Episode 2-後編
Episode 2-後編
ホームズは紙切れを床に置き、その上に前足で“ある方向”を指した。
(この紙についた匂い……
配達員の匂いではない。
もっと強い、甘ったるい香り……これは……包装紙の香料だ)
ホームズは店の裏口へ走った。
ハートも慌てて追いかける。裏口には──
レモン香料の粉が落ちていた。
「これ……ドーナツの粉?」
(いや、違う。包装紙の香料だ。
犯人は“店の裏口”を通った)
ホームズはさらに匂いを追い、路地裏へ走った。
「ちょ、ちょっと待ってホームズ!あなた速いってば!」
(私は猟犬だ。これくらい当然だ)
路地裏の奥に、古い倉庫があった。
その扉の前に──
新聞配達員の帽子が落ちていた。
倉庫の中の真相、ハートは拳銃を構えた。
「ホームズ、後ろにいて!」
(いや、私は前に出るべきだろう……だが犬の体では無茶はできん)
ホームズは素直に後ろに下がった。
ハートはゆっくり扉を開けた。
中は薄暗く、古い木箱が積まれている。
「……誰かいる?」返事はない。
ホームズは鼻を鳴らし、匂いを分析した。
(……いる。この奥に……人間の匂い……そして……)
突然、倉庫の奥から声がした。
「た、助けて……!」
ハートが駆け寄ると、新聞配達員がロープで縛られていた。
「大丈夫!?誰にやられたの!?」
配達員は震えながら言った。
「白い……白い猫が……!」
ハート
「……猫?」
ホームズ
(……やはり……!)
配達員は続けた。
「猫が……俺の自転車の前に飛び出して……
驚いて止まったら……後ろから何者かに殴られて……
気づいたらここに……!」
ハートは困惑した。
「猫が……事件の黒幕……?」
ホームズは静かに目を細めた。
(ハート君……猫はただの“誘導役”だ。
背後にいるのは……もっと恐ろしい存在だ)
倉庫の外で、風が吹いた。
その風に乗って、あの匂いがした。
甘く、冷たく、
そして──
知性を感じさせる匂い。
ホームズは背筋を震わせた。
(……モリアーティ……
やはり生きていたか……)
配達員は無事救出され、ハートは胸を撫で下ろした。
「ホームズ……あなたのおかげで助かったわ」
ホームズはそっぽを向いた。
(当然だ。私は名探偵だ)
ハートは笑って、ホームズの頭を優しく撫でた。
「でも……あなた、ただの犬じゃないよね。
本当に……不思議な子」ホームズは夜空を見上げた。
倉庫の屋根の上に──
白猫がいた。
その瞳は、まるで人間のように冷たく、
知性を宿していた。
(……奴だ。モリアーティ……!)
白猫は静かに尻尾を揺らし、闇の中へ消えた。
ハートは気づかずに言った。
「ホームズ、帰ろっか。あなたとなら……どんな事件も解決できる気がする」
ホームズは歩き出した。
(ああ、ハート君。
我々の捜索は……まだ始まったばかりだ)




