15話 帝都へ
アロタール商会によって、スクラップのマニューバがギュオール運送に届けられた。
穴だらけではあるが、原型はとどめていて、状態はそこそこ良い。
当然、炉も装備されていないし駆動機関もない。主脚は片方折れていて、タイヤもない。
おそらく、墜落したのをサルベージされた機体であろう。
ギュオール運送の片隅に放置された、ボロボロの機体にレオナが登って、中を覗きこんでいる。
「ふ~ん、ふ~ん、ふ~~ん」
やって来た機体に、彼女は嬉しそうだ。
「レオナさん、どうですか?」
「う~ん、全然問題なし。外板は虫とカビで穴だらけだけど、モノコックは大丈夫だからね~」
この機体の外板は虫の甲殻なので、有機物。手入れを怠ると、カビが生えたり腐敗したりする。
当然、虫の餌にもなってしまう。腐敗防止用の塗料を塗ってあるとはいえ、野外に長く放置すれば経年劣化は免れない。
「それじゃ、炉と駆動機関を手に入れれば、飛ばせるってことですか?」
普通の機体は、ゼロのような人工知能のサポートを受けていない、シンプルなものだ。
補助翼と方向舵がワイヤーで操縦桿と繋がっているだけ。
大型艦では方向舵すらなく、すべて左右の駆動機関の制御だけで進路を決める。
「多分、大丈夫だと思うよ。炉や駆動機関は、シュラ君が、またどこからか掘り出してくればいいじゃん」
「そうそう、見つかりませんよ」
「でも、君がゼロ君を見つけた場所は、まだ調べてない場所が沢山あるんでしょう?」
「ええ――でも、あれ以上は帝都の業者が入らないと無理ですね」
セラミック製の扉などで閉ざされている場所もあるので、専用の工具や魔法がないと無理。
鉱山業者は、そのための専門の人間や工具を保有しているのだ。
「レオナさん、魔法でセラミックを崩すところって見たことあります?」
「話には聞くけど、直接見たことはないねぇ。魔法を使って材質を脆くするんだってさ」
「セラミックを壊すことはできるのに、生み出すことはできないんですよね?」
「まぁねぇ――」
魔法で変質してしまったセラミックは再使用できない。あくまで崩すためだけに使われている。
通常のセラミックの掘り出しは、セラミック製の工具が使われれる。
超硬セラミックは、同じセラミックで削ったり穴を開けたりできるのだ。
「それよりさぁ、シュラ君」
「なんでしょう?」
「アロタールの娘は本気なんだね?」
「そう――みたいですねぇ……」
アロタールの娘――マリナンは、本当に数ヶ月おきにシュラの所へ通ってくることになった。
彼女の父親でもあるアロタールも乗り気なのだから、始末に終えない。
「でも、アロタール商会とつき合いがあれば、ここにある廃棄マニューバみたいなものも、手に入りますし……」
「そうなんだよねぇ――なんといっても、帝国全土に顔が利くもんねぇ」
シュラが住んでいるエスランでは、この周辺の情報しか入ってこないが、アロタール商会には帝国全土からの情報が集まってくる。
(マキも納得してくれているようだけど……)
彼女には悪いとは思いつつ――マニューバオタクの彼は、帝国全土から集まるマニューバの部品を楽しみにしている。
(俺って最低だ……)
自己嫌悪に陥る、シュラであった。
「そうそう! シュラ君! 1機、マニューバが仕上がったので、試運転よろしく」
レオナが仕上げた機体は空賊から鹵獲したものである。
シュラが世話になっている運送屋の敷地内にも、簡易ではあるがマニューバ用の滑走路や格納庫が整備された。
ギュオール運送がナイツを雇ってマニューバの運用を始めるのである。
シュラは運送屋から、マニューバのレンタル代をもらうわけだ。
「解りました」
レオナに案内されて格納庫に行くと、黒いマニューバが真新しい外板を貼られて、つややかな機体を晒していた。
彼女の話では、あとで塗装すると言う。
「ほら、黒いままで印象が悪いからね」
彼女の言うとおり、防腐剤を兼ねて塗装してあるのが普通だ。
その機体に乗り込もうとすると、ゼロからクレームが入る。
『シュラ、私以外の機体に乗るのか?』
