0065 ダンジョンとダンジョンコア
「よし、ダンジョンの拡張のお時間だ!」
紬は腕まくりをし、意気揚々と管理部屋のダンジョン管理モニターの前に座った。
拡張する前に、軽く今のダンジョンを振り返っておこう。
このダンジョンは一階層しかないシンプルなつくりで、部屋は合計で九つ。
ダンジョンの入り口である入り口部屋を先に進むと、スライムスポナーが置かれている小さな部屋に出る。そこからは三つの部屋に分岐しており、右にいけばウルフのいる部屋。左に行けばイベント限定モンスターのいる部屋。まっすぐ行けばボスであるシルトのいる大部屋にいくことができる。
さらにそこからそれぞれ別の部屋につながっている。
ウルフの部屋からは、宝箱が置かれただけの部屋。
イベントモンスターの部屋からは、魔晶ゴーレムがいる部屋と迷路。
シルトの部屋からは迷路とコアが置かれた管理部屋へ。
これが九つの部屋をもつ紬のダンジョンの現状である。
ちなみに、イベント期間中に攻略したダンジョンと比べると、紬のダンジョンは明らかに狭く、部屋数も少ない。探索時間が短く済むため回転率がいいものの、攻略されやすくなるというデメリットももちろんあった。
紬はそんな狭いダンジョンとはお別れして広大なダンジョンを作り上げようと、意気込んでいた。
「うーん、どうしようかな?複数階層作りたいから、一階十部屋ぐらいで通路を増やしてみようかな?」
紬はどうしたものかと眉を顰めた。
「あっ!とりあえず、コア入れてみるか!」
紬はすっかり頭の中から抜け落ちようとしていたコアの存在を思い出し、インベントリからコアを取り出した。
紬が手に入れているコアは合計で三つ。
風のダンジョンで手に入れたコア。水のダンジョンで手に入れたコア。そして限定ダンジョンで手に入れたコア。
コアが紬のダンジョンのコアと合体し、強化されることは知っているものの、どんな強化がされるのかや、何が起きるかは全く分かっていなかった。
紬は興味津々で風のダンジョンのコアを近づけた。
『風のダンジョン(初級)のコアの存在を感知。コアを合体させますか?』
「はい!!」
紬はウィンドウに表示されたアナウンスの「はい」を勢いよくタップした。
『ダンジョンコアを合体させます。大きく揺れるため、安全な場所に避難してください』
「えっ?」
ガタガタガタガタ……。ゴゴゴゴゴゴゴゴ……。
何かが地面の中から作られているのか、大きな音を立てながら、ダンジョン全体が大きく揺れた。紬の体感、震度五強ぐらいである。その場に立っているのは難しく、紬は管理部屋の隅っこで頭を守りながらしゃがみこんでいた。
五分ほど揺れた後、ぴたっと揺れが収まった。
紬はフラフラと立ち上がり、モニターを覗き込んだ。モニターには今の揺れでダンジョンに何が起きたのかを示すアナウンスが書かれていた。
『コアの合体が完了。以下の強化が行われました。
・階層の追加(風のダンジョンをモチーフにした階層が一階層として追加。それに伴い、新モンスタースポナーの設置などを実施)
・ダンジョン設備の追加(DPで購入できる設備の種類が増加)
・フロアボスの設定ができるように変更
・一階層の部屋の上限数が20に増加』
「いろいろ起きてるぅ……」
紬は一つ一つしっかりと説明も含めて何が起きたのかを確認した。
紬がやりたかった階層の追加がDPを使わずに行われただけでなく、少し内装も行ってくれているようである。紬にとってはDPも節約できて、基盤ができていて、うれしいことずくしである。
「ほかの二つのコアも入れてみるか」
紬はまだ二つ残っているコアを同時に入れようと近づけた。
『水晶の核とほかのコアを同時に合体することはできません。どちらかのコアのみを近づけてください』
「やっぱり限定ダンジョンのコアは特別仕様なんだ……。それならとりあえず、水のダンジョンコアから入れてみよう」
紬は水晶の核をインベントリの中にしまい、水のダンジョンコアを近づけた。
『ダンジョンコアを合体させます。大きく揺れるため……』
そこからは同じである。
またすぐ揺れ始めて、五分ほど揺れる。紬は頭を守って隅っこでしゃがみこむ。ケガしないと分かっていても、頭を守る紬は優等生である。おそらく学校の避難訓練を本当に起こっているものとして全力でやれるタイプである。
揺れが収まると、紬は今度は素早く立ち上がり、スキップしそうなほどの軽い足取りでモニターを覗き込んだ。
『コアの合体が完了。以下の強化が行われました。
・階層の追加
・ダンジョン設備の追加
・一階層の部屋の上限数が25に増加
・ダンジョン内に天気が出現』
「天気!?」
紬は思わず大きな声を上げた。
強化内容には先ほどと同じ三つのほかに、「天気が出現する」という前代未聞の内容が書かれているのである。それもそのはず。現在ゲーム内でプレイヤーが入ることのできるダンジョンは基本二階層までであり、三階層のダンジョンなど五本指で数えられる程度である。さらにそのダンジョンは、洞窟の中であるため、天気などが変わるはずもないのだ。
しかし、紬のダンジョンにできた風のダンジョンのフロアは、空が広がっており天気が適応されるフロアである。そして天気追加条件の三階層という条件を満たし、このゲームで初である天気が変わるダンジョンが生まれたのである。
「いろいろ変わっておもしろいな……それじゃあ最後のコアも入れてみるか!」
紬はわくわくしながら、最後のコア、水晶の核を近づけた。
『水晶の核の存在を感知。コアを合体させますか?』
「はい!」
『ダンジョンのランク変更を行います。一分後に一度ダンジョンが崩壊し、再構築が行われます。直ちにダンジョンから離れるか、管理部屋へと逃げてください』
「ま、またかよー!!」
紬、二回目のダンジョン崩壊である。




