Episode 62:中編
Episode 62:中編
「非対称の姉妹(B-O-U-R-N-E-M-O-U-T-H)――シルクのシーツと、11kmの砂浜トーク」
高級日傘と、ラグジュアリー
「ちょっとキャサリン! ロンドンの中心部にタワーマンションをキャッシュで買うなんて、いくらなんでもノーリミッツに突飛すぎるべ!」
バーバラが黄金色の砂を少し蹴り上げながら、素直な瞳を丸くして詰め寄った。
キャサリンちゃんは、ルイ・ヴィトンのサングラスを人差し指で少し下げ、高級リゾートの潮風を浴びながらふんわりと微笑んだ。
「お姉ちゃん、突飛じゃないべ。リンド・ファームでの『対称性』の英才教育は感謝してるけど、私はそのロジックを、ロンドンの最先端のファッションと不動産投資に活かしたんだべ。羊の数を数える代わりに、市場の株価チャートを数えていただけだべ!」
(ふむ。なるほど、ただの浪費家ではないな。バーバラ君が牧場の動線からタップダンスのリズムを見出したように、妹のキャサリン君は牧場の管理ロジックから大都会の経済の波を読み解いたわけか。形は違えど、やはりリンド・ファームの血筋、恐るべき素直な知性だ)
ホームズはパラソルの影で冷たい水をペロリと舐め、砂浜に残されたリンド姉妹の足跡を見つめた。歩幅も、砂への沈み込み方も、驚くほど非対称だが、どこか不思議な調和を保っている。
ハート刑事のノーリミッツな不動産チェック
「すごーい! キャサリン、ロンドンの一等地に自分の拠点を構えるなんて、ヤードのキャリア組もビックリの行動力ね!」
ハート刑事は、キャサリンのスマホ画面を覗き込んだ。
「ねえねえ、このマンション、私がいつもパトロールしてるサウス・ケンジントンのすぐ近くじゃない! セキュリティも万全だし、これなら毎日ポチ君を連れて遊びに行けるわ!」
「そうだべ、ハナコ姉様! 最上階のテラスからは、ロンドンの街並みが11km先まで完璧なシンメトリーで見渡せるラグジュアリーな設計だべ。でも……」
キャサリンは少しだけ寂しそうな目をバーバラに向けた。
「お姉ちゃん、趣味が全然違うからって、怒らないでほしいべ。私は都会のシルクのシーツが好きだけど、お姉ちゃんのいるホネホネビルの『藁のベッドの温もり』も、本当は嫌いじゃないんだべ……」
ビーチに刻まれる調和
「キャサリン……怒ってないべ。ただ、あまりに急でびっくりしただけだべ。ロンドンに住むなら、私のパブにも毎日美味しいカクテルを飲みに来てほしいべ!」
バーバラが優しく微笑むと、キャサリンも嬉しそうに姉の手を握った。
(やれやれ、事件のない穏やかな夏の一幕か。こうして大自然のファームから飛び出した二つの異なる個性が、ロンドンという一つのキャンバスで完璧に調和していくのを見るのも、名探偵の脳細胞にとっては至高の癒やしだな)
「ワン!」とホームズは心地よさそうに吼え、黄金色の砂浜をトコトコと歩き出した。
ボーンマスの美しい海を背景に、趣味は違えど絆はブレないリンド姉妹のロンドン・新生活パズル。その感動のフィナーレへと、波のリズムが優しく導いていく――!