「え? そりゃ、俺の持ちものだから、機体の試運転をしなきゃいけないし。君が故障したり破損する可能性だってある。その時に備えて、他の機体でも習熟訓練をしておかないとまずいだろ?」
『それは、一理ある』
「なに? もしかして、嫉妬なの?」
『そのような感情は、私には存在していない』
「それじゃ、なんの問題ないじゃない」
『――私とその子と、どっちが大切なの!』
甲高い、女のような声がシュラの頭に響く。
「ぷっ! なにそれ?! いつもの冗談?」
『まぁ、そんなところだ』
(彼には感情はないって話なんだけど、どうみてもあるような……)
シュラが、黒い機体の駆動機関を始動させた。
------◇◇◇------
――1週間後。シュラは樹海の上にいた。
青空の下、彼が操縦するマニューバが華麗に飛ぶ。その前方にはナイツ仲間のリオの赤いマニューバ。
シュラは色々とリオを頼りにしているのだが――彼も弟分ができて、まんざらでもない様子。
中々気の合う連中がいなくて、一匹狼だったのだが、やっと仲間ができたのだ。
それに、シュラのところには腕利きの整備士がいる。
足繁くエスランのギュオール運送に通ってくるリオだが、他の狙いがあるようだ――彼は、レオナを狙っているのだ。
彼女は化粧っけは全くなく、そばかすだらけだが、美人だしスタイルもいい。
(リオって、胸の大きい女の人が好みみたいだな……)
マニューバを操りながら、そんなことを考えるシュラであったが――当のレオナは全くリオには興味がなく、相手にもされていない。
シュラとリオの2人が向かっている先は――帝都。
人口百数十万を超える、帝国最大の都市である。樹海から離れた場所にあり、森の恐怖を知らない人々が暮らしている。
樹海の中にある地方都市から、沢山の物資を輸入して、人々が暮らしているのだ。
生まれてから、森に入ったこともない人達が沢山生活しており、そんな人々が、好奇心から樹海へ入り事故を引き起こす。
移動店舗艦を襲われる引き金になった、貴族の息子の件もそうだ。
そんな帝都にシュラが向かうのは、経験値を稼ぐためである。
シュラが住んでいるエスランの街から、帝都までの距離はおよそ2000km。
航続距離400km足らずのマニューバと未経験者のナイツが、初めてでたどり着ける距離ではない。
遙か彼方の都市ではあるが、いずれは帝都へ向かう仕事も受ける可能性が高い。
来るべきときに備えて、リオに金を払い、帝都までエスコートをしてもらっているのだ。
シュラは飛んだ航路や、森の駅の場所を記した自分用の航路図を作っていく。
この長距離飛行に備えて、マニューバの翼下には増槽が取りつけられて、航続距離はおそよ600kmまで伸びている。
ただ、このタンクを装着すると、おそろしく機動性が落ちるので、トラブルの際は切り離す。
(そんな場面に遭遇しないといいけど……こんな所で迷子になったら、即墜落だよ)
マニューバの巡航速度は時速200km~300km。帝都までは7時間~10時間はかかる。
水の補給とナイツの休息のために、定期的に街や森の駅に降りる。
前を飛ぶリオの赤いマニューバから、着陸のサインだ。
彼の機体についていくと、小さな街が見えてきた。そこに降りるようだ。
まずは、リオが着陸。続いてシュラとゼロが続く。
滑走路に降りたマニューバに、小さなトラックがやって来た。
運転しているのは紺色のツナギを着ている爺さんだ。白髪頭はてっぺんまで禿げて、日光が反射している。
「お~い爺さん、水を満タンな。増槽にも頼む」
「おう! 帝都まで行くのか?」
増槽まで装備しているとなれば、長距離飛行は一目瞭然。
「ああ、後ろの白いマニューバにも頼む」
「は~っ、こりゃべっぴんさんじゃのう。寿命が伸びるわい」
「だろ? 俺も初めて会ったときは、射精しそうになったぜ」
それを聞いていたゼロが、愚痴を漏らす。
『男にそんなのものを掛けられるような趣味は持ちあわせていない』
「ゼロ、あくまでも、たとえだよって――男はダメでも、女ならいいのかい?」
『……』
(本当に、感情がないのかなぁ?)
