番外編 シアン成長記録
昨日は更新出来なくねごめんなさい!
これの下書きが予想以上に長引いてしまい…
その分、いいのが出来たんじゃないかな、なんて思ってます
お楽しみに!
アー!!!
うぇーん!うぇーん!
アルドレット邸に元気な赤子の産声が響いた。
「おめでとうございますご主人様、女の子ですよ!」
「ああ、元気な子だ。よく頑張りったねアリシア。」
そう言ってこの屋敷の主人、ユーキ・アルドレットは自らの妻、アリシアと産まれたばかりの自分の娘に慈愛の眼差しを向けた。
「はあ…はあ……。私の…娘…?」
「抱きます?」
使用人が尋ねた。
「ええ。」
アリシアはすぐに答えて、先程まで自分の胎内にいた愛し子を両腕に抱いた。
「結構…重いんですね…。」
出産を終えたばかりのアリシアにとっては、少しキツイようだ。
「ふふっ、命の重さってやつさ。ところで、僕にも抱かせてもらっていいかい?」
「ええ、もちろん。あなたの子でもあるんですから。」
そう言うとアリシアはユーキに子を渡した。
しばらく夫婦で新たな家族を愛でた後は、
「それでは他にも色々とあるので、預からせていただきます。奥様はしっかり休んでくださいね。」
「いや…」
「休みなさい♪」
「…。」
そう言って自らをメイドと名乗る使用人は、強制的に母親を休ませ、子どもを預かり、部屋を出ていった。
「…お疲れ様、アリシア。ミーシャの言う通りしっかり休んでくれ。」
「それですが、あな…いえ、ご主人様。」
「…嫌な予感がするけど、何だい?」
アリシアはベッドから上半身を起こしながら、ユーキの目を見て言った。
「体力が戻り次第、仕事に復帰したいと思います。」
「…やはりか。別に、これを機に使用人なんて辞めて、このまま辺境伯夫人として…」
「お気遣いありがとうございます。しかし、私が好きでしていることですので。」
「はあ、ほんとに君は…昔から頑固なんだから。」
「それほどでも。」
「褒めてないからね!?」
しかし、ユーキは経験からアリシアが自分の考えを曲げることは決してないことを知っていた。
なので、
「分かった。君の好きなようにするといい。」
こう言った。
しかし、それに付け加える言葉があった。
「ただし、使用人を新しく雇う。君の負担を減らす為にね。それは譲らないよ。」
と。
これがユーキの最大限の譲歩だ。
それに対するアリシアの答えは…
「分かりました。ではこちらで候補をリストアップ、用意しておきますね。」
「はあ…だから、そういうところが…まあ、君がいいならいいか。」
これが、とある春の日のこと。
シアン 1歳
突然だが、アルドレット邸で働いてる使用人は、当主の身分、屋敷の大きさの割にとても少ない。
シアンと名づけられた子供が産まれるまでは屋敷には使用人が2人、馬車の御者が1人の3人だけだった。
これは貴族においては非常に珍しいことで、中には「使用人を雇うことも出来ないほどに経済的に困窮しているのか。」と侮る者もいるほどだ。
では、なぜアルドレット邸には使用人が少ないのか。
それはこの屋敷の主人が「人嫌い」だからだ。
ユーキがまだ幼い頃、父の社交界に付いて行ったユーキはそこで、その場にいた人々…大人の黒さ、汚さをまざまざと見た。
昔から聡い子供だったユーキは、その時に思った。
「本当に信じられるのは自分だけだ」と。
それから少年は人を信頼せずに生きてきた。
中には相手に一方的に絡まれているうちに仲良くなってしまった親友や、一目惚れしてしまった頑固な使用人なんかもいたが…基本的には近くに人を置くことはなかった。
それはすっかり大人になった今でもほとんど変わることがなかった。
そんな、信頼する人しか身近に置かないというポリシーは、しかし娘が出来たことで多少なりとも変わらざるを得なかった。
そのために行われたのが…
「パンパパーン!いよいよ開催!アルドレット家主催、使用人選抜会!!いえーい!ぱちぱちぱち!ほらそこ、拍手拍しうぎゃ!」
アリシアにチョップされた。
「ふざけないでくださいミーシャ。では説明を始めます。」
そう言って、アリシアは集められたメンバーを見回す。
その場にいた使用人候補は10人。
すべてアリシアによる第1選考を勝ち抜いた使用人の卵達だ。
彼女たちは元々、来客があったときの水増し要員として仮契約をしているなんちゃって使用人なのだが、今回はその中でも優れた能力がある者を10人集めた。
「…という風になります。それでは早速1番から面接室へ行ってください。」
そして、結局この面接で選ばれたのは…
オレンジ髪が特徴の元気な少女と、まだ幼く背も低い料理上手な女の子の2人だけだった。
シアン 3歳
新たな使用人を迎え新体制になったアルドレット家は、それなりに上手くいっていた。
そして、一人娘のシアンはスクスクと成長し、3歳になった。
