツか?」
「そうです」
それを聞いた、男たちが盛り上がる。
「「「おお~っ」」」
「どうりで、肝が据わってると思ったぜ」「まったくだな」
そのあとも、男たちがぞろぞろと宿屋までついて来てしまった。
宿屋といっても、1階は食堂になっていて酒も飲める。
そのまま、ぞろぞろと入って来た男たちに、女将が悲鳴を上げた。
「なんだいなんだい? このお客は?!」
「何って、お客様だろうがよ、がはは!」「そうよ! 今日はここで飲もうってわけよ!」
シュラについてやって来たのは、10人ほど。
先にいた客と合わせて15人ほどで、1階の食堂が満席になってしまった。
「女将さん、ごめんなさい。皆さんは、俺について来てしまったんです」
「はぁ――」
女将はため息をついて呆れている。
「俺は酒を飲まないので、これで皆さんに酒を飲ませてやってください」
シュラは、さっき博打で勝った金貨をカウンターの上に置いた。
「いいのかい?」
「ええ、酒は足りますかね?」
「そりゃ、倉庫から引っ張り出せば、このぐらいは平気さ。それにしても、娘を応援に呼ばなきゃダメだね、こりゃ」
「すみません」
「ちょいと、あんたら! 応援呼んでくるから、ちょっと待ってな! それから、今日の酒は英雄様の奢りだってさ!」
「英雄?」「英雄?」「英雄?」
テーブルについた男たちが、不思議そうに顔を見合わせている。
「あんたら、この人が誰だか解らないのに、ついてきたのかい?」
「ああ……」「ナイツだってのは聞いたけど」
「近頃、街でも話題になってるだろ? レッサードラゴンを倒した辺境の英雄様ってさ!」
「ああ! 空賊も壊滅させたっていう!」「移動店舗艦も助けたって話だったぜ!」
男たちが一斉に声を揃えた。
「「「辺境の白い稲妻!」」」
それを聞いたシュラは、頭を抱えた。
(ええ~っ! いつのまに、そんな二つ名が……)
「ざっと15人ぐらいですから、1人頭小銀貨2枚(1万円)ちょっと――金貨で足りますよね?」
「はは、十分足りるよ。うちは、そんな高い酒なんておいてないからね」
「「「ウェーイ! ゴチになります!!」」」
1階でどんちゃん騒ぎが始まってしまった。
酒を全く飲まないシュラにとっては、いかんともしがたい。
部屋に戻ると、買ったバックパックを下し、中からゼロを出す。
『それにしても、この世でもファルゴーレと呼ばれるとは……』
「そのファルゴーレって、白い稲妻って意味なの?」
『ああ』
「やれやれ……」
(でも、マニューバから降りて部屋にいても、ゼロと話ができるのはいいなぁ。この白い棒があれば、家でも話せるんだ――街へ出てよかった)
シュラは、1階で行われているどんちゃん騒ぎをBGMにしながら、ベッドで眠りについた。
------◇◇◇------
――次の日の朝、ベッドの上で目が覚める。
こんな遠出して、宿屋に止まるなんてシュラにとっては初めての経験だが、枕が変わると眠れない――ということはなかった。
「おはようゼロ」
『おはよう』
ゼロは基本ずっと起きているので、おはようという概念はない。人間の思考に合わせているだけだ。
「でも、家でも君と話せるのはいいね。仕事の打ち合わせも家でできる」
『仕事の話だけじゃなくても、いいのだがな』
「ごめん、それはそうだね」
荷物を纏めて、隣のリオの部屋をノックするが返事がない。
『へんじがない。ただのしかばねのようだ』
「なにそれ?」
『――というジョークがあったのだ』
「ジョークって冗談って意味?」
『そうだ』
ゼロと話しながら、下に降りる。そこには多くの酔いつぶれた男たちが寝ていた。
『まったく、意味不明の行動だ。自らを危険に晒すとは――』
「ここは街の中だから、そんなに危険はないと思うけど」
カウンターに女将の姿はなく、赤毛の長い髪をした、少々小太りの女性が立っていた。
なんとなく、雰囲気が女将に似ている。
「ごめんなさい、母は一晩中酔っぱらいたちの相手をして、伸びてるわ」
彼女に部屋の鍵を返す。
(やっぱり、あの女将さんの娘だ。それにしても、リオはどこへ行ったんだろう? もうマニューバの所へ行ってるのかな?)
