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どうやら僕はあいつの推しらしい~幼なじみにも無視される底辺ランク冒険者が自称異世界転生者にバチクソ強化された話~  作者: raku-Q


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2/11

第1回の裏 「異世界転移したらしい」



 目の前に、私の『最推し』がいる。

 イラストの絵じゃない。

 現実の人間だ。


 けど、特徴は完全に一致。

 私の好きなところもそっくり同じだ。

 忠実に実写化したら、こんな感じだろうって姿。


 何故こうなっているか。

 どうやら、私は『異世界転生』というものをしたらしい。

 してしまったらしいのだ。


 思い返せば……。

 休日の夜、明日の会社嫌だなと思いながら飲んでいた。

 水やお茶じゃない。

 安物のチューハイ。


 つまみはコンビニで買ったポテチ。


「いい年してやめろ」


「太るからよしな」


「もっとちゃんとしたツマミ食べたら?」


 などと。

 家族や友人から言われてたけど……。

 こればっかりはやめられませんな。


 ええ。

 やめられませんでした。


 安物のチューハイ飲みつつ、ポテトを食べる。

 これはもう『少子化対策』以上の快楽だぁ。


 ……したことないけど。

 ……30近いなのに。


 ふんだ、でもいい

 女の初めては男よりも遥かに価値があるのだ。


 ちゅうか価値しかない。

 ないよね?


 買い置きをやりつつ、ソシャゲに興じていたのだが。

 途中で切れた。

 買い置きとチョボチョボやってたしな。


 正直飲み足りなかった。

 で。

 仕方なく、近くのコンビニ目指して家を出た。

 財布とケータイをお供に。

 少なくともお金なければ変えないし。

 当たり前だけど……。


 さて。

 家を出て、2~3歩歩いた時だった。

 いきなり、床がグラついた。


 地震?

 こりゃでかいぞ?!

 と、思ってたら。


 ガン!


 そんな感じの衝撃。

 気づいたら、真っ暗闇の中。


 ただ足元に、頭から血を流したアラサー女の死体。

 真っ暗な空間で、それだけがハッキリ見えていた。


「あ、死んだわコレ」


 と。

 他人事みたいに思った。


 自分の死体。

 マヌケ面(づら)だなと、ぐらいの感想しか浮かばない。


 こうして死体が見えているということは――

 自分は死んで魂だけの状態?

 でも、ジャージは着てるし。

 財布もケータイもポケットにあった。


 じゃ、この死体は誰だ。


 そんなことを考えていると……。

 急に周りが明るくなって、青空が見えた。


 街の中。

 いや、多分日本でもない。


 見たこともない、古い遺跡みたいもの。

 その中に私は転がっていた。


 起き上がると、妙に体が軽い。

 まるで学生時代……10代の頃に戻ったみたいだ。


 それは嬉しいのだけど。

 まわりは得体の知れないものばかりだ。


 なじみのない草木に、虫。

 小さな木に、カブトムシみたいなのがいた。

 サイズは小さくってカナブンくらいだ。


「夢?」


 それにしてはリアルだ。

 リアルすぎだろ。


 日の光も、草木の匂いも、風も。

 全てを感じる。


 途方に暮れながらウロウロしていると――


「ぎゃあああああ!?」


 いきなり出てきた緑の小鬼。

 ファンタジーでいうゴブリン、みたいな?

 そいつらに追いかけ回された。


 必死で逃げる。

 心臓が潰れそうになっても走る。


 身軽になった体のおかげか、すぐに追いつかれなかった。

 でも、ぜんぜん引き離せない。


 やばい。

 捕まったら絶対殺される。

 さもなきゃ『婦女暴行』だ。


 それは嫌だ。

 絶対に嫌だ。


 必死で逃げている、その途中で、


「え?!」


 前方に、鎧姿の男の子が歩いてきた。


 そして……。

 結論だけを言ってしまえば、私は彼に助けられた。


 落ちついてから、改めて見た男の子の顔。

 その姿。


「見習い剣士、セッタ」


 思わず、そうつぶやいた。


 ……。

 『イージス・クロニクル』。

 通称・イジクロ。

 ずうっとやってきたソシャゲのタイトルだ。


 いわゆるタワーディフェンス型のゲーム。

 攻めてくる敵を自軍のキャラで迎撃するというもの。

 わりと単純だけど、面白くってやりこみがいがあった。


 強いキャラは、ソシャゲのお決まりでガチャで入手するわけだが……。

 無課金でもそれなりに遊べるし、したらしたでまた面白い。

 まあ、良ゲームに入ると思う。


 セッタは、イジクロの中で最推しのキャラだった。


 ただし。

 ランクは最底辺のN。

 序盤も序盤、あるいは低ランクしか出撃できない特殊クエスト。

 それくらいしか出番がない。


 男キャラでデザインも地味。

 当然別バージョンが上のランクで出たりしない。

 他のキャラ――

 特に女性キャラはけっこうあるのにね。


 ま、それはしょーがない。

 プレイする側からすれば、華があるほうがもいいからね。

 これはわかる。

 理解できる。


 けど。

 そんなのは関係なしに、私はセッタが好きだった。


 まだ未熟な少年キャラ。

 地味目のデザイン。

 全部が好きだったのだ。


 私は、ソシャゲとかはストーリーとかあまり見ないほうなのだが。

 イジクロだけは、けっこう熱心にチェックした。

 ストーリーの中には、Nランクのキャラが登場することもあるからだ。


 その中で、ちょくちょくセッタが出てきた。

 出番自体は少ないけど。

 一生懸命なところが出てて、好きだった。


 でも。

 わずかな出番や台詞から察せられること。

 雑魚、あるいモブ扱い。

 能力的にしょうがないといえば、しょうがないのだと思う。


 だけど。

 そんな中でも、ただひたすらに……。

 哀しいとか苦しいとか。

 つらいものを振り払うみたいに。


 そんな風に生きているのが、短い中でわかった。


 萌えポイント。

 そこんところが、好きな理由。


 だけど……。

 最推しとして愛でる中で、変な罪悪感もあった。


 ただのゲームキャラ。

 実在しない幻想の男の子。


 そんな彼のつらさや寂しさを想って、勝手に萌える。

 つまりは、消費(●●)する。

 別に悪いことじゃないはずだけど……。


 同時に。

 萌えるとかメロいとか、そんなものじゃなくって。


 物語の端で一生懸命生きているセッタ。

 その姿を見るたび、胸が切なくなったのは……。

 どういう感情なんだろう。


 そして……。

 何故わからないけど、死んだはずの私は生きていて。

 おかしな場所に放り出されて。


 で。

 推しそっくりの男の子と対面している。


 つまり、これは……。

 いわゆるところの、『異世界転生』?



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