Episode 66:中編
Episode 66:中編
「指輪の座標と戦慄(W-I-N-D-Y)――引き裂かれたデータの欠片」
解析される指輪のコード
「また、あの引き裂かれた指輪の欠片だ……。でも今度のやつは、ただの金属じゃない。中に超微細なデータグリッドが数ミリの狂いもなく埋め込まれてる!」
テラスハウスへ一時帰還したホームズとハート刑事。休日モードのまま急遽合流したバーバラが、専用のデータノートを展開し、床の上でトントンとステップを踏み鳴らしながら叫んだ。
風の塔の最上階に残されていた指輪の欠片。それは、リンド姉妹の爆買い騒動で暗黒サーバーへアクセスを試みた電脳詐欺グループの指輪と、全く同じプラチナの周波数を持っていた。
「なんですって!? 白猫はあの風の渦の中で、この指輪の持ち主のデータを私たちにレシーブさせたっていうの?」
ハート刑事はサマーニットの袖をまくり、プロフェッショナルな瞳を光らせた。
(ふむ。白猫は効率主義のAIの如く、風のブレードで指輪を破壊し、そのコアデータだけをあえて我が灰色の脳細胞へと開示した。これは単なる挑戦状ではない。この指輪の持ち主を次の盤面の生贄にするという、冷酷なプロットだ)
「ワン!」
ホームズは前足で、データノートに表示された不自然な左右非対称の座標を鋭く指し示した。
ターゲットは「ロンドンの支配者」
「大先生、読めたべ! この暗号化された気流のデータ、ロンドンの中心部に建つ『大英帝国中央銀行』の総裁が身につけている、最高級のラグジュアリー・セキュリティリングのID(認識コード)だべ!」
バーバラの指先が電光石火のステップを刻み、画面に総裁の顔写真と、今日のタイムラインが浮かび上がる。
「総裁は今、ちょうど銀行の地下金庫の点検に向かっているべ! 完全な密室のグリッドだべ!」
(なるほど。白猫は風の塔のデータを逆流させ、中央銀行の巨大な換気空調システム(エア・グリッド)をハッキングした。風を『目に見えない鍵』に変えて地下金庫の気圧を11ミリ単位で狂わせ、総裁を窒息の危機に陥れながら、大英帝国のすべての電子キャッシュをノーリミッツに強奪しようというプロトコルだな!)
「大変よ! すぐに向かわないと、総裁の命もロンドンの経済も、白猫の風で粉々に切り裂かれちゃうわ!」
ハート刑事の脳内測定器が熱量を上げ、ヤードの正義のフレームが完全起動する。
「ポチ君、バーバラちゃん! 銀行のメインシステムが完全に暗黒のチェックメイトに陥るまで、残されたタイムリミットはあと**【110秒間】**よ!」
地下金庫へのカウントダウン
「了解だべ、ハナコ姉様! 銀行の空調グリッドを強制デトックス(正常化)するためのアクセスルートを逆算するべ!」
バーバラがノートを抱えて叫ぶ。ハナコ刑事は休日仕様のデニムでありながら、ノーリミッツなフットワークでテラスハウスのドアを蹴破るように飛び出した。
(その通りだ、ハート君! 大都会の富のシンメトリーを守り、白い悪意をニュートラルへレシーブするのだ!)
小さなバイザーを被り直したホームズも、ハート刑事の腕の中から「ワン!」と鋭く吼え、ロンドンの街を狂わせる「人工の暴風」の核心へと、迷いもなく突き進む。
1800年代から続く大英帝国の心臓部で、一人と一匹、最も華やかでロジカルな結末へ向けて、タイムリミットの針が静かに回り出す!