「あの、もう一人のナイツはもう滑走路へ行きました?」
「いいえ、昨晩は帰ってきていなかったみたいだよ」
「ええ?」
(ええ~? それじゃどこに行ったんだろ? 宿屋の鍵も持っているようだから、荷物も置きっぱなしみたいだし……)
シュラがそんな事を考えていると――外からリオが、慌てて戻ってきた。
「リオ、どこへ行ってたんだい?」
シュラの質問に、言い難そうにしていたリオであったが、重い口を開いた。
「ははは――すげーいい女がいてよ……それで一泊したら、金がなくなってて……」
「ええ~っ!?」
その話に、宿屋の娘が入ってきた。
「ちょっと! うちの鍵は?!」
「その……一緒に取られちまって……」
「もう! 部屋の鍵まで交換しなくちゃならないじゃない! 実費を取るからね!」
宿屋の鍵を盗まれたとなると、その鍵が悪意のある第三者に使われる可能性がある。
「面目ない……それと――シュラ、金を貸してくんない?」
「……貸さないと、帝都まで行けませんから、しょうがないですね……」
「恩に着る……」
(この人、もてないって聞いたけど、なんとなく理由が解ったような)
リオに銀貨2枚(10万円)を貸し、宿の娘にスペアキーでリオの部屋を開けてもらう。
鍵の交換費用は小銀貨8枚(4万円)である。それはシュラが立て替えた。
女将さんが休みで宿屋の食堂が使えないため、荷物を一旦カウンターに預けて、市場で食事をとることにした。
昨日の焼き鳥が美味かったので、再び食べることに。
朝のメニューは、量が半分でスープが付き――銅貨1枚(1000円)だ。朝食にはちょうどいい感じ。
「いや~面目ない。ここは俺が奢るからさ」
「それって、俺の金ですよね?」
「……」
シュラの突っ込みに、二の句が継げないリオであった。
朝食後、荷物を宿屋から受け取ったシュラたちは、滑走路へ行くと機体をぐるりとチェック。
「水は満タン……」
計器盤を指さし確認して、マニューバを始動させるのだが――シュラは、ゼロのユニットを戻す作業が残っている。
操縦席の足元に潜り込み、なんとか作業が完了した。
「この遠隔なんとかがあれば、もう君の本体を外さなくても、大丈夫って事だよね?」
『そのとおりだが、遠くへ離れる時は外して欲しいのだが……』
思考ユニットの発言に疑問が多々あるのだが、シュラはもう突っ込みはいれないことにした。
準備は完了して、水は満タンで機体も問題なし。
シュラたちのマニューバは、次の中継地点へと飛び立った。
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――シュラたちが樹海の上を飛んでいる頃。
帝都近くの上空を、ピンク色をしたマニューバが飛んでいた。
鼻の長いスマートな機体に描かれた、黄色い流れ星。
派手な機体とは裏腹に、ヨタヨタと頼りない飛び方をしている。
「ああっ、もう! また調子悪いの?! 何回も整備に出して見てもらっているのにぃ!」
乗っているのは、金髪のツインテールの女の子。
周りを飛んでいるマニューバからも煽られて、イライラしている様子。
「ちょっと、ピンク! 帝都までたどり着けるんでしょうね?」
「……」
シュラが乗っているゼロと違い、この機体はなにも答えてはくれない。
ピンク色の機体は、なんとか帝都にある大きな飛行場の上空に、よろよろとたどり着いた。
巨大なギョヨの上に、大きな滑走路が何本も走っている、マニューバ乗りの聖地。
上空を旋回して着陸の順番待ちをする間にも、他のマニューバに煽られている。
「もう!」
女の子はツインテールを振りながらも、フラップを下ろして着陸態勢に入った。





