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Episode 44:後編

Episode 44:後編


「100パーセントの証明(V-E-T)――名探偵、太鼓判を押される」

ステンレス台の上のロジック

キィン……と静かに診察室のドアが閉まり、ホームズはひんやりとしたステンレス製の診察台の上で、しっかりと四肢を踏みしめていた。


ベテランの獣医師が、手際よく聴診器をホームズの小さな胸に当てる。

トントン、トントン……。


「うむ、心音も肺の音も実に対称的で美しい。雑音は一切ないね。日頃のヤードでの捜査(運動)の成果かな?」


先生が微笑むと、バーバラは誇らしげにノートを胸に抱きしめた。

「そうだべ! ホームズ様はロンドン中を毎日駆け回っているから、心肺機能はノーリミッツに絶好調だべ!」


(ふむ。当然だな。私の心拍数は、白猫のハッキング・コードの秒数カウントを正確に刻むための、最も精密な大英帝国のクロノメーターだからな)


次に先生は、ホームズのチャームポイントである大きな垂れ耳をそっと覗き込み、続いて口腔内、歯茎の健康状態、そして関節の可動域を一つずつ丁寧に触診スキャンしていった。


バーバラの「50ポンドの価値データ・トレース

「よし、身体検査はオールクリア。ノミ・マダニの寄生虫チェックも完璧に陰性クリーンだ。念のための血液検査の数値も、若いビーグルのお手本のようなバランスだよ」


先生がカルテに次々と「Excellent(最高)」のスタンプを押していく。

バーバラは50ポンドから200ポンドの目安の中から、今回の総合健診費用として、受付にカチリと正確に120ポンド(約2万2千円)を支払うと、発行されたばかりの『最高健康証明書カルテ』を素直な瞳で見つめた。


「ホームズ様、カルテのデータを見てほしいべ! この『V-E-T』のパズルの最終コード(アンサー)が繋がったべ!」


バーバラがノートの数値を指差す。

「お医者様が言った『心音の対称性』『血液の完璧なバランス』。これ、白猫モリアーティがどんなに歪んだ生体ウィルスやハッキングを仕掛けてきても、ホームズ様の健康な身体(免疫グリッド)が、すべてを3秒以内に物理的にシャットダウン(中和)できるっていう、絶対の安全証明セキュリティだべ! 120ポンドの価値は、ロンドンの平和の維持費そのものだったんだべ!」


(その通りだ、バーバラ君! 完璧な知性は、完璧な肉体に宿る。白猫が私の健康を害して捜査能力を奪おうと画策したとしても、このカルテの数値ロジックの前には、最初から詰んでいたのだ!)


平穏なヤードへの帰還

健診をすべて終え、すっかり夕暮れに染まったコヴェント・ガーデンの路地裏を、バーバラとホームズはのんびりと歩いてヤードへと向かっていた。


ふと、クリニックの向かいの古いレンガ壁の給水管の上、夕日を浴びて佇む「一匹の白猫」の影が見えた気がした。

奴は、名探偵に生体的な弱点がないか(体調を崩していないか)を遠くから盗み見ようとしていたのかもしれないが、バーバラが大事そうに抱える「100%健康」のカルテと、ホームズのブレない力強い足取りを見て、フッと満足そうに尾を揺らすと、夕闇の雑踏の中へと溶けるように消え去っていった。


(モリアーティ……。どれほど電脳の罠を仕掛けようとも、大英帝国の愛護精神とバーバラ君の素直な管理によって守られた私の肉体ロジックは、貴様のどんな毒をも受け付けん。今回も、私の勝ちだ)


「ワン!」

広報課のオフィスに戻ると、会議を終えたハナコ・ハート刑事が「ただいまー! あれ、二人ともどこに行ってたの? お留守番のご褒美に高級おやつ買ってきたわよ!」

と笑顔で出迎えた。

ホームズはバーバラと顔を見合わせ、カルテの数値を思い浮かべながら、そのおやつを美味しくいただくのだった。


ハート刑事とバーバラの素直な愛情と名探偵の健全なロジックで自身の防壁(健康)を完璧に証明した凸凹バディの絆は、大英帝国のどのシステムよりも強固に、そして美しく輝き続けるのだった。

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