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Episode 36:後編

Episode 36:後編


「知育ブロックの経済学と、4大テナント・チェックメイト(B-L-O-C-K)」

狂い出す商談と、すれ違う「おやつ(SNACK)」


「さあさあ皆さん、商談は一旦ストップして、私が今朝絞ってきた羊ミルクの特製ドーナツを食べるべ!」


ホネホネビルの会議室。バーバラが満面の笑みで差し出した大皿には、素朴だが甘い香りを放つドーナツが山盛りに積まれていた。偏屈な出店者たちも、その香りに釣られて思わず手を伸ばす。


しかし、名探偵の脳細胞は、この絶望的な状況下でも一瞬たりとも停止していなかった。


(バーバラ君、ナイスだ。君が私の『シナジー(SYNERGY)』のブロックを適当に並べ替えて作った

『おやつ(SNACK)』という文字列……。これこそが、この高慢な出店者たちを論理的に完全論破し、ホネホネビルの絶対的優位性を叩きつけるための最高のパズルピース(ブロック)となる!)


ホームズは、短い前足で床に散らばったアルファベットのプラスチックブロックを再びカチャカチャと動かし始めた。


彼が「おやつ(SNACK)」の文字列の横に、必死の思いで付け足した4つのアルファベット。


[ B - L - O - C - K ](ブロック / 閉鎖、連動)


ハート刑事の「ブロック(BLOCK)超翻訳」

「あーーーっ! ホームズ、あなたってば商談の最中にまたそんな知育ブロックで遊んで……って、あら?」


契約書の束(写真記憶)をめくっていたハート刑事が、床のブロックに目を留めた。


そこには、バーバラが作った『SNACK』の文字の真下に、ホームズが執念で並べた『BLOCK』の文字が、上下反転(逆さま)の状態で綺麗に並んでいる。


「『K』『C』『O』『L』『B』……クコルブ! 空間結合コク・ループ! ……あーーーーっ!」


ハート刑事のポニーテールが、ビル全体の構造をスキャンするように激しく揺れる!

「分かったわ、ホームズ! これは、4つのテナントをバラバラに独立させるんじゃなくて、すべての空間を一つのループで結合しろ(KOKU-LOOP)っていう、異次元の空間プロデュース命令ね!?」


(違う! 逆から読むな! 『BLOCKブロック』だと言っている! ……いや、待て。ハート君の言っている『ループ結合』……。4つの店舗(シネマ、書店、玩具、カフェ)を、ホネホネビルの1階から4階まで『ブロック(街区)』ごとに連動させ、カフェのレシートを書店の割引券にし、玩具店のキャラをシネマで上映するという、私が考えていた『循環型経済シナジー』の構造と完全に一致している……! ハート君、君のコク・ループ翻訳はSFの読みすぎだが、導き出した商業レイアウトの最適解だけは、やはり億万長者の直感か!)


バーバラの野生の勘と、ハートの「ノーリミッツ交渉術」

「な、何だと……? 『空間結合ループ』だと!?」


出店者たちが息を呑んだ。ただの犬のブロック遊びだと思っていた文字列が、ハート刑事の口から「超先進的・商業ビル経営戦略」としてすらすらと語られたからだ。

さらに、ホームズの意図を(相変わらず全く理解していない)バーバラが、羊ミルクドーナツを口いっぱいに頬張りながら、動物的な勘で追撃する。


「そうだべ! シネマでお腹を空かせた都会の人が、カフェで『おやつ(SNACK)』を食べて、そのまま玩具の『ブロック(BLOCK)』を買って遊べば、みんな羊みたいに幸せなループになるべ!」


「お、おい……この田舎娘とビーグル犬、ただ者じゃないぞ……。我々のビジネスモデルが、完全に手のひらの上で転がされている……!」


偏屈な古書収集家も、機械技師の主人の顔も、驚愕で青ざめていく。


「さあ皆さん、条件は出揃ったわよ! ヤードの正義とハート財閥の経済力、そしてホームズの頭脳ブロック戦略が詰まったこのホネホネビルで、一世一代の大勝負ノーリミッツに出る覚悟はあるかしら!?」


ハート刑事が契約書をバサリと机に叩きつける! その圧倒的な美貌と威圧感(と、背後でフンスと胸を張るホームズの凛々しさ)に気圧され、4人の出店者たちは、もはや平伏するしかなかった。


「は、はい! 喜んで出店させていただきます!!」


4大テナント、一斉チェックメイト

ガジェットを奪われ、文字ブロックと新聞紙という最悪のアナログ環境に逆戻りしたホームズだったが、バーバラの純朴なアシストと、ハート刑事の時空を歪める超翻訳(KOKU-LOOP)によって、結果としてロンドン最高峰の「循環型エンタメ商業ビル」の契約を完璧に勝ち取った。


数日後、ホネホネビルの大改装が始まり、1階から4階までが『ホームズ・ブロック(街区)』として一つの巨大なエンタメ空間へと生まれ変わる準備が進んでいた。


夕暮れ時、ビルの屋上ペントハウスのテラス席で、バーバラ特製のハーブティーを前に一息つく凸凹バディ。


遠く、夕日に染まるロンドン塔の影に、相変わらず優雅に佇む一匹の白猫の姿が、一瞬だけ見えた気がした。奴は、今回の偏屈な出店者たちを裏から操り、ホネホネビルの内部から経営を破綻させようと目論んでいたのかもしれない。


だが、完璧な『結合ループ(BLOCK)』の契約書を見て、オッドアイを寂しげに細めると、夜の霧の中へと消え去っていった。


(モリアーティ……。ガジェットがあろうとなかろうと、この名探偵の脳細胞は錆びつきはしない。文字のブロックさえあれば、貴様のいかなる経済戦争も、盤上で完全論破チェックメイトして見せるさ)


「いやー、今日の商談はシビれたわね、ホームズ! 『空間結合クコルブ』のポスター、さっそく、1万枚刷ることにしたわ!」


ハート刑事が満面の笑みでホームズの頭をくしゃくしゃと撫でる。


(……だからクコルブではないし、普通に『BLOCK』と読みたまえ、ハート君。だが……まぁ、これでビルの『水揚げ』がまた倍増するのなら、名探偵のブロック遊びも悪くないかね)


「ワン!」と、ガジェットの機械音を通さない、世界で一番知的な生の声で一鳴きする名探偵。

文明の利器を奪われてもなお、彼らの絆と正義のループは、ロンドンの街に新たなる繁栄の鐘を響かせるのだった。

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