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Episode 32:後編

Episode 32:後編


「ハイエナの買収状と、逆転のハーブ・チェックメイト(B-U-S-H)」


都会の罠と、怯える令嬢

「ハ、ハナコ姉様、大変だべ! なんか黒い服を着た怖い弁護士さんたちが来て、『このビルは書類上、すでに我々の土地になったから、明日までに全員のベッドをまとめて出て行け』って言われたべ……!」


ホネホネビルのペントハウス。田舎娘のバーバラは、受け取ったばかりの「即時立ち退き要求書」を手に、ガタガタと震えていた。


現れたのは、ロンドンの闇で暗躍する都市開発詐欺グループ『ブラック・ハイエナ』。彼らはバーバラがまだ都会の複雑な法律や「電子署名」の仕組みを理解していないのをいいことに、巧妙な偽の契約書にサインをさせてビルを丸ごと合法的に乗っ取ろうとしたのだ。


「まぁ、私のホネホネビルを地上げするなんて、いい度胸じゃない! パパに言って、この弁護士事務所ごとノーリミッツで買収してやるわ!」


ハート刑事が拳を握りしめるが、敵もさるもの、「すでに署名は完了し、データは中央登記所に送信された。ハート財閥の資金力をもってしても、法的な手続きが完了した以上、覆すのは不可能だ」と不敵に笑う。


(……フッ。人間の悪党どもがよく使う、電子データの隙間を狙った小細工か。だが、彼らは致命的なミスを犯している。このビルの実質的な最高経営責任者(CEO)が、誰であるかを忘れているな)


ホームズは首輪の通信インカムのスイッチをオンにした。彼の脳細胞は、バーバラがサインさせられた瞬間のログデータと、ビルのサーバー履歴をコンマ数秒で完全解析していた。


電脳指南犬の「野生の法廷」

『バーバラ、泣くのはまだ早い。君の耳のインカム(新型)から、私の指示通りに動くんだ。ハナコ、君は奴らが登記所に送信したという『メインデータ』の通信経路を遮断する準備をしろ』


「は、はいだべ! 犬の神様、私、どうすればいいべ!?」


バーバラはホームズの凛々しい電子音声を聞くと、瞬時に涙を拭い、都会の恐怖を忘れて「パーフェクト・リンク」のトランス状態に入った。


(ハナコ、机の上のサブ端末を見ろ。奴らの詐欺データを無効化するための暗号解除キー(キルスイッチ)の座標を打ち込んだ!)


ホームズはキーボードの上に飛び乗り、短い前足で素早く4つのアルファベットをスタンプした。


[ B - U - S - H ](ブッシュ / 茂み)


これを見たハート刑事は、対面から画面をスキャンし、ポニーテールをバサリと揺らした。


「『H』『S』『U』『B』……フサブ! フサ!! ……あーーーーっ!」


(また逆から読んだ上に、今度は漢字に変換した!! 普通に『BUSHブッシュ』と読みたまえ!!)


「分かったわ、ホームズ! これは、バーバラの田舎の『ブッシュ(茂み)』から送られてきた最高級の**『乾燥発酵ハーブの房(HSUB)』**を奴らの顔面に叩きつけて、強烈なアロマの力で脳の法律回路をバグらせろ(物理)っていう、オーガニックな戦闘命令ね!?」


『――バーバラ、違う。ハナコの妄想は無視して、画面の『BUSH(未開エリア)』のサーバー通信ポートを今すぐ閉じろ。そこに奴らのハッキング中継器が仕込まれている!』


「了解だべ! 『牛のサークル(ポート)』の柵を、今すぐ全部閉めるべ!!」


バーバラはホームズの指示通り、持ち前の素朴なタッチで端末の『BUSH』ボタンを迷わずタップした!


次の瞬間、詐欺グループの弁護士たちが持っていたタブレットの画面が「エラー:通信遮断」の真っ赤な文字で埋め尽くされた。


「な、何だと!? 中継サーバーの接続が切れた!? 登記所へのデータ送信が途中でロックされたぞ!」


(ハナコ、今だ! 奴らのデータ送信が止まったコンマ5秒の隙に、中継器を物理的に粉砕するんだ!)


