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Episode 27:後編

Episode 27:後編


「ゲーム・オーバーの代償と、AIが生んだ正義のバグ(D-O-G-S)」


勘違いの突入、現実の銃撃

「ゲーム開始スタート!」


ハート刑事の掛け声とともに、パトカーのドアが勢いよく開く。彼女はスマホの地図アプリをコントローラーのように掲げ、ボートハウスへと雪崩れ込んだ。


犯人たちは唖然とした。警官が来るなら、通常は威圧的か、あるいは慎重な足取りで来るはずだ。だがハートは、まるで**「スコアアタック」**でもしているかのような、無邪気で、かつ一切の躊躇がない猛攻を見せた。


「そこのNPC(犯人)たち! 動きが遅いわよ! ちゃんと避けないとスコアが減るわよ!」


「な、何を言っている……!? 殺せ! 撃ち殺せ!」


本物の銃弾が、ハートの頭上をかすめて壁に突き刺さる。しかし、彼女はそれを「弾幕系のゲーム演出」だと思い込み、華麗なアクロバットで見事にかわしていく。


(……おい! それは『ゲーム演出』ではなく『現実の殺意』だぞ! ハート君、少しは遮蔽物に隠れろ!)


ホームズは床を駆け抜け、排水溝から回収しておいた犯人たちの「ボートの燃料パイプ」を、前足で器用に噛み切った。逃走経路を遮断する、完璧な破壊工作である。


吠える誤変換、再び

ボートハウスの奥、犯人のリーダーが逃げ道を探して叫んだ。

「くそっ! なぜバレたんだ! 誰だ、警察にバラした奴は!」

リーダーの怒鳴り声に反応し、ハートのスマホに入っていたAIアプリが再び作動する。


ホームズが「逃がすか!」とばかりに、低く唸った。


【 誤変換:】


「逃がすか!」→「ニガ・スカ・ナイ・デ・ソコ・ダ」


スマホの画面が点滅し、大音量でスピーカーから謎の音声が流れる。


「――『ニガ・スカ・ナイ・デ・ソコ・ダ』――」


犯人たちはパニックに陥った。


「なんだ!? 警察からの遠隔操作か!? 『そこに隠れているのがバレている』だと!?」


(……ふむ。またしても私の唸り声とAIのバグが、犯人たちの疑心暗鬼を増幅させているな。実に都合がいい)


「そうよ! 隠れても無駄よ! 私のスマホの『GPSサーチ機能』で、あなたの心拍数まで丸分かりなんだから!」


ハート刑事はハッタリをかます。ゲーム設定だと思い込んでいる彼女の演技は、プロの捜査官以上に説得力があった。


「ひぃっ! 心拍数まで!? ……畜生、もう終わりだ!」


犯人たちは戦意を喪失し、次々とその場にひれ伏した。


バグが導いた平和な結末

事件は収束した。

駆けつけたヤードの応援部隊が犯人を拘束し、ボートハウスから押収されたのは、闇市場へと流れるはずだった大量の機密資料だった。

オフィスに戻ったハート刑事は、満足げにスマホを眺めていた。


「いやぁ、今回の『ロンドン・ミステリー脱出ゲーム』、エンディングがすごくリアルだったわね! 最後のボス戦(犯人逮捕)の演出なんて、最高だったわ!」


(……あれは現実だ。君の命がけの突入と、私の咆哮によるAIバグがなければ、今頃私たちはテムズ川の底だったぞ)


ホームズは溜息をつき、お気に入りのドッグベッドへ移動する。

だが、そんなホームズの様子を見て、ハートはクスリと笑った。


「そういえばホームズ、さっきのアプリのログ見てたんだけど、あなたの咆哮が最後になんて変換されたか知ってる?」


ハートはスマホの画面をホームズに向けた。そこには、こう書かれていた。


【 最終変換ログ:『アンシン・シタ・ネ・アイボウ』 】


(安心したね、相棒)


(……ふん。機械というやつは、たまに人間よりも気の利いた冗談を吐くものだな)


ホームズは小さく鼻を鳴らすと、前足を鼻にのせて丸まった。


「ワン(おやすみ)」


という短い吠え声とともに、ヤードの広報課には、今日もまた奇妙で平和な夜が訪れた。

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