シュラはゴーグルを外すと、ゼロから降りて小型トラックで駐機場まで牽引してもらう。
それが終わると、リオと一緒に滑走路の事務所に入った。
森の駅などと一緒で、簡単なショップや食堂などを併設している場合が多い。
中に入ると――長い天板を赤く塗られた木製のカウンタと、窓際にはテーブルが3つほど並ぶ。
「ちわ~、婆さん生きているぅ? 久しぶり」
「なんだ、お前さんかい?」
カウンターにいたのは、白髪で腰の曲がった老婆。シワシワの顔に、笑みを浮かべて紺のツナギの上からエプロンをしている。
リオに促されて、シュラもカウンター席に座り、防寒ジャケットを脱いだ。
「ここは、パスタが美味いんだ。食べようぜ?」
「はい」
今日は2人だが、1人で来る時には、延々と7~10時間を飛び続けなければならない。
ナイツは、孤独に強くなくてはいけないのだ。
シュラにはゼロがいるので、話し相手がいる。これは通常では、ありえない。
「リオ、1人で長距離を飛んでいる時は、操縦席でどうしてるの?」
彼から、さんづけは要らないと言われているので、シュラも呼び捨てにしている。
「はは、歌を歌ったりしているぜ。どんなに熱唱しても、誰からも文句は言われないからな」
「それは、楽しそうだね」
「でも、マジでヤバイのは眠気だな。寝た瞬間に墜ちるからな」
「そうですよねぇ」
リオの話では、お勧めしないが、覚醒成分がある葉っぱがあるという。
「それは、聞いたことがありますよ。でも、中毒になるって……」
「そうそう……葉っぱが効いている間は平気なんだが、切れるといきなり気絶するように眠るからヤバイんだ。軍のパイロットが、それでよく墜ちる」
「軍隊って、それを普通に使ってるんですか?」
「ああ、装備と一緒に配られるって話だぜ」
2人の会話に婆さんが入ってきた。
「軍隊なんて止めておきな。ろくなもんじゃないよ」
「父も、ナイツになりたくても、軍属は止めておけ――と言ってました」
(父ちゃんが言ってた事故死って、このことなのか……)
「さっきの爺さんも元ナイツなんだぜ」
「そうなんですか?」
「ああ、目が悪くなっちまってねぇ。目が見えないなんて、ナイツには致命傷さ」
婆さんの話では――爺さんの病気は、いわゆる緑内障である。帝都で治癒魔法を定期的に受ければ、治るものだが、潔く引退を決意したという。
「マニューバは?」
シュラの質問に婆さんがパスタを持ってやって来た。
「今、息子が飛んでるよ」
白く長いパスタに、森の山菜と、短く切った管虫が入っている。
「美味しい」
「美味いだろ?」
管虫は僻地の常食だ。小さいものであれば、簡単に採れるし味もいい。
大型の甲虫もご馳走なのであるが、はぐれた個体を仕留めでもしなければ、集団で襲われる可能性が高い。
街へ入られると、甚大な被害が出るだけではなく、全滅する恐れすらあるのだ。
マニューバでさえ、多数の虫に襲いかかれたら手の施しようがない。
「今度、小麦を買って、マキに作ってもらおう」
「おや、若いのに嫁さん持ちかい?」
婆さんの言葉に、リオが反応した。
「聞いてくれよ、婆さん! こいつは、もう3人も嫁さんがいるんだぜ!」
「おやまぁ――そいつは豪気だねぇ、ほほほ」
「笑いこっちゃねぇ!」
「そういうあんたは、いい女が見つかったのかい?」
「……」
「ほほほ」
無言のままのリオを、老婆が笑っている。
「女がそんなに寄ってくるなんて、一体なにをやったんだい?」
「レッサードラゴンを倒して、空賊も退治した……、おまけに移動店舗艦も救った……」
リオがふてくされたように、老婆の質問に答えた。
「おやまぁ! 辺境の英雄ってのは、こんな若い子だったのかい?! こりゃたまげた!」
「英雄というのは勘弁してください……」
おだてられて、シュラは恥ずかしそうだ。
「そりゃ、女たちが放っておくわけないさねぇ……よっしゃ、このパスタはババァの奢りといこうじゃないか」
「なんだよ、俺の分は?」
「リオさんの分は、俺が奢りますよ」
「てやんでぇ! 後輩に奢ってもらうなんざ、そんな恰好悪いことが、できるかってんだ!」
「ほほほ、そりゃこんな立派な後輩じゃ、先輩の面目丸つぶれじゃろうねぇ」
「畜生!」
管を巻くリオを、シュラは苦笑いしながら見ている。
(ナイツってモテるって話だけど、本当のとこはどうなんだろう?)
