Episode 49:前編
Episode 49:前編
「赤毛ならぬスキンヘッドの狂騒曲(S-K-I-N)」
消失した現金輸送車、ゼロの痕跡
ロンドンの街に、かつての「赤毛組合」を彷彿とさせるような、あまりに奇妙で、そしてあまりに鮮やかな現金輸送車強奪事件が発生した。
犯行の手口はこうだ。
まず、闇サイトを通じて「即日払い、スキンヘッド限定」という奇妙な条件の運転手募集広告が出された。
集まったのは、互いに素性を知らぬスキンヘッドの男たち。
彼らは指示通りに現金輸送車を強奪したが、逃走の最後はあまりに計画的だった。
奪った車両は駅の脇に乗り捨てられ、犯人たちは車両を乗り捨てると同時に、ちょうどホームに入ってきた複数の電車に分乗。
電光石火の早業で、四方八方へとバラバラに消え去ったのだ。
監視カメラに残されたのは、目出し帽を被った無個性な影のみ。
ヤードの捜査本部は、指紋も、DNAも、逃走経路の痕跡すら残さないこの「完全犯罪」に頭を抱えていた。
「完全に打つ手無しだ……」
ヤード内には、重苦しい敗北の空気が漂っていた。
広報室の記憶と、来訪者
その頃、ハート刑事は、ヤードの広報担当として山積みのプレスリリースと戦っていた。
「スキンヘッド限定の募集広告……。そういえば、先週の朝刊の求人欄の片隅に、そんな奇妙な記述を見た気がするわ」
彼女が記憶を辿っていると、オフィスのドアがノックされた。
入ってきたのは、いつも冴えない顔をしてるケント刑事だ。彼は手元に「高級ビーフジャーキー」の袋を大事そうに抱えていた。
「ハートさん、お疲れ様です……。本部の連中も、上の人間も、この事件には匙を投げていてね。……でも、噂の『あの方』にだけは、一目見ておいてもらえないかなと思って」
ケント刑事は、ジャーキーを餌に、テラスハウスで紅茶を飲んでいた名探偵ホームズを訪ねてきたのだ。
名探偵の眼光と、ジャーキーの香り
ホームズはケント刑事から差し出された高級ビーフジャーキーを鼻先で軽く嗅ぎ、フンと鼻を鳴らした。
(やれやれ。私の探偵料がジャーキー一袋とは。だが、まあいい。ハート君が広報の仕事で忙殺されている今、この退屈なロンドンに少しばかりの刺激を足すのも悪くない)
ホームズはリビングの床に、事件の情報を断片的に並べた。
「スキンヘッド限定」という、個性を消すためのフィルター。
「駅の側で車両を乗り捨てる」という、群衆に紛れるための動線。
そして、犯人が電車に乗る際、必ず**「切符を自動券売機ではなく、窓口で現金購入していた」**という、監視カメラに写り込まなかったわずかな目撃証言の断片。
ホームズは、前足でカチャカチャと文字を並べる。
[ S - K - I - N ]
「おい、ケント。この『スキンヘッド』という条件が、実はただのカムフラージュに過ぎないとしたら? 犯人たちが集められたのは、頭を剃るためじゃない。……ある『共通の印』を隠すためだ。」
ホームズの瞳が、名探偵のそれへと鋭く変わる。
果たして、スキンヘッドの募集広告の裏に隠された、真の「スキンへット連合」の正体とは?
ホームズの推理は、誰もが予想しなかったロンドンの地下鉄道網の「秘密」へと、まっすぐに突き進んでいく。