この頃から神童の片鱗を見せ始めていたシアンは、町に下りて同年代の友達と遊ぶことよりも家で本を読むことや魔法を練習することの方が好きだった。
「みーしゃー!まほうおしえて!」
「はあ…またですか?ご主人様に見つかったらなんて言われるか…。」
そうボヤキつつも魔法を教えるミーシャは、シアンの魔法の才能を見抜いていたのか、はたまた単にアルドレット家のアイドルにメロメロだったのか…。
「ありしあ!ごほんよんで!」
「かしこまりました。昔々、あるところに美しい姫が…」
これもよく見る光景だ。
なお、シアンはアリシアが自分の母親だと言うことは知らず、単なる使用人としか知らない。
これはアリシアの意向だ。
「私はユーキ・アルドレット様にお仕えする、単なる1使用人でしかありません。」
とは本人の談。
他にも、中庭で虫を捕まえたり
「おっきいのとれたー!」
「お嬢様何やってんすか!?早く手を離して!早く!」
食堂に行って
「まるたちっちゃーい。ごはんたべてる?」
自分より背の低い厨房担当をペシペシしたり
「わ、わたしのほうが…お、おねえさんだもん…ぐすん。」
町に出るときには
「ぎるのおひげいやー!」
「んなぁ!?」
御者に精神的なダメージを与えたりなど、家の中でそのお姫様っぷりを散々に発揮していた。
シアン 6歳
貴族の子女は6歳を迎える年から学校に行き始め、それと同時に社交界デビューをする。
当主であるユーキ自身が嫌いなため、アルドレット家は滅多に社交界には出ないのだが…
この年の社交界は特別だ。
これからシアンが学校で毎日顔を合わせる子供とその親の交流会も兼ねているので、今後の為にも出席しなければ行けないのだ。
そういうわけで、アルドレット親娘は社交界の会場に足を踏み入れた。
「それではすまないが、しばらくの間1人で待っていてくれ。挨拶をして来る。」
「分かりましたお父様。」
そう言って礼儀正しくお辞儀をするシアンは、すっかり大人しく、賢く、そして貴族に相応しい優雅さを身に付けていた。
また、光を浴びて美しく輝いて見えるその容貌は、同年代の男子だけでなく、周囲の女子、そして極1部の貴族(紳士?)の視線すらも奪っていた。
そんな、1枚の絵画の様に美しい、物憂げな表情でグラスを傾けるシアンであったが、その内心は
「(かわいいお人形もなければ面白い本もないのね…。社交界って退屈。)」
そう思っていた。
そんなシアンに、ふと面白い存在が目に入った。
それは、周囲の人が遠慮する中、1人だけ周りの目を気にせずにひたすら食事を摂り続ける少女だ。
しかも、その少女はそんな風に食事のことだけで浮いていたのでは無かった。
目を引くのはその可愛らしさ。
汚さないように袖が折られている見たこともないドレス(後にキモノという物だと知ることになる)、冬に積もる初雪のように滑らかで白く、それでいて健康的な肉付きの肌、それに何よりシアンにとって、父、ユーキ・アルドレット以外に見たことが無い綺麗な黒髪黒目。
シアンの興味は一瞬でその少女に移った。
早速近づいて声をかけてみる。
「ねえ、そこのあなた。」
「モグモグ…」
「ちょっと…聞いているの?今お皿にチキンのステーキのお代わりを取ろうとしているあなた。」
「モグッ!?モモグモグモモ?」
「……食べてから話しなさい。お下品よ。」
「モグモグ…ごくん。えっと、わたくしですか?」
「ええ。とても可愛らしくって声をかけたの。私はシアン・アルドレット。あなたは?」
「わたくしはマーガレッ…おっと。シャルロッテ・ワーグナーです。」
「そう。私のことはシアンと呼んで。あなたのこともシャルロッテと呼んでいいかしら?」
「シャル、でいいですよ。それか花子でも。」
「は、はな…?それならシャルって呼ばせてもらうわ。ところで、この社交界って退屈じゃない?」
「あ、やはりそう思います?実はわたくしも思っていて…。」
「だと思ったわ。あれだけご飯しか食べてなかったら分かるわ。」
「えへへ…。」
「ねえ、私と一緒におしゃべりしない?」
「ええ、いいですよ。何のおしゃべりをしますか?」
「じゃあ、可愛い動物の…」
これがシアンの社交界デビュー。
そしてこれから長い間一緒にいることになる初めての親友との出会いだった。
シアン10歳
そして、少女は運命の出会いをすることになる。
「これからよろしくね、ミーくん!」
シアン 20歳
やがて大きくなった少女は…
「行くよ、ミーくん!」
「ガァウ!(おう!)」
かけがえのない相棒と共に空を翔ける
英雄になった。
普段の分量と比べると、ずっしり来たんじゃないでしょうか?
楽しんでいただけたなら幸いです
この場を借りて、普段応援してくださっている皆様に厚く御礼申し上げます
これからも頑張りますので、何卒よろしくお願いします