確かに稼ぎはいいし、あこがれの職業には違いないのだが――。
ほとんど家にいないし、いつ死ぬか解らない、マニューバが三度の飯より好きなマニューババカが多い。
――というわけで、実際にナイツとつき合ってみると、現実に引き戻される女性が多い。
(けど、さっきのお爺さんも元ナイツなら、このお婆さんとは上手くいってるんだろうな……)
リオは、レオナにアタックしているのだが、肝心の彼女は全く興味を示していていない。
彼女にしてみれば、シュラと一緒にいるほうが、確実にマニューバをいじれる機会が多いわけだから、乗り換えるわけがない。
まして、マニューバを自由に改造させてくれるオーナーなど、普通はいないのだ。
すっかり意気消沈したリオを乗せて、赤いマニューバは飛び立った。
一緒に飛び立ったシュラが、その後ろ姿を見ているが――飛び方も心なしか、しょんぼりしているように見える。
(元気出してくれると、いいんだけど……)
――そして、2時間後。次の街へ到着した。
ここは少し大きな街で、エスランの街ほどの規模があり、ここで一泊することになった。
無理して飛べば、今日中に帝都に到着できるが、仕事ではないので、無理をする必要もない。
「ふう――マニューバに乗るのは楽しいけど、1日中乗りっぱなしってのも疲れるなぁ……」
『シュラ、頼みがある』
ゼロが、妙なことを言い出したので、シュラが驚く。
「君が頼みって……?」
『私を外してほしい。この街を見てみたい』
「えっ? 外すって?」
そんな会話をしていると、滑走路の上を小さな青い牽引車がやって来た。
「すみませ~ん! 乗ったまま、牽引してください!」
「はいよ~」
紺色のツナギを着た運転手に、牽引されながらゼロと話をする。
「外すって? どうやるのさ?」
『操縦席の下へ潜ると、私のユニットにアクセスできる』
「ええ~っ?」
やむを得ず――ゼロに言われるまま、シュラは操縦席の足元へ潜り込んだ。
『蓋を開けて、円筒形のユニットを押し下げるようにすると、外すことができる』
「……外して大丈夫なの?」
『大丈夫だ』
ゼロの言うようにハッチを開けると、円筒形の部品が顔を出した。
乾電池のように押し下げてから引っ張ると、全長20cmぐらいの部品が外れた。
よく見れば――取手のようなものがついている。
「お~い! シュラ、なにをしてるんだ~? 早く行こうぜ?」
「は~い! ゼロ、これで大丈夫なの?」
『ああ、大丈夫だ』
シュラはゼロのユニットを手に持ったまま、翼から飛び降りた。
「ふうう~疲れたぜ~」
リオが、マニューバから降りて伸びをする。
「急ぎで1日じゅう飛びっぱなしだと大変ですね」
「まぁ、それだけ超特急の仕事は滅多にねぇけどな」
機体は滑走路の整備士に任せて、リオの案内で宿屋に向かう。結構人通りも多く、賑やかな街だ。
帝都に大分近づいたので、物資の流入も多い。
「ここら辺なら、帝都から近いこともあって、生活もそんなに不便ではないかもなぁ」
シュラのつぶやきに、リオが答えた。
「でも、おかしなものでさ――どうせ帝都から離れるなら、より遠くへ行きたい――ってやつも多いんだぜ?」
「そうなんですか……」
(俺の父さんもそうだったのかな?)
