Episode 49:中編
Episode 49:中編
「剃られた証明と、地下鉄の迷宮(S-K-I-N)」
剃られた場所の「刻印」
「スキンヘッドはカムフラージュ? ……いや、待て。あの目出し帽の犯人グループは、確かに全員がツルツルに頭を剃り上げていた。あれ以上の共通項はないだろう?」
ケント刑事の問いに、ホームズは呆れたように首を振る。
(ケント君、君は見た目にとらわれすぎている。彼らがなぜ頭を剃ったのか。その理由は『隠す』ためではない。『剃らなければならない理由』があったからだ)
ホームズは床のブロックの「S」と「K」を入れ替えた。
[ K - I - N - S ](KINS / 親族・血縁)
(彼らは全員、かつてロンドンの地下鉄建設に関わっていた貧困層の作業員グループだ。全員の頭頂部には、かつての労働現場で受けた『識別用の焼き印(刺青)』がある。彼らはそれを隠すために、グループ全員でスキンヘッドを強いられたんだ)
ハート刑事がその推理をメモ帳に書き殴る。彼女のボケ回路はまだ正常だが、ホームズの言葉を聞くたびに、脳内の回路が「かつてのカオス」を求めてピクピクと痙攣している。
「……つまり、この強奪は単なる金目当てじゃないわ。自分たちを使い捨てた鉄道会社への復讐、あるいは……彼らが建設中に見つけた『何か』を運ぶための、儀式的な強奪ね!」
ハート刑事の「スキン(SKIN)超翻訳」
ハート刑事は、ホームズが示した「KIN(血縁)」という文字列を、広報室から持ち出した地下鉄の配線図に重ねた。
「『N』『I』『K』『S』……ニクス! ニックネーム! ……あーーーーっ!」
(……いや、待て。今回はなぜか正しい方向に進化している……!?)
「分かったわ、ホームズ! これは、犯人たちが乗った電車の車両番号(N)と、通過した駅のイニシャル(I-K-S)を繋ぎ合わせると、地下鉄の古い設計図には載っていない**『幻の隠しホーム(NIK-S)』**の場所が浮かび上がるっていう、鉄道ミステリー・コマンドね!?」
(素晴らしい! ハート君、今の君は最高だ! ニックネーム(愛称)ではなく『NIK(隠し場所のコード)』と読み取ったか! ……そう、彼らが乗り捨てた車両は、ただの囮だ。彼らはあえてバラバラの車両に乗ることで、ロンドン中の全地下鉄を『一本の巨大な通信路』として使い、最後はあの『開かずのホーム』で合流するつもりだ!)
ロンドン地下鉄・完全包囲網
ホームズとケント刑事、そしてハート刑事は、一気に地下鉄の深部へと潜った。
かつて建設中に閉鎖された「幻の第11番ホーム」。そこには、犯人たちが持ち込んだ現金輸送車の残骸と、スキンヘッドの男たちが集まっていた。彼らの頭頂部には、確かに古い鉄道会社の焼き印が刻まれている。
彼らは単に現金を奪ったのではない。現金輸送車の中に、地下鉄の古い金庫室の「解錠コード」を記した石版が積まれていたのだ。
(白猫の影がここにもある……。鉄道会社を破綻させ、ロンドンの流通を麻痺させるのが奴の狙いだ!)
「犯人グループ、動くわよ! 逃げ道を塞いで、ノーリミッツに突撃よ!」
ハート刑事のポニーテールが、地下鉄の冷たい風を受けて激しく揺れる。
しかし、彼らがホームに踏み込んだ瞬間、犯人たちは不敵に笑った。
「遅い。もう、電車は動き出しているぞ」
彼らが仕掛けたのは現金強奪だけではない。
無人の地下鉄車両を暴走させ、ロンドン市内の主要ターミナル駅を壊滅させるための、巨大な「動く爆弾」のレールの上だった。




