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Episode 57:中編

Episode 57:中編


「激流の暗号(S-W-I-S-S)――ライヘンバッハの霧と、白猫のタイムライン」

轟音のライヘンバッハ、そして


「白猫の招待状」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!!

アルプスの山々に響き渡る、圧倒的な水の咆哮。スイス・マイリンゲンにある因縁の地「ライヘンバッハの滝」の展望デッキに、ハナコ・ハート刑事、バーバラ、そしてすっかり船酔いから復活したポケット・ビーグルのホームズは立っていた。


滝から吹き上がる激しい水飛沫ミストが、ハート刑事のトレンチコートを濡らす。


「ここが、あの有名な滝……。スイス警察との合同広報イベントの会場パラディウムに指定されるなんて、出来すぎているわ。白猫、完全に私たちを挑発しているのね!」


ハート刑事はルブタン・スニーカーの真っ赤なソールをカチリと響かせ、特殊電波測定器の出力を最大に上げた。

条約に基づき、ロンドンヤードとスイス警察が共有するはずの「国際金融犯罪・テロ対策データベース」の暗号鍵が、まさにこの滝の周辺から発信される強力なジャミング電波によって、同期エラー(スタンドダウン)を起こし始めていたのだ。


(ふむ。この轟音と大量の水飛沫によるマイナスイオン(生体電流)の乱れを計算に入れ、データの中継ログを物理的に『水隠ハイド』しているな。白猫め、180年以上前のあの宿命の決闘を、現代の電脳戦としてこのライヘンバッハで再現するつもりか)


「ワン! ワンワンッ!」

ホームズは激しく渦巻く滝壺の崖際へと迷いなく走り、水飛沫で濡れた岩肌の一点に向かって鋭く吼えた。


バーバラの「激流ステップ解説ビート・トレース

「ハナコ姉様、大先生! 私、この滝の落ちる音と、スイス警察のサーバーのセキュリティ・ログを聴き比べていて気づいたべ!」


踊りの達人であるバーバラが、激しい滝の音に合わせて、足元でカチカチと完璧なリズムのステップを踏み始めた。


「滝の水が岩にぶつかる音の強弱、これ、ただの自然の音じゃないべ! 白猫のAIが、2022年の警察協力条約の条文データを『水滴の落下テンポ』に偽装コンバートして、スイス警察の広報ネットワークへ毎秒【18ギガバイト】のゴミデータ(ノイズ)を送り込んでるべ! 滝のビートが完璧にシンクロする、次の**【3分11秒間】**だけ、ノイズの隙間ができて、崖の裏の偽装基地ダミー・ノードの座標が剥き出しになるべ!」


(素晴らしいぞ、バーバラ君! 君のダンサーとしての完璧なリズムグリッドが、激流に隠された白猫のかくらんを完全に解読した! 『S-W-I-S-S』のシステムが示すべき真の接続ルートは、その3分11秒の静寂の中にある!)


「ブロックのパズルが示していたのは、激流の裏側に隠された、白猫の『非論理的なバグ』だったのね!」


ハート刑事は、バーバラが指差した崖の裏の空洞へと向き直った。


「バーバラちゃん、3分11秒のカウント開始! ポチ君が船酔いに耐えて運んできた両国の絆(条約)、ノーリミッツに繋ぎ直してみせるわ!」


「いくべ、ハナコ姉様! 3、2、1……スタートだべ!」


滝の裏の決戦(後編へ続く)

「てりゃぁぁぁーーーーっ!!!」

ハート刑事の閃光のようなヤード流・飛び回し蹴りが、水飛沫を切り裂き、崖の岩肌にカモフラージュされていた電子ハッチを物理的にブチ破った!

内部には、スイスとイギリスの合同広報データを強奪し、国際指名手配犯のリストを抹消しようと暗躍する白猫配下の「電脳工作員」たちが、モニターの光の中で驚愕の表情を浮かべていた。


しかし、カウントダウンのタイマーは、データ完全消滅まであとわずか数秒を示している。滝の轟音が鳴り響く極限の空間で、名探偵ホームズと白猫の因縁のチェックメイトが、今まさに幕を開ける!

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