シュラは手荷物と、ゼロのユニットを手に持ったままだが――。
「ゼロ、これで外が見えるのかい?」
『ああ、よく見える。久々の街の風景もいい。前のマスターにも、こうやって外に連れていってもらったものだ』
「ええ? そうなの?」
(なんかペットの散歩みたいなんだけど――なんか意味があるのかな? でも1000年も同じ場所で閉じ込められていたんだ。違う景色も見てみたいのかも……)
滑走路のすぐ近くに小さな宿屋があった。白いセラミックの粉が混じったコンクリ製。白いセラミック製の屋根材に覆われた、辺境ではよくあるタイプの建物だ。
リオの話では、滑走路に近いので、よくナイツが利用するという。
彼と一緒にシュラも宿屋の中に入る。看板には『森屋』と書いてある。
中は小さなカウンターと、丸いテーブルが4つほど。カウンターには女将らしき太った中年の女性。
丸い顔に、頭の後ろで纏めた髪――緑色のシャツに、紺色のスカートを穿いている。
「よぉ、久しぶり」
「おや、珍しい。帝都へ行くのかい?」
「ああ、こいつと一緒にな」
リオが、シュラを女将に紹介する。こうやって顔を売るのもナイツの仕事。
顔を売っておけば、何事もスムーズにことが運ぶ。
「エスランのシュラです。よろしく」
「――ちょっと待って、エスランのシュラといえば、辺境の英雄様じゃないか」
「いやぁ、そう言われてるんですけど、俺は普通のナイツで……」
そういうシュラだが、周りの人間はそうは思っていない。彼はすっかりと有名人なのだ。
僻地の人間ってのは、娯楽に飢えている。ちょっとした噂話でも、すぐに広がってしまう。
まして、ドラゴンを退治して、空賊を壊滅。移動店舗艦まで救ったとなれば、噂の恰好の的。
すぐに1階にいた客に囲まれてしまった。
「ほらほら、英雄さんは長旅で疲れてるんだ! その辺で止めてあげな!」
女将がやって来て、シュラに群がる客を散らせる。
「ありがとうございます」
「随分と謙虚な英雄様だねぇ」
「俺的には、普通のナイツのつもりですから」
女将に鍵を貰うと部屋に行く。床に荷物を置き、防寒ジャケットを脱ぐ。
板の床に白い壁の小奇麗な部屋。ベッドとナイトチェストだけが置いてある。このままじっとしててもいいが――まだ日は高い。
それにせっかく他の街へやって来たんだ、散策してみるのも悪くない。
ゼロの話を聞くと、彼も街の中を見てみたいようだ。
そうと決まれば――部屋から出るとリオと鉢合わせする。
「おっ! シュラ、お前も花街へ行くのか?」
「ええ? 俺は酒は飲みませんし、女も買いませんよ」
「そりゃ、英雄様はよりどりみどりだからなぁ」
そんな嫌味をシュラに言う。あちこちで彼が持ち上げられているので、リオは拗ねているようだ。
「本屋か、ジャンク屋を探しますよ。良い部品があるかもしれない」
「堅いねぇ……」
「そうは言うけど――リオ、マニューバの面白い部品があれば、レオナさんに受けがいいかもしれませんよ」
「うっ! それは確かに……」
花より団子、レオナには花よりマニューバ。
リオが腕を組みながら、悩んでいるが、シュラは花街には興味がない。
彼は、右手にゼロのユニットを持って宿屋から出ると、街の中心街へ向かった。





