Episode 48:後編
Episode 48:後編
「大脱獄のルブタン・キックと、凸凹バディの完全復活(T-R-A-I)」
荒野の電撃脱獄作戦
「全犬房のロックが強制解除された!? 何が起きているんだ!」
警報が鳴り響く訓練所。
ホームズ率いる「K-9脱獄軍団」は、教官たちの網を潜り抜け、鉄柵をドミノ倒しのように破壊して、一斉にロンドンの街へと向かって大疾走を始めた。
その先頭を走るのは、ハート刑事の忘れていったヤードの防犯無線を首に巻いたポケット・ビーグル、ホームズである。
一方その頃、ヤードの地下駐車場。
視察から戻ったハート刑事は、車のシートに座ったまま、激しい脳の変革に苦しんでいた。
「くっ……私は、完璧な刑事……。100%正しい論理で、すべての為替レートと捜査資料を処理しなければ……。
でも、なぜ……あのビーグルの顔を見ると、胸の奥から**『巨大なタコ焼き(TAKO)』とか『イラクサの味噌汁』**とかいう、破壊的な単語が溢れ出てくるの……っ!?」
その時、車のフロントガラスの前に、一匹の白猫が再び舞い降りた。
奴の首元には、ハート刑事の脳のバイパスを完全に破壊し、彼女を「永久に感情のないロボット」に変えるための、最終電磁パルス(EMP)爆弾が握られていた。
「フッ……」
白猫がスイッチを噛もうとした、そのコンマ1秒前!
バババババババババッ!!!
「ワン、ワンワンッ!!(そこまでだ、モリアーティ!)」
駐車場のシャッターを食い破り、ホームズを背に乗せた数十頭のシェパード軍団が、怒涛の勢いで嵐のように乱入してきた!
ハート刑事の「大暴走(TRAI)超翻訳」完全覚醒!
「ホームズ……!? なぜ、ここに……規律を破って……」
車から這い出たハート刑事の前に、ホームズは着地した。そして、最後の力を振り絞り、口に咥えていた4つのブロックを、彼女の足元へ力強く叩きつけた!
[ T - R - A - I ]
激しい火花を散らすモリアーティの電磁パルス爆弾。
そして、その光の中でブロックを見たハート刑事の網膜(写真記憶)が、ついに1週間の沈黙を破って、時空の因果律を完全に木っ端微塵にするあの「神の領域」へと強制ジャンプした!
「『I』『A』『R』『T』……イアルト! 怒りのタルト(イカリ・タルト)!! ……あーーーーっ!!!」
(これだぁぁぁーーー!!! 戻ってきた!! 『TRAIN』を逆から読んで『怒りのタルト』!! これこそが私の最高で最悪の相棒、ハナコ・ハート刑事だ!!!)
ポニーテールが時空をブチ破るような勢いで激しく回転を始める!
「分かったわ、ホームズ! これは、あの白猫が持っている爆弾を**『超高熱で焼き上がった怒りのタルト(IART)』**に見立てて、私のルブタンのヒールで、ロンドン塔のてっぺんまでノーリミッツに蹴り上げろっていう、バディ復活・フルコンボコマンドね!?」
(違う! タルトではない! ……いや、待て。ハート君の言っている『ロンドン塔への軌道』……。あのパルス爆弾の指向性は、ロンドン塔の避雷針に向かって放てば、すべての電磁波が地中に安全に逃げる……! ハート君、君のパティシエ暴走翻訳は相変わらず狂気の沙汰だが、破壊すべき『臨界点』の選定だけは、やはり世界一の名探偵(私)と1ミリの狂いもない!)
凸凹バディ、完全復活のチェックメイト
「完璧なエリートなんて私には退屈よ! 私たちのカオスな正義、思い知りなさい! 怒りのタルト・フィナーレ!!」
ハート刑事は、頭の包帯(ボケ回路の封印)を自ら引きちぎると、ヤードの天井を蹴り上げて超高高度の跳躍を披露した。
彼女の足元、ルブタンのヒールには、本来の「1000%のボケのエネルギー」が青白く爆発している。
タイマーは残り「00:01」――。
(今だ、ハート君! 私たちの『カオスな論理』を、ロンドンの空に見せつけてやれ!)
「ワン!」
ホームズがブロックの『I』を頭突きで弾き、白猫の足元へ滑り込ませて打撃座標を固定!
「てりゃぁぁぁーーーーっ!!!」
ハート刑事の、軸足が1ミリもブレない完璧な空中三連ひねり後ろ回し蹴りが、モリアーティの電磁パルス爆弾を直撃!
ズガァァァァン!!!
凄まじい脚力の衝撃により、爆弾は白猫ごとヤードの天井のガラスを突き破り、ロンドン塔の上空へと放り出された。
そのコンマ5秒後、夜空に「ドガァァァン!」と美しい(タルトのような)オレンジ色の火花が散り、電磁波はすべて避雷針へと吸い込まれて消滅した。
白猫は「ニャアァァー!」と悲鳴を上げながら、またしても夜の闇へと吹き飛んでいった。
おかえり、私の最高の相棒
静寂が戻った駐車場で、は
バラバラと落ちるガラスの破片の中、ハート刑事が美しく着地する。
背後には、彼女のキックに感動して「ワンワン!」と尻尾を振る、警察犬訓練所の脱獄犬たちの大歓声。
「ふぅ……。やっぱり、ホームズのめちゃくちゃな命令をキックに変えてる時が、一番生きてる心地がするわ!」
ハート刑事が、いつもの破天荒で最高に眩しい笑顔で、ホームズをガシッと力強く抱き上げた。
(……やれやれ。完璧なエリート刑事のままでいてくれた方が、ヤードの書類仕事は早く片付いたのだろうがね。……だが、やはり君のその壊滅的なボケがなければ、名探偵の私は退屈すぎて死んでしまうよ)
ホームズは、ハート刑事のトレンチコートの袖に顔をうずめ、どこか安心したようにフッと犬らしく微笑んだ。
「さあホームズ、訓練所の皆さんも一緒に、ホネホネビルの『ホームズ・オフィス』で、バーバラ特製のミルクドーナツをノーリミッツに食べ尽くしましょ!」
(あぁ、賛成だ。ビルの『水揚げ』なら、今の私の経営戦略でいくらでも稼ぎ出せるからね……)
「ワン!」と、ロンドンの夜空に、世界一知的な生の声が響き渡る。
規律の檻をブチ破り、本来の「最強のカオス」を取り戻した凸凹バディの絆は、どんな正論よりも強く、これからの未来をどこまでも爆走していくのだった。