ハーブ香るチェックメイト

「そこまでよ、都会のハイエナさんたち! 私のバーバラを泣かせた罪、ハート財閥の『水揚げ』の怒りとともに、たっぷりと味わいなさい!」


ハート刑事は、バーバラの故郷から届いたばかりの、麻袋に詰まった「乾燥発酵ハーブ(巨大な房)」を片手にガシッと掴むと、それをまるで棍棒のように振り回して突撃した!


「な、なんだその植物は! 法律的に我々は……うわあああ!?」


ハート刑事の容赦のない、ビルの資産価値を倍増させるほどの強烈なアッパーカット(ハーブ袋付き)が、詐欺弁護士の顎にクリーンヒット! さらに、逃げようとした実行犯の足元へ、ホームズがペントハウスの床を滑るような低空タックルを決め、体勢を崩れさせる。


仕上げは、ハート刑事の軸足が1ミリもブレない、完璧な空中三連飛び後ろ回し蹴りが、詐欺グループの面々に炸裂した!


「てりゃぁぁぁーーーーっ!!!」


ドガッ、バキッ、ドカシャーン!


悪党どもは、バーバラが「部屋の隅に敷く予定だった藁(ハーブの山)」の中へと真っ逆さまに突っ込み、その強烈なオーガニック・アロマの精神安定効果(?)によって、全員が戦意を完全に喪失してその場にひれ伏した。


直後、ヤードの応援部隊が突入し、都市開発詐欺の現行犯で全員が御用となった。


豊穣のホネホネビル

「ハナコ姉様、犬の神様! ビルが守られたべ! これで安心して、みんなで美味しいジャガイモが食べられるべ!」


バーバラは満面の笑顔で、ホームズをぎゅーっと抱きしめた。ホームズの首輪のインカムからは、『やれやれ、私の毛並みが藁まみれだ』と呆れたような、しかしどこか満足げな電子音声が漏れている。


事件は完璧に解決した。

バーバラが誤ってサインさせられた偽の電子契約は、ホームズの電脳経営指南(BUSHのポート閉鎖)によって送信前に完全無効化され、ホネホネビルの所有権は無傷でハート刑事の手に残ったのだ。


数日後、生まれ変わったホネホネビルの1階には、バーバラの故郷の資源をフルに活かした『英国オーガニック・ブッシュ・カフェ』が大々的にオープンした。


都会の喧騒に疲れたロンドンのお嬢様たちが、新鮮なハーブティーとバーバラの素朴な笑顔を求めて長蛇の列を作り、ビルの「水揚げ」は従来の5倍へと跳ね上がった。


夕暮れ時、大盛況のカフェのテラス席で、ホームズは上質な犬用ハーブビスケットを齧りながら、晴れ渡ったロンドンの空を見上げた。


(モリアーティ……。貴様がこの大金を生むビルの所有権を裏から狙おうとしたのか、あるいは、ただの有象無象のハイエナどもの仕業だったのか、それはどちらでもいい。このビルには、最高にタフなオーナーと、純朴で完璧な管理人がいる。都会のルールでこの城を奪おうなど、100年早いというものさ)


「やったわねホームズ、バーバラ! 今月のオーナー収入で、ホネホネビルの屋上に『ハート専用・ヘリポート』をノーリミッツで増設することにしたわ!」


ハート刑事が笑顔で爆弾発言を投下する。

(……頼むからヘリポートはやめてくれ、ハート君。せっかくバーバラのおかげで、このビルが平和なハーブの香りに包まれたのだから……)


「ワン!」と、インカムを外した名探偵が、少しだけ頭を抱えながら生の声で一鳴き。

都会のオアシスへと生まれ変わったホネホネビルに、凸凹バディと素朴な令嬢の、賑やかでパーフェクトな笑い声が、今日も優しく響き渡るのだった。